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021:緑の子鬼
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結論から言おう。
緑色の子鬼は敵だったわ。
話しかけたらニタリと笑って襲いかかってきやがった。
俺は、とっさにライフル銃を構えて発砲。後方に吹っ飛ぶ子鬼。音に驚いたのか残りの2体が立ち止まった。俺はそいつらに対しても次々に発砲したのだった。
「び、っくりしたぁ」
突然始まった戦闘。
いや虐殺?
正当防衛、だよな?
大丈夫だよな?
俺は後ろを振り返る。するとそこには不満な顔をしたハルが居た。
「私の分も残しておいてくださいよぉ」
いやいや、それどころじゃなかったし!
突然の遭遇戦。いや奇襲? 油断していたのは俺の方? まぁなんでもいいわ。接近戦だった。いや。やばいわ。
うん。俺、今、パニックってる!
だが一つ確信した。
「これはあれだな……」
「なんです?」
「興奮した猿や猪や熊を相手に想定していないと……俺たちが餌になるぞ?」
危険だ。話しかけたら嬉々として襲いかかってきやがった。ハルが沈黙する。
「……熊ですか」
「おう」
「一度は戦ってみたいと思っていました」
はは。頼もしいね。
「いや。まぁ気持ちは分かる。狩りをする以上、そういう大物を狩る夢は見るよな。分かるが覚悟がいる。鹿狩りみたいに逃げる的と、向かってくる敵ってのは根本的に違うんだ」
いや。鹿も危険ではあるがな。特に雄!
でも、それでも……
これは違う。一方的に狩る狩られるの関係じゃないんだ。恐怖で今頃、手先や足に震えが来やがった。それを見たハルが俺の腕をつかんだ。
「大丈夫ですか?」
「……あぁ。すまん」
大きく深呼吸をする。
「ハル」
「はい」
「気合入れろよ?」
「……はい」
マジで命のやり取りをする場所だ。危険だという意味を本気で理解した。さて。それじゃあ解体を……
「って、なぁハル?」
「はい」
「この子鬼ってどうしたら良いんだ?」
「あぁ、そういえば。どうしたら良いんですかね?」
常識が違う。日本だとこの子鬼はニホンザルに相当すると思うが……
さて、どうしたものか。悩んでいるとハルが言った。
「とりあえず格納しておきますね」
「あぁ。すまんな」
こうしてひとまず、狩りは終わった。
時間はまだ午前11時を少し回ったところだ。
もう少し森を歩こうと思う。今度はハルが獲物を狩る番だ。
※
※
※
それから、しばらく歩いたが収穫はなし。
お昼。カロリーメイトを食べながら、とりあえずステータスを確認した。するとレベルが2アップしていた。簡単にレベルが上がるな。良いことだ。
とりあえず索敵を取ってみる。
「おぉ!」
思わず声を上げる。
「どうしたんです?」
「あぁ。この索敵とやら。凄いぞ」
「どう凄いんです?」
「今、取得して使ってみたら近くに何かいるのが分かる」
「何かってなんですか?」
「樹上だ。たぶん鳥だろう」
「へぇ。それは……どこです?」
俺は樹上を指さして目を凝らしてみる。
「いた。あれだ」
「おぉ。本当に居た」
これは便利だ。半径にすると20メートルぐらいか?
森という、茂みや樹木という見通しが悪い中で、この能力。たとえ20メートルでも先のことが分かるのは有り難い。
ポイントが1残っている。これでキャッシュを購入しよとして……止めた。
「なぁハル」
「はい」
「ポイントだがな。キャッシュではなく出来るだけスキルや自身の強化に使ったほうが良いかもしれない」
「ポイント1でキャッシュ1万は勿体ないってことですか?」
「あぁ。索敵を取ってわかった。これは生き残るために必要だ。でもキャッシュはいわば贅沢品だ。生活を豊かにはするが、でも生き残るために必要かと言われたら必ずしも必要じゃない」
「はい」
「少なくても食事関係は宿の方で取ったほうが良いかもしれん」
「うん。はい。わかりました」
「それに他の冒険者と交流も必要だ。俺たちはこの世界の常識がさっぱりわからない」
ハルが頷く。さっきの子鬼一つとっても、どうしたら良いか分からない。
「でも、買い叩かれたり嘘を吐かれたりしませんかね?」
「それも経験だと思って割り切ろう」
「はい!」
そう言って頷いたハルが笑った。
「どうした?」
「加瀬さんがど~んとしたなと思って」
そうか。ど~んとしたか。
「少しは見直したか?」
「いえいえ。最初から尊敬も信頼もしていますよ」
こいつは……
「そうか」
「はい!」
「よし、じゃあもう少し狩りをしようか!」
「はい!」
緑色の子鬼は敵だったわ。
話しかけたらニタリと笑って襲いかかってきやがった。
俺は、とっさにライフル銃を構えて発砲。後方に吹っ飛ぶ子鬼。音に驚いたのか残りの2体が立ち止まった。俺はそいつらに対しても次々に発砲したのだった。
「び、っくりしたぁ」
突然始まった戦闘。
いや虐殺?
正当防衛、だよな?
大丈夫だよな?
俺は後ろを振り返る。するとそこには不満な顔をしたハルが居た。
「私の分も残しておいてくださいよぉ」
いやいや、それどころじゃなかったし!
突然の遭遇戦。いや奇襲? 油断していたのは俺の方? まぁなんでもいいわ。接近戦だった。いや。やばいわ。
うん。俺、今、パニックってる!
だが一つ確信した。
「これはあれだな……」
「なんです?」
「興奮した猿や猪や熊を相手に想定していないと……俺たちが餌になるぞ?」
危険だ。話しかけたら嬉々として襲いかかってきやがった。ハルが沈黙する。
「……熊ですか」
「おう」
「一度は戦ってみたいと思っていました」
はは。頼もしいね。
「いや。まぁ気持ちは分かる。狩りをする以上、そういう大物を狩る夢は見るよな。分かるが覚悟がいる。鹿狩りみたいに逃げる的と、向かってくる敵ってのは根本的に違うんだ」
いや。鹿も危険ではあるがな。特に雄!
でも、それでも……
これは違う。一方的に狩る狩られるの関係じゃないんだ。恐怖で今頃、手先や足に震えが来やがった。それを見たハルが俺の腕をつかんだ。
「大丈夫ですか?」
「……あぁ。すまん」
大きく深呼吸をする。
「ハル」
「はい」
「気合入れろよ?」
「……はい」
マジで命のやり取りをする場所だ。危険だという意味を本気で理解した。さて。それじゃあ解体を……
「って、なぁハル?」
「はい」
「この子鬼ってどうしたら良いんだ?」
「あぁ、そういえば。どうしたら良いんですかね?」
常識が違う。日本だとこの子鬼はニホンザルに相当すると思うが……
さて、どうしたものか。悩んでいるとハルが言った。
「とりあえず格納しておきますね」
「あぁ。すまんな」
こうしてひとまず、狩りは終わった。
時間はまだ午前11時を少し回ったところだ。
もう少し森を歩こうと思う。今度はハルが獲物を狩る番だ。
※
※
※
それから、しばらく歩いたが収穫はなし。
お昼。カロリーメイトを食べながら、とりあえずステータスを確認した。するとレベルが2アップしていた。簡単にレベルが上がるな。良いことだ。
とりあえず索敵を取ってみる。
「おぉ!」
思わず声を上げる。
「どうしたんです?」
「あぁ。この索敵とやら。凄いぞ」
「どう凄いんです?」
「今、取得して使ってみたら近くに何かいるのが分かる」
「何かってなんですか?」
「樹上だ。たぶん鳥だろう」
「へぇ。それは……どこです?」
俺は樹上を指さして目を凝らしてみる。
「いた。あれだ」
「おぉ。本当に居た」
これは便利だ。半径にすると20メートルぐらいか?
森という、茂みや樹木という見通しが悪い中で、この能力。たとえ20メートルでも先のことが分かるのは有り難い。
ポイントが1残っている。これでキャッシュを購入しよとして……止めた。
「なぁハル」
「はい」
「ポイントだがな。キャッシュではなく出来るだけスキルや自身の強化に使ったほうが良いかもしれない」
「ポイント1でキャッシュ1万は勿体ないってことですか?」
「あぁ。索敵を取ってわかった。これは生き残るために必要だ。でもキャッシュはいわば贅沢品だ。生活を豊かにはするが、でも生き残るために必要かと言われたら必ずしも必要じゃない」
「はい」
「少なくても食事関係は宿の方で取ったほうが良いかもしれん」
「うん。はい。わかりました」
「それに他の冒険者と交流も必要だ。俺たちはこの世界の常識がさっぱりわからない」
ハルが頷く。さっきの子鬼一つとっても、どうしたら良いか分からない。
「でも、買い叩かれたり嘘を吐かれたりしませんかね?」
「それも経験だと思って割り切ろう」
「はい!」
そう言って頷いたハルが笑った。
「どうした?」
「加瀬さんがど~んとしたなと思って」
そうか。ど~んとしたか。
「少しは見直したか?」
「いえいえ。最初から尊敬も信頼もしていますよ」
こいつは……
「そうか」
「はい!」
「よし、じゃあもう少し狩りをしようか!」
「はい!」
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