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第8話 ギルドへ向かう道中で
しおりを挟む「あーいてぇ! おいおい、どうしてくれんだ!? てめえのせいで骨が折れたかもしれねえなあ!」
翌日の朝。
僕は一人で冒険者ギルド向かっていた。
ニーナさんはまだ寝ているだろうか。
起こすのも悪いかなと思ったのでこっそりベッドから抜けて今に至るというわけだ。
うん、面倒ごとである。
「そ、そんな……今のはそっちから……」
ニーナさん宅から出てしばらくほど。
目の前にはいかにも柄の悪い男に絡まれている美少女がいた。
誰も助けに入ろうとしないのは僕から見て美少女という情報だけで分かってもらえるだろう。
それに加えて耳が尖っていてエルフだということが分かる。
この世界のエルフもアトランタのエルフと違いはないらしい。
「あァ? 何か言ったか!?」
女の子は「ひぅ!?」と、身を竦ませて怯えていた。
男は威圧するように大声で喚き、女の子はどうしていいのか分からずその場でオロオロとするばかり。
さすがに見ていられなくなったので僕は二人の間に入った。
「待った待った、謝ってますしその辺にしといたほうが……」
女の子は僕が間に入ったことで少しだけ安堵したようだった。
対照的に男の方は苛立ったように顔を歪ませた。
「なんだてめえ! やんのか!?」
「いや、やりませんけど……謝ってますしもういいじゃないですか、別に折れてないんでしょ?」
すると男は舌打ちをする。
不機嫌そうな顔を隠そうともしない。
「はあ? なんでてめえにそんなことが分かるんだ?」
「じゃあ、衛兵呼びましょうか? 本当に折れてたらその時にちゃんと支払うってことで」
女の子だけだと味方はいなかったかもしれないけど、今は僕がいる。
実際に衛兵まで呼ばれたら分が悪いのは向こうだろう。
「けっ!」
男は再度舌打ちをして忌々しそうに背を向けて去っていった。
荒事にならなくてよかった……こんな街中で戦闘するわけにもいかなかったしね。
ニーナさんにも迷惑がかかる。
僕が内心安堵していると、エルフの女の子は勢いよく頭を下げてきた。
「あのっ、ありがとうございます!」
「ああ、いいからいいから、困った時はお互い様だよ。これからは気を付けるんだよ?」
「は、はい! ほんとにありがとうございました! この御恩は忘れません!」
大げさだな……悪い気はしないけどさ。
僕はその子に気にしないでほしいと言ってギルドへと向かった。
エルフの彼女は僕が見えなくなるまでずっとこちらに手を振り続けていた。
そうしてしばらく歩く。
街並みを眺めながら僕は人混みの間を歩いていった。
「さてと、ギルドは……えーと、ここかな?」
前の世界とほとんど違わないね。
僕はゆっくりとギルドの扉を開いた。
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