24 / 43
勇者召喚
第24話 襲撃
しおりを挟む「これは……」
城のあちこちから黒煙が立ち上っている。
肉が焦げる臭いが鼻を突く。
「セラ団長! よくぞお戻りに!」
するとこちらへ駆けつけてくる兵士。
この城を守っていた門番の男性だった。
「状況はッ!?」
セラさんが切迫した声で簡潔に問う。
それに対して門番の男が答える。
「現在魔族の襲撃を受けています! 城の残っていた勇者の方々が国王様をお連れして東へ向かいました!」
「城内はどうなってる!」
「死者、怪我人多数! 自分は残って城内に怪我人がいないかを確認したところ、逃げ遅れている者が少数……」
門番の人は焦りを顔に浮かべながら受け答えする。
僕は状況をセラさんに伝える門番の彼の言葉を聞きながら必死に頭を動かしていた。
東……確か授業で習った周囲の地形は……
「東……確か東には王国軍の基地があるんでしたっけ」
「ああ、その通りだ。それが本当なら追手もいるだろう。国王たちに追手が追いつく前に私たちも向かうとしよう」
しかし、そこで門番の人が僕に待ったをかける。
セラさんも苛立ちを込めながら足を止めた。
「悠斗様は確か治癒スキルを使えるのでしたね、まだ逃げることのできていない怪我人を治療して頂けないでしょうか?」
「………」
「悠斗様……?」
僕は門番の男の人に違和感を感じていた。
「名前……教えてませんよね?」
僕はこの日初めて王城の外へ出た。
この門番の人と会うのは今日が初めてだった。
その際にもセラさんが対応したため自分の名前を伝えてはいない。
確証はなかった。
人伝手に聞いた可能性もあったし、門番だったら別に名前を知ってることもありえるんだろう。
僕の予感が正しかったとしてもまた別の違和感が出てくる。
だけど、勇者のスキルをただの門番が知っているだろうか?
秘匿していないと言われればそれまでだけど……
それに怪我人を救出していたはずの人の服が全く汚れていないなんてありえるんだろうか?
何より―――僕の神眼は確かにその男の言葉の揺らぎを感知していた。
「そ、それは―――ッ!?」
次の瞬間にはセラさんの剣が門番を装った男の体を一閃していた。
ずるり……と、青紫色の血を吹き出して゛魔族゛の男は絶命した。
「ッチ、どうやら私も冷静じゃなかったようだな」
「騙し討ちでもしようとしたんですかね」
「あるいは戦力を遠ざけたかったのかもしれないな」
仮に僕が魔族の立場だったならセラさんを遠ざけてまだレベルの低い勇者を殺す。
この男もそれが目的だったのだろう。
セラさんを東へ……そして、怪我人の治療のために別行動をとらせた僕を後ろから……ってところか。
僕たちはそのまま魔族の死体を放置したまま本当の状況を確認するために城内へと急いだ。
◇
「悠斗様!」
「リリア!」
近付く前に神眼で確認。
間違いない、リリア本人だ。
「皆は?」
「玉座の間へ向かわれました」
予想通り皆は王様を守るためにそちらへ向かったらしい。
「状況を説明してくれ」
セラさんが聞くとリリアはこんな状況にもかかわらず冷静に答えてくれた。
まず侵入したのは男の魔族が二人らしい。
その内の一人はさっきの男だろう。
小人数だけどその後転移門のようなものを出現させて魔物をそこから召喚し始めたらしい。
リリアはつい先ほどまで怪我人を助け出していたようだ。
他に残っている人はいないかと探していたところで僕たちがやってきたらしい。
「森に魔物がいなかったのはそのせいか……」
「どういうことです?」
「転移というのは膨大な魔力を消費する。そして、それは転移させる者とされる側の力量と距離に大きく影響を受ける」
「森の魔物をここへ?」
「おそらくな」
セラさんが頷く。
つまり魔物を多く転移するのに都合がいいのがその森だったのだろう。
「だが妙だな……そんな大量の転移門を設置するには相当な時間が……」
セラさんの呟きが気になったけど、今は時間が惜しい。
僕たちは遭遇したリリアと共に玉座の間に向かった。
1
お気に入りに追加
3,820
あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話7話。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

冒険者をやめて田舎で隠居します
チャチャ
ファンタジー
世界には4つの大陸に国がある。
東の大陸に魔神族、西の大陸に人族、北の大陸に獣人族やドワーフ、南の大陸にエルフ、妖精族が住んでいる。
唯一のSSランクで英雄と言われているジークは、ある日を境に冒険者を引退して田舎で隠居するといい姿を消した。
ジークは、田舎でのんびりするはずが、知らず知らずに最強の村が出来上がっていた。
えっ?この街は何なんだ?
ドラゴン、リザードマン、フェンリル、魔神族、エルフ、獣人族、ドワーフ、妖精?
ただの村ですよ?
ジークの周りには、たくさんの種族が集まり最強の村?へとなっていく。

異世界転生!ハイハイからの倍人生
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。
まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。
ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。
転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。
それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる