4 / 43
勇者召喚
第4話 開示
しおりを挟む「ステータス・オープン」
そうして、僕は自身のステータスを周囲に見せる。
「……え?」
僕たちを召喚したらしき修道着の少女が驚きに目を見開く。
周囲の騎士たちも騒めき、同郷の少女たち3人も驚愕のような表情をつくっている。
僕が開示したステータスは以下の通りだ。
――――――
佐山悠斗(人族)
17歳
Lv1
生命 320
攻撃 70
防御 80
魔力 100
俊敏 80
幸運 210
スキル 強化、治癒、成長
加護 アルマの加護
――――――
「え、3つ……?」
「ん? なにかおかしいんですか?」
分かってて聞いてみる。
そりゃあほかの勇者の女の子たちが3人とも一つなのに僕だけ3つってのは違和感しかないだろう。
お分かりだとは思うが一応説明しておこう。
僕は上記のスキル3つ以外を隠した。
それは強すぎる力は何かしらの面倒ごとを呼び込むと思ったからだ。
この3つというのは強いことをアピール出来つつも、面倒なことにならないギリギリの数だと思ったからだ。
隷属とか神殺しみたいな物騒なスキルを持ってるなんて警戒されるだろうしね。
強化、治癒、成長に関しては汎用性が高い能力のためいずれ存在が露呈すると思ったから開示した。
後々になってバレたらそっちの方が面倒だし。
ステータスも同じだ。
偽装したところで隠すのは難しいと思ったから弄っていない。
しかし、それで納得いかないのが周囲の人たちだ。
召喚した人たちは強い人が来てくれたと喜んでいるけど、勇者側の……特に剣姫のスキルを持った少女は疑惑の目を向けてきた。
「ちょっと待ってください、なぜあなたは3つもスキルを持っているのですか?」
こうなることは予想通り。
僕は予め用意していた言葉を答える。
「神様にもっとスキルを貰えないかと頼んだらもらえました」
別に嘘は言っていない。
これに関しては事実だ。
控えめに表現してるけど、嘘ではない。
「ほかにも頼む人はいたらしいですよ? あなたは頼まなかったんですか?」
今気付いたというように顔を歪める。
凄い睨まれた。
残念だけど、こういうのはオタクのほうが適応力があるんだ。
見るからに優等生な目の前の少女では思いつきもしなかったんだろう。
悔しそうに唇を噛んでいる。
「……ですが、本当にそれだけでもらえたのですか?」
その疑問はもっともだ。
貰えるならなぜ最初からくれなかったってことになるからね。
「賭けをしましたね、それに勝ったからもらえました」
「賭け……?」
訝しそうに眉を寄せる。
どうにかして言い包めたいけどどうしよう。
と、思っていると。
「事実だと思います、実際過去の勇者にはスキルを2つ以上持っていた方もいます。非常に珍しいことではありますが心強いです」
ありがたいことに召喚した方の少女から助け舟を出してもらえる。
あちら側としても勇者たちの仲が悪いなんて不安だろうからね。
それを聞いて怪しんでいた剣姫の子も警戒を弱める。
もしかして神様を脅して無理矢理奪ったとか思ってたんだろうか?
心の中で苦笑する。
あれは無理だろう、勝てる気がしない。
あんな殺気を出せる人に勝負を挑むのは自殺行為だ。
まあ、でも見た目は普通の人間のお兄さんだったからね。
この子がそう誤解するのも仕方ないかもしれない。
「す、すごいですっ、あなたは勝ったんですね!」
すると、前髪の長い魔導スキルの子が話しかけてくる。
前髪で表情は見えにくいけど少し興奮気味だ。
「もしかして君も?」
「はい……私は負けちゃいましたけど……」
恥ずかしそうに前髪を弄りながらそう答える女の子。
ちょっと意外だった。
自惚れかもしれないけど、その発想に至ったのは僕だけだと思ってたから。
ということはこの子は勝負を挑んでその上でスキルが1つだったのか。
まあ僕は3つどころじゃないんだけどね。
「………」
それはいいんだけど剣姫の子の威圧が凄い。
機嫌悪そうだ。
自分がそのことに気付かなかったことを恥じているみたいな感じ。
だけどそれとは対照的に聖女の子はキラキラとした眼差しでこっちを見てきている。
対照的な二つの視線に挟まれて居心地が悪い。
「まあ、こういう異世界モノではテンプレだからね。僕はそういうの知ってたし」
「さ、最近流行ってますもんねっ、異世界転移とか勇者召喚とか」
「もしかしてそういうの読んでたり?」
「は、はいっ、あなたもそうなんですか?」
頷いて肯定を返す。
何となく同じ匂いを感じるな。
見た目で判断するのもあれだけどオタクっぽいし。
同類の僕としては凄い落ち着く。
「本当に召喚されることになるとは思わなかったけどね」
こくこくと頷かれる。
この子とは何とか仲良くできそうだ。
聖女の子はまだ分からないけど、剣姫の子は気難しそうだからどうなるか心配だったんだ。
とりあえず一人だけでも話ができそうでよかったよ。
するとこほんっと咳払いが聞こえた。
そちらを見ると僕たちを召喚した子が目線で王様らしき男を見た。
それに合わせてそちらを見ると王様が口を開く。
「突然のことで申し訳ないが勇者の方々も疲れているだろう。詳しいことはまた明日話すので今日はゆっくり休んでくだされ」
どうやら今日は休みらしい。
それなら、と僕は提案する。
「今後のことで話したいんですけど、部屋をお借りできないでしょうか?」
その質問には召喚した少女が答えた。
「それでしたらそれぞれに個室を用意してますので、そちらを使ってください」
個室か、それは助かる。
いきなり召喚されたことに対して疲れもあるしね。
しかし、王様は礼儀正しいな。
こういう場合は召喚した側が外れって場合もあるから不安だったんだよね。
「あ、最後に質問いいですか?」
「ん? 何かな?」
「僕たちは魔王を倒した後で元の世界に帰されるんですか?」
その問いと同時にスキル神眼を発動する。
使い方は本能的に理解できた。
まるで生まれた時からその力を持っていたかのような感覚。
「……申し訳ないが、この召喚は一方通行なのだ。勿論成功した際には望みの褒美を与える、この世界での生活も出来る限り保証したい」
「もしも断ったら?」
騎士たちが騒めく。
召喚した女の子も「え……」と、不安そうに瞳を揺らす。
何人かから威圧のようなものを感じるけど僕は無視した。
気になったのは剣姫の子からも侮蔑のような感情を感じたけど、それも無視する。
予想通りではあるけど、君はどっちの味方なんだ……
「……それでも構わない、呼んだのはこちらの勝手なのだからな。そう判断しても文句は言えないし、そうなっても今後のことに関して生活は保障する」
ふむ、嘘は言ってないな。
王様だというのに意外にも低姿勢。
この世界の常識とこちらの常識は違うのだろうか?
それとも勇者はそれなりに位の高い存在なのかもしれない。
なんにしても僕は王様に好印象を持った。
ほかの3人は帰還できないことに対して何か言うかと思ったけど、どうやら何も意見はないようだ。
少し違和感はあったけど他のことを優先させるために3人に向き直る。
「じゃあ少し休んでから僕の部屋に集合っていうのはどうだろう?」
魔導の子と聖女の子が頷く。
剣姫の子だけはキッと睨んできた。
そのまま異を唱えるように僕に言ってくる。
「待ってください、なぜあなたの部屋なんですか? 年頃の女性が男性の部屋に行くのは賛成できません」
言外に自分たちに何かするんじゃないか? と、言われた。
僕が仕切ったことに対しても不満そうだ。
「貰ったばかりの部屋なんだからどの部屋でも同じかなと、それならそっちのタイミングで来れる僕の部屋が良いかなって思ったんですけど」
僕の答えに考え込む。
そして、さらに付け加えた。
「同じ世界の人間同士少しは仲良くしませんか?」
さすがにこれ以上何か言うのは和を乱す行為だと思ったのだろう。
剣姫の子が引き下がった。
「……分かりました。もしなにかあれば」
「その時はお好きなように」
剣姫の子の言葉にかぶせる様に言った。
しかし、なぜここまで警戒されているのか。
どう思われてるにせよ、同じ世界の人間として仲良くしたいね。
12
お気に入りに追加
3,820
あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話7話。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

冒険者をやめて田舎で隠居します
チャチャ
ファンタジー
世界には4つの大陸に国がある。
東の大陸に魔神族、西の大陸に人族、北の大陸に獣人族やドワーフ、南の大陸にエルフ、妖精族が住んでいる。
唯一のSSランクで英雄と言われているジークは、ある日を境に冒険者を引退して田舎で隠居するといい姿を消した。
ジークは、田舎でのんびりするはずが、知らず知らずに最強の村が出来上がっていた。
えっ?この街は何なんだ?
ドラゴン、リザードマン、フェンリル、魔神族、エルフ、獣人族、ドワーフ、妖精?
ただの村ですよ?
ジークの周りには、たくさんの種族が集まり最強の村?へとなっていく。

異世界転生!ハイハイからの倍人生
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。
まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。
ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。
転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。
それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる