異世界ハンターライフ

新川キナ

文字の大きさ
上 下
69 / 74

069:ハルの気持ち

しおりを挟む
 探索者ギルドに登録したところで、ちょうどラーダがやってきた。

「おう。宿は確保したぞ。ちなみに俺とジャックが二人部屋。ハルは一人部屋でカセとエリスが一緒だ。感謝しろよ?」
「お、おう。そりゃどうも。ハルは良いのか?」
「もち」

 ジャックが、こっちを羨ましそうに見ているが……見なかったことにしよう。そう思って視線を逸らせたところでラーダと目が合った。

「なぁカセよ」
「あん? 何よ?」
「避妊だけはしっかりとしてくれよ?」
「どうした突然?」
「あぁ。これからダンジョンで一儲けしようってのに仲間が妊娠ですじゃ笑えねぇだろ?」
「あぁ……そうだな。わかったよ」
「とてもいい避妊薬があるらしいから、ケチらず使え」

 そう言って俺の肩を叩くラーダに「わかったよ」と返す。そんな俺達の様子をやはりジャックが羨ましそうに見ていた。

 ちょっと気になったのでハルに聞いてみた。

「ハルは……ジャックとはどうなんだ?」

 するとハルに睨まれた。

「加瀬さん? デリカシーなさすぎ!」
「いや。別にやましい気持ちで聞いてるわけじゃ……」

 するとハルがキシシと笑う。

「分かってますよぉ。ちょっと、からかっただけです」

 俺は溜め息を吐く。

「おまえな……」
「まぁねぇ。私を置いてさっさと幸せになっちゃった人への、ちょっとした”やっかみ”みたいなものです」
「それは……悪かったな」
「いえ。別にいいですけどね」
「それで? ジャックとはどうなってんだ?」

 ハルが眉間にシワを寄せて、少し難しい顔をした。

「なんかね。あるんですよ」
「ん? 何かがあるって? ジャックに? 何があるんだ?」
「隠し事」
「人間なんだ。誰にでもあるだろ?」

 するとハルが俺を真っ直ぐに見て言った。

「私はそれが嫌なんです。信用できない!」

 驚いた。ハルってこんなに潔癖症だったっけ?

「おいおい。いくら何でも子供じゃないんだから……」
「加瀬さんは甘い! この世界は……根本的なところで価値観が違うんですよ。例えば人の命が軽いとか。人権意識が低いとか、特権意識とか。私は一般的な日本人です。だから、そんな国の、そんな世界の人を簡単に受け入れる事ができないんです。知ってますか? ラーダもジャックも人を殺したことがあるんですよ? 日本人でそれをしたことがある人ってどれだけいますか? もちろん。そういう人たちも罪を更生して新しい人生を過ごす人も居ます。そしてそれを受け止める人がいることも理解しています。でも……私には無理」

 ハルが、はっきりと言い切った。

「ハル……」
「価値観が違いすぎるんです。人を殺したことがある以上の隠し事ってなんですか?」
「それは……」
「ね? 気になるでしょ?」

 なるほど。確かに。ジャックもラーダも仕事で人を殺した経験がある。それを秘すことだとは思っていない。仕事と割り切っているからだが…… しかし、そんな人間の隠し事ってのは確かに気になるな。

 ハルが小さく溜め息を吐いた。

「ジャックの隠し事が何か分かるまで。彼が話してくれるまで。それを私が納得するまで、進展はありません!」
「ジャックにはそう告げたのか?」
「はい」
「それでも話さなかった?」
「今はまだ話せないの一点張りで……」
「話せる日が来るまで待つのか?」
「さぁ?」

 ハルが自嘲気味に笑う。こんなハルを見たのは初めてだ。

 ジャック。ラーダ。

 何を隠してるんだ?

 納得のできる内容じゃなかったら、その時は……
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮
ファンタジー
妻に先立たれた 後藤 丈二(56)は、その年代に有りがちな、家事が全く出来ない中年男性。 独り身になって1年ほど経つ頃、不摂生で自分も亡くなってしまう。 が、気付けば『切り番当選者』などと言われ、半ば押しつけられる様に、別の世界で第二の人生を歩む事に。 再び妻に巡り合う為に、家族や仲間を増やしつつ、異世界で旅をしながら幸せを求める…………話のはず。 独自世界のゆるふわ設定です。 誤字脱字は再掲載時にチェックしていますけど、出てくるかもしれません、すみません。 毎日0時にアップしていきます。 タグに情報入れすぎで、逆に検索に引っかからないパターンなのでは?と思いつつ、ガッツリ書き込んでます。 よろしくお願いします。 ※この話は小説家になろうさんでアップした話を掲載しております。 ※なろうさんでは最後までアップしていますけど、こちらではハッピーエンド迄しか掲載しない予定です。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

処理中です...