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069:ハルの気持ち
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探索者ギルドに登録したところで、ちょうどラーダがやってきた。
「おう。宿は確保したぞ。ちなみに俺とジャックが二人部屋。ハルは一人部屋でカセとエリスが一緒だ。感謝しろよ?」
「お、おう。そりゃどうも。ハルは良いのか?」
「もち」
ジャックが、こっちを羨ましそうに見ているが……見なかったことにしよう。そう思って視線を逸らせたところでラーダと目が合った。
「なぁカセよ」
「あん? 何よ?」
「避妊だけはしっかりとしてくれよ?」
「どうした突然?」
「あぁ。これからダンジョンで一儲けしようってのに仲間が妊娠ですじゃ笑えねぇだろ?」
「あぁ……そうだな。わかったよ」
「とてもいい避妊薬があるらしいから、ケチらず使え」
そう言って俺の肩を叩くラーダに「わかったよ」と返す。そんな俺達の様子をやはりジャックが羨ましそうに見ていた。
ちょっと気になったのでハルに聞いてみた。
「ハルは……ジャックとはどうなんだ?」
するとハルに睨まれた。
「加瀬さん? デリカシーなさすぎ!」
「いや。別にやましい気持ちで聞いてるわけじゃ……」
するとハルがキシシと笑う。
「分かってますよぉ。ちょっと、からかっただけです」
俺は溜め息を吐く。
「おまえな……」
「まぁねぇ。私を置いてさっさと幸せになっちゃった人への、ちょっとした”やっかみ”みたいなものです」
「それは……悪かったな」
「いえ。別にいいですけどね」
「それで? ジャックとはどうなってんだ?」
ハルが眉間にシワを寄せて、少し難しい顔をした。
「なんかね。あるんですよ」
「ん? 何かがあるって? ジャックに? 何があるんだ?」
「隠し事」
「人間なんだ。誰にでもあるだろ?」
するとハルが俺を真っ直ぐに見て言った。
「私はそれが嫌なんです。信用できない!」
驚いた。ハルってこんなに潔癖症だったっけ?
「おいおい。いくら何でも子供じゃないんだから……」
「加瀬さんは甘い! この世界は……根本的なところで価値観が違うんですよ。例えば人の命が軽いとか。人権意識が低いとか、特権意識とか。私は一般的な日本人です。だから、そんな国の、そんな世界の人を簡単に受け入れる事ができないんです。知ってますか? ラーダもジャックも人を殺したことがあるんですよ? 日本人でそれをしたことがある人ってどれだけいますか? もちろん。そういう人たちも罪を更生して新しい人生を過ごす人も居ます。そしてそれを受け止める人がいることも理解しています。でも……私には無理」
ハルが、はっきりと言い切った。
「ハル……」
「価値観が違いすぎるんです。人を殺したことがある以上の隠し事ってなんですか?」
「それは……」
「ね? 気になるでしょ?」
なるほど。確かに。ジャックもラーダも仕事で人を殺した経験がある。それを秘すことだとは思っていない。仕事と割り切っているからだが…… しかし、そんな人間の隠し事ってのは確かに気になるな。
ハルが小さく溜め息を吐いた。
「ジャックの隠し事が何か分かるまで。彼が話してくれるまで。それを私が納得するまで、進展はありません!」
「ジャックにはそう告げたのか?」
「はい」
「それでも話さなかった?」
「今はまだ話せないの一点張りで……」
「話せる日が来るまで待つのか?」
「さぁ?」
ハルが自嘲気味に笑う。こんなハルを見たのは初めてだ。
ジャック。ラーダ。
何を隠してるんだ?
納得のできる内容じゃなかったら、その時は……
「おう。宿は確保したぞ。ちなみに俺とジャックが二人部屋。ハルは一人部屋でカセとエリスが一緒だ。感謝しろよ?」
「お、おう。そりゃどうも。ハルは良いのか?」
「もち」
ジャックが、こっちを羨ましそうに見ているが……見なかったことにしよう。そう思って視線を逸らせたところでラーダと目が合った。
「なぁカセよ」
「あん? 何よ?」
「避妊だけはしっかりとしてくれよ?」
「どうした突然?」
「あぁ。これからダンジョンで一儲けしようってのに仲間が妊娠ですじゃ笑えねぇだろ?」
「あぁ……そうだな。わかったよ」
「とてもいい避妊薬があるらしいから、ケチらず使え」
そう言って俺の肩を叩くラーダに「わかったよ」と返す。そんな俺達の様子をやはりジャックが羨ましそうに見ていた。
ちょっと気になったのでハルに聞いてみた。
「ハルは……ジャックとはどうなんだ?」
するとハルに睨まれた。
「加瀬さん? デリカシーなさすぎ!」
「いや。別にやましい気持ちで聞いてるわけじゃ……」
するとハルがキシシと笑う。
「分かってますよぉ。ちょっと、からかっただけです」
俺は溜め息を吐く。
「おまえな……」
「まぁねぇ。私を置いてさっさと幸せになっちゃった人への、ちょっとした”やっかみ”みたいなものです」
「それは……悪かったな」
「いえ。別にいいですけどね」
「それで? ジャックとはどうなってんだ?」
ハルが眉間にシワを寄せて、少し難しい顔をした。
「なんかね。あるんですよ」
「ん? 何かがあるって? ジャックに? 何があるんだ?」
「隠し事」
「人間なんだ。誰にでもあるだろ?」
するとハルが俺を真っ直ぐに見て言った。
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驚いた。ハルってこんなに潔癖症だったっけ?
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「加瀬さんは甘い! この世界は……根本的なところで価値観が違うんですよ。例えば人の命が軽いとか。人権意識が低いとか、特権意識とか。私は一般的な日本人です。だから、そんな国の、そんな世界の人を簡単に受け入れる事ができないんです。知ってますか? ラーダもジャックも人を殺したことがあるんですよ? 日本人でそれをしたことがある人ってどれだけいますか? もちろん。そういう人たちも罪を更生して新しい人生を過ごす人も居ます。そしてそれを受け止める人がいることも理解しています。でも……私には無理」
ハルが、はっきりと言い切った。
「ハル……」
「価値観が違いすぎるんです。人を殺したことがある以上の隠し事ってなんですか?」
「それは……」
「ね? 気になるでしょ?」
なるほど。確かに。ジャックもラーダも仕事で人を殺した経験がある。それを秘すことだとは思っていない。仕事と割り切っているからだが…… しかし、そんな人間の隠し事ってのは確かに気になるな。
ハルが小さく溜め息を吐いた。
「ジャックの隠し事が何か分かるまで。彼が話してくれるまで。それを私が納得するまで、進展はありません!」
「ジャックにはそう告げたのか?」
「はい」
「それでも話さなかった?」
「今はまだ話せないの一点張りで……」
「話せる日が来るまで待つのか?」
「さぁ?」
ハルが自嘲気味に笑う。こんなハルを見たのは初めてだ。
ジャック。ラーダ。
何を隠してるんだ?
納得のできる内容じゃなかったら、その時は……
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