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第4話 チャットH
しおりを挟む黒崎加恋視点
【DOF】プレイ時のことだ。
この日は、私こと黒崎加恋の操作する【クロロン】、同級生の【りんりん】、フレンドの【カナデ】さんの3人で【ギレール活火山】へと来ていた。
目的はマップ奥地に出てくる高経験値モンスターを利用したレベル上げだ。
カナデさんがアーチャーで後方支援をして前衛の私が壁役、それを後ろからメイジの【りんりん】が一掃する作戦だった。
椅子に座りながらペットボトルのお茶を一口。
喉を潤して二人とのチャットを楽しむ。
『彼氏欲しい』
『イケメンで優しい美少年』
【ゲーマー美少年捜索隊】のメンバーの一人である篠原百合の【りんりん】がそんなことを言い出した。
アニメの見過ぎだろう。
そんな希少種が現代にいるわけがない。
『あと身長175cm以上』
『夢見すぎで草』
どれだけ高望みするんだろうか。
そんな雑談をカナデさんを交えながらすることしばらく。
経験値が貯まりレベルアップが見えてきた頃だった。
『チャットHがしたい』
彼女の操作するメイジの【りんりん】が目の前のモンスターを範囲魔法で一掃した後の一言だった。
敵が消えてひと段落した後なので敵の再沸きまでの時間はあった。
すぐに返事が返ってくる。
『チャットHとは?』
『いやいや、カナデさん気にしなくていいですよ。りんりんは欲求不満なんですよ』
わざわざ拾ってくれるカナデさんに言っておく。
というか百合もなんでわざわざレベル上げの最中に……いや、でも彼女は元々そういう子だった。
学校にも平気でエロ本を持ってくるし、中々レベルの高い変態だった。
どこの狩場でレベルを上げたのか教えてほしい。
ちなみに【りんりん】を操作する篠原百合はリアルでは清楚で大人しい深窓の令嬢みたいな『見た目』をしている。
もしかしてどこかのお嬢様? みたいな感想が真面目に出てくる容姿の女の子。
そんな大人しそうな顔から凄い下ネタが飛んでくるのだ……絶対見た目詐欺だと思う。
『いや、チャットHってなんなのかな~って』
カナデさんはチャットHを知らないらしい。
そういう私も知ったのはつい最近になって百合に教えてもらった時だけど。
それを見た百合の【りんりん】が得意気に……か、どうかは分からないけど返事を返した。
『喘ぎ声とかをチャットで打ち込むんです』
『官能小説のチャット版みたいなものですかね?』
ピンと来てない様子のカナデさん。
やはりというべきかイメージのし辛いことなのかもしれない。
確かにちょっぴり変わった趣味だしね。
『んー、ちょっと違うかも……やってみた方が早いかもしれませんね』
下ネタを嫌う女はいない。
いるのはムッツリかオープンのどちらかだけである。
ちなみに百合は言うまでもなくオープンだ。
カナデさんはどちらだろう?
たぶんムッツリ派だとは思うんだけど、下ネタ言ってもまったく動揺しないし現実では意外とオープンスケベさんなのだろうか?
『いいですよ、やってみますか』
『おお!』
百合が興奮しているのが画面越しに伝わってくる。
いや、もうすぐでモンスターが沸くんだけど……と、言いつつも興味はあった。
本来は交互にチャットを打ち込むんだけど、今回はお試しということでまずは百合が一人でやることに。
『あー』
『ああん! あん!』
『うああー』
『ふひぃー!』
味気がまったくなく淡々とした喘ぎ声の奔流がやってくる。
……なるほど。
私はすぐさま百合のチャットHに対して感想を述べる。
『ぎこちなさすぎww』
『いやいや、結構上手かったと思うけど?』
今のが上手いって、百合は一体どういう感覚をしてるんだろう。
『りんりんそういうの下手だよね……ちょっとしたホラーだったよ……』
『(´゚д゚`)エー』
そんなやりとりをしていると、カナデさんが間に入ってくる。
『僕もやってみていいですか?』
その発言を待ってましたとばかりに百合がテンションを上げた。
【りんりん】を操作して大魔法を放ち、煌びやかなエフェクトがモニターに広がる。
盛大なMPの無駄遣いをした百合はマナポーションを使用して回復し、高いテンションのままに言ってくる。
『GO!』
今のMP無駄遣いは何のアピールなんだろうか。
だけど私も興味がある。
というか普通に楽しみ。
『おーいいですよ。わくわく♪』
リアリティのあるネナベのカナデさんがどんなことを言ってくれるのか。
モンスターの数が増えてきたので、今度はキャラクターを岩場の安全地帯に動かす。
『なんか今更ですけど……恥ずかしいですねw』
『やってるうちに気持ち良くなってきますよ』
やはり百合は変態だった。
やや抵抗感は見られたけど、さっそくカナデさんがチャットを打ち込んだ。
『えっと、じゃあズボンを脱ぎます』
おっと、喘ぎ声であんあん言うだけかと思ってたけど状況も説明してくれるのか。
実況するみたいな感じだろうか?
ちょっと思ってたのとは違うけど嬉しい誤算だ。
私はそっちのほうが興奮できる。
しかも男視点というのはさすがネナベさんと言ったところか。
さてさて、御手前は……
…………
………………
……………………
全てを聞き終えると同時にカナデさんが『どうでしたか?』と、感想を求めてきた。
私はと言うと半ば放心状態。
まさかここまでとは思わなかった。
完全に想像を超えてきた。
男女の出生率が偏ってきた昨今においてここまでリアリティのある生々しい男性の描写を作り上げることができる人がいたなんて。
カナデさんは男性とそういう経験がある人なのだろうか? いや、それにしたってここまで詳細だとは……
感情の昂ぶりを抑えきれない。
こちらの不審に気付かれないように私は『良かったですよ』と返事を返す。
ちょっとそっけなかったかもしれないけど、それどころじゃなかった。
『すみません、ちょっと休憩しませんか』
『いや、ここまでにしましょう』
『そうですね。経験値もだいぶ稼げましたし』
『分かりました。乙です~ノシ』
『ノシ』
『ノシ』
…………
………………
……………………
翌日の学校で。
百合と私は顔を合わせてお互いの目の下にある隈を見た。
そんな寝不足の顔で昨夜の出来事を察する。
「ねぇ……もしかして加恋も?」
「……うん、何がとは言わないけど凄い捗った」
「カナデさんって官能作家さんなのかな?」
「そうかもしれない」
「また頼みましょう」
「賛成」
うん……あれは、とても良いものだ。
女の友情みたいなものを感じながら私たちは、ガシッと手を握り合った。
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