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1. 突発的な衝動
しおりを挟む最近ちょっと気になる奴がいる。
同じクラスの『笹川 拓』
特に仲良くしているわけではないし用がなければ話す事すらない奴。
「ねぇ。私、笹川の事好きなんだけどー…」
とか
「2組の丸山って女子が笹川の事好きなんだってー」
とか
結構モテてたりしている笹川。
ふぅん。笹川って結構モテる奴なんだ?
よく観察してみると他のクラスの女子から呼び出しされたりもしている。
…かと思えば
「えー?笹川?マジで?まぁ顔は良いけど私チビ好きじゃないんだよねw」
ってたまにディスられてたりもする。
チビって・・・・
男の身長の高さは女の胸の大きさと比例する。と、どこかで読んだことがある。
ディスってる女子!てめぇは巨乳なんか?
あ。割とでかい。なんかすみませんでした。
えっと…別に笹川がモテようが何だろうがどーーーーでもいいんだけど。
まぁ、自慢じゃないけど俺だってそこそこモテるしな。背も俺の方が高い。
こんなしょぼい物差しで笹川と張り合っても仕方ないんだけど…俺とは全く関係ない奴。だと…思っていたんだけれど....。
実はとあるきっかけからこいつを目で追うようになってた。
それはある日の放課後・・・・
『ガラッ』
みんなが帰った後の誰もいなくなった教室。笹川は一人で窓からグランドを見ていた。
「おっ?」
「あ…?」
俺は弁当箱を忘れて教室に戻ってきた。机の中をガサゴソしながら笹川に声を掛けた。
「こんな放課後に何してるの?」
同じクラスだったけどほとんど会話もしたことないやつ。
でも自然と会話は続いた。
「あ。うん。ここからだとグランドがよく見えるんだ」
笹川は窓際でグランドを見ていた。
「サッカー部のさ。先輩。朝練とかも頑張ってて…あっ!今転んだ…ふふっ」
女みたいに口に手を当てて笑ってるこいつを見てふと思ったんだ。
『その先輩の事…好き‥なのかな?』
一瞬『ザワッ』と胸の中がざわめいたのを感じた。
一時期の気の迷いか、思春期の興味本位か、夕暮れの黄昏のせいなのか、、、
俺はこのクラスのモテ男が女とセックスするときにどんなに風に乱れた姿を晒しているのか…想像しこの目で見てみたいと思った。
沈みそうな太陽の光に照らされて少し茶色に透けて輝いている瞳に吸い込まれるように俺は佐々木にキスをしていた。
「んっ!?んんっ…!!!」
俺をこんなとち狂った行動に仕向けたやつ出てこい。
てめぇだ。太陽!太陽のせいだよな!!!お前の煌めきがこんなにも魅了させてしまうコイツを生み出しちまったんだよな?
思いもよらない行動に出たのを誰かのせいにしたくて心の中で仮の物語をつくっていた。
「ちっ!!!!!ちょっと!!!!!!!」
笹川は逃げようとしていたけど俺よりも小さい体ですり抜けられるはずもなく更に強く唇を押し付けた
「っふ…んあっ…」
「!!!!!!!??????」
俺は女とは経験があった。
だから女の喘ぎ声は聴きなれている。聴きなれているはずなんだが。
この笹川という男の声はめちゃくちゃ可愛くてどの女の声も勝ることができない程魅力的で俺の心を乱し興奮させた。
俺はもっともっと笹川が悶え快楽に震えている声が聞きたくなって自分の舌で唇をこじ開けた。
その唇は固く閉ざされている…
『ほほぉ。抵抗する気か。分かりました。口を開けさせる方法を知っているので実行に移させて頂きます』
俺は笹川のシャツの中に手を入れて背筋を下から上に スー っと 指でなぞった。
「ひゃっ!!!」
笹川の体に『ゾワッ』と電流が走った。
はい。お口開けましたね。ありがとうございます。いただきます。
ここぞとばかりに自分の舌をねじ込んだ。
笹川の小さな舌を自分の舌に巻き付けるように舐めまわした。
『うん…気持ちいい』
女とするときより気持ちがよすぎてキスの行為を夢中でしていた。
こいつの唇、ちょっと厚みがあって吸いやすいというかフニフニでフワフワでめちゃくちゃ気持ちいい。脳神経が全てどこかにもっていかれるような、ここが学校の教室だと忘れてしまうような、永遠に舐めていたい…そんな衝動にかられていた。
笹川はもう抵抗しなくなっていた。
それどころか小さく艶やかな声で俺を誘っていた。
「「ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーール」」
グランドからサッカー部達の大きな声が響いた。
俺は『はっ』とした。
よく見るとトロトロに蕩けきった笹川が俺の腕の中でぐったりしている。
『やべーーーーーー!!!コレまさかの痴漢だよな!?全然合意じゃないし!相手が男だからとか許されること…じゃ…ないよな!?』
「笹川!!!!!!!!ごめん!!!!!!!!!」
俺はそのまま走って逃げた。
「若気の至り」とかで簡単に済ませられることじゃ・・・・そんな簡単に済まされるわけ‥‥
明日の学校でどんな顔して会えばいいのか。帰宅後もその事でずっと頭を抱えていた。
「おはよう」
「!!???」
『あ?ちょ。おま…。待て。笹川。昨日あんなことされておいて普通に挨拶!?俺は一日中反省してたんだぞ?!‥ん?反省?反省はしてないか。ただ会いづらいって事を悩んでただけで…反省…反省しよろ。俺。マジで。最低…』
笹川の手が少し震えているのを確認した。
『あ…警戒してる?…当然っちゃあ当然だよね。ごめんね佐々木…』
「あ…いや。あの。松本君て…僕の事…好き‥だったの?」
え?
ええっ????
ええーーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!???
あっ…あっーーーー!そうか。そうなるのか?そうだよな。だってキスしてきたんだもんな?そう思うよな???
『違っ!!!!!!!!』
‥‥って首を横に振ろうとした。…振ろうとしたんだけど…
「違?…くもねえのか?だって好きじゃない奴にキスとかするのか?普通?いや。そんな衝動今までなかっ…。好きとか嫌いとかそういう問題じゃなくてそもそも合意もなにもなくあんな事…」
「…あんなこと?」
笹川が俺の顔を覗き込んできた。
やべ。心の声が全部声に出てた…。
「やめろーーー!!その顔!」
上目遣いでニヤニヤしながら覗き込んできた。
「あはは。」
笹川は軽快なステップを踏みながら自分の机に戻ろうとしていた。
「あ!おいっ!!!」
笹川を呼び止めて耳元で小さく内緒話。
「もし、もしもまたお前にあんな事しようとしたらその時は俺の事ぶっ飛ばしてもいいから…」
「ふうん。またする気あるんだぁ?」
くそ。
その顔だよ。
その真っすぐに見つめてくる瞳のせいで俺はおかしな衝動に駆られるんだ。
「いや。だから。もしも。もしもだよ。ちょっと確かめたいことがあるんだ」
「確かめたいこと?嫌だよ。男にキスされるのなんか」
…ですよね。はい。すみません。
しょぼんとしている俺の耳元で佐々木はこっそり囁いた。
「あんな気持ちいキス。2回もされたら好きになっちゃいそう…」
ペロっと舌を出して駆け足で逃げて行った。
『はぁ…笹川拓‥‥てめぇ…俺をこんな気持ちにさせやがって。絶対許さねえ…』
2度目のキスも…そう遠くないのかもしれない。
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