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048:熊狩
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その後、何度か試し撃ちをした。
結果、脱臼こそしなくなったが、一発撃つたびに肩を痛めるので光魔法による回復必須であることが分かった。
「さて、少し時間を使っちまったな」
時刻は昼をいくらか過ぎたぐらい。だが冬の夜は早い。しかも森の中とくればなおさらだ。
「少し急ごう。場合によっては泊まりになるかもしれない」
俺は全員に意思の確認をする。すると全員が了解と頷いた。
※
※
※
ハルが追跡を開始する。先程、見つけた足跡からの追跡だ。雪の上に大きく深く刻まれた足跡。
俺は空を見上げる。曇り空で風は微風の向かい風。気温は5度だ。
「悪くない」
雪が降れば足跡が消える。かといって溶けても消える。それどころか地面が泥濘むことになる。そして夜になれば泥濘んだ地面が凍る。凍れば滑るの悪循環だ。このままの状態で追えるのが一番だが、果たしてどうなるか……
それから追跡すること、小一時間。
途中でゴブリンに遭遇したが、ハルと俺で処理。しかしレベルは上がらなかった。段々と上がりづらくなっているな。
周囲を警戒しながら更に30分。森を抜けた。その先にはちょっとした原野があった。その先に足跡が続いている。俺たちは更に追う。足跡が山と山の間の谷へと続いているのが見える。段々と近づいている気配が強くなってきた。
「ハル。気をつけろよ」
ハルは静かに頷く。それから10分、足跡を追った所で雪の上の痕跡が途絶えた。
「えっ!」
ハルが混乱している。
「ハル。止め足だ! こっちの世界の熊も使うのか……」
止め足とは、追跡者を撒く時に野生動物が見せる行動だ。自分の足跡の上を踏んで戻り、思いがけない方向へジャンプして逃げると言う方法なのだが……
エリスを見ると、周囲を警戒していた。ラーダとジャックもだ。どうやら俺たちの方が狩られる側に回っていたようだ。
こっちの熊は、どうやらかなり好戦的なようだ。
俺も周囲を警戒していると、右手側の急な傾斜の尾根にそいつが現れた。睥睨するという言葉がしっくりぐらいに堂々と現れやがった。
「右手、斜面上だ!」
俺が銃を構え、そしてラーダとジャックも剣を構えた。とっさの判断で俺は発砲するが、ちょうど斜面を駆け下り始めたようで、タイミングがズレて外した。リロードして更にと思った所でハルが俺を呼んだ。
「加瀬さん! やらせてください!」
そこにはエリスによって、魔法を付与された銃を構えているハルの姿があった。俺は銃をおろしハルに任せた。ラーダとジャックの前衛組と熊がガチでぶつかりあったようだ。
しかし動きにくそうだ。
そこにエリスが大声を上げた。
「炎で足場を作ります!」
その瞬間。炎が前衛組の足元周囲を走り抜けた。一瞬のことだ。
「これでマシになったはずです」
俺の方も前衛2人に大声で指示を出す。
「ハルが発砲するから、そいつが立ち上がったら左右に避けてくれ!」
2人が「了解」と返事。ハルはその時を待つ。
しばらくラーダとジャックが剣を振り回し熊に威嚇と牽制を繰り返している。足場の雪が溶けて、動きに支障がなくなったことで、この2人なら倒そうと思えば倒せるはずだ。実際に余裕すらあるようにみえる。
クマと対峙しても余裕ですか。そうですか。俺なんて手が震えてるってのに。
そうこうしている間に、クマが立ち上がり吠えた。そこを2人はタイミングよく左右に分かれる。バッチリだ。道が開かれたところでハルが引き金を引いた。
するとクマの胸と首の間に拳大の穴が空いたのだった。
結果、脱臼こそしなくなったが、一発撃つたびに肩を痛めるので光魔法による回復必須であることが分かった。
「さて、少し時間を使っちまったな」
時刻は昼をいくらか過ぎたぐらい。だが冬の夜は早い。しかも森の中とくればなおさらだ。
「少し急ごう。場合によっては泊まりになるかもしれない」
俺は全員に意思の確認をする。すると全員が了解と頷いた。
※
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ハルが追跡を開始する。先程、見つけた足跡からの追跡だ。雪の上に大きく深く刻まれた足跡。
俺は空を見上げる。曇り空で風は微風の向かい風。気温は5度だ。
「悪くない」
雪が降れば足跡が消える。かといって溶けても消える。それどころか地面が泥濘むことになる。そして夜になれば泥濘んだ地面が凍る。凍れば滑るの悪循環だ。このままの状態で追えるのが一番だが、果たしてどうなるか……
それから追跡すること、小一時間。
途中でゴブリンに遭遇したが、ハルと俺で処理。しかしレベルは上がらなかった。段々と上がりづらくなっているな。
周囲を警戒しながら更に30分。森を抜けた。その先にはちょっとした原野があった。その先に足跡が続いている。俺たちは更に追う。足跡が山と山の間の谷へと続いているのが見える。段々と近づいている気配が強くなってきた。
「ハル。気をつけろよ」
ハルは静かに頷く。それから10分、足跡を追った所で雪の上の痕跡が途絶えた。
「えっ!」
ハルが混乱している。
「ハル。止め足だ! こっちの世界の熊も使うのか……」
止め足とは、追跡者を撒く時に野生動物が見せる行動だ。自分の足跡の上を踏んで戻り、思いがけない方向へジャンプして逃げると言う方法なのだが……
エリスを見ると、周囲を警戒していた。ラーダとジャックもだ。どうやら俺たちの方が狩られる側に回っていたようだ。
こっちの熊は、どうやらかなり好戦的なようだ。
俺も周囲を警戒していると、右手側の急な傾斜の尾根にそいつが現れた。睥睨するという言葉がしっくりぐらいに堂々と現れやがった。
「右手、斜面上だ!」
俺が銃を構え、そしてラーダとジャックも剣を構えた。とっさの判断で俺は発砲するが、ちょうど斜面を駆け下り始めたようで、タイミングがズレて外した。リロードして更にと思った所でハルが俺を呼んだ。
「加瀬さん! やらせてください!」
そこにはエリスによって、魔法を付与された銃を構えているハルの姿があった。俺は銃をおろしハルに任せた。ラーダとジャックの前衛組と熊がガチでぶつかりあったようだ。
しかし動きにくそうだ。
そこにエリスが大声を上げた。
「炎で足場を作ります!」
その瞬間。炎が前衛組の足元周囲を走り抜けた。一瞬のことだ。
「これでマシになったはずです」
俺の方も前衛2人に大声で指示を出す。
「ハルが発砲するから、そいつが立ち上がったら左右に避けてくれ!」
2人が「了解」と返事。ハルはその時を待つ。
しばらくラーダとジャックが剣を振り回し熊に威嚇と牽制を繰り返している。足場の雪が溶けて、動きに支障がなくなったことで、この2人なら倒そうと思えば倒せるはずだ。実際に余裕すらあるようにみえる。
クマと対峙しても余裕ですか。そうですか。俺なんて手が震えてるってのに。
そうこうしている間に、クマが立ち上がり吠えた。そこを2人はタイミングよく左右に分かれる。バッチリだ。道が開かれたところでハルが引き金を引いた。
するとクマの胸と首の間に拳大の穴が空いたのだった。
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