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004:拉致されたようです
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何事かと顔を上げるが、そこには誰も居ない。辺りを見回すがハル以外に人は居ないのだ。ハルも「今の笑い声は?」と首を傾げている。
すると耳の直ぐ側で声が聞こえた。
「今回の人たちは随分と面白い人達のようだね」
驚くがしかし、やはり声の主の姿は見えない。声の調子からするに若い男の声なのだが。俺は声の主に尋ねる。
「誰だ!」
すると声はクスクス笑った後で、俺の質問には答えず一人で喋り始めた。
「これから説明することを覚えるように。命に関わるよ? いいね?」
そう言って説明を始めた。
「君たちには共通して一つの魔法を使えるようにした。その魔法とは『ステータス』。この呪文を唱えると目の前の空間にウィンドウが開く。そこに表示される内容を理解し、運用してくれ」
突然、始まった意味不明な内容に俺が戸惑って声を上げようとすると、ハルが大声で叫んだ。
「ステータスですね。わっかりました!」
分かったのかよ!
俺が驚いてハルを見ると、ハルは人差し指を口元に当てて首を左右に振った。静かにしていろということのようだ。
俺は大人しくしていることにする。
「さて。説明は以上だ。予想以上にあなた方が静かだったので私は機嫌がいい。何か質問があれば、三つまでなら答えるよ?」
するとハルが手を上げた。
「はいはーい。私たちの現状を教えてくださーい」
「君たちは私の管理する世界に招かれた客、という立ち位置だね」
「うん。じゃあ、どうやったら帰れますか?」
「それは自分自身で調べて欲しい」
「じゃあ、最後に何で私たちだったんですか?」
「たまたま近くにいたからだね」
俺は思わずハルに拍手を贈りたくなった。ナイスだハル。
現状の理解。それから回帰。最低限それだけでも充分な質問だったが、動機が分かったのは大きい。
誰でもよかった。たまたま近くに居たから、という答え。それはつまり突発的な犯行であり、愉快犯であるということを示唆している。
つまり現状からの回帰は用意されていない可能性があるということだ。相手の気分次第で用意してくれる可能性もあるが……さてこの相手はどうだろうな?
帰れない、という可能性も視野に入れて行動する必要がありそうだ。
そう思うと恐怖と怒りが湧き起こるが、言ってもしょうがないので深呼吸して心の平静を整えることに。超常の存在の理不尽さに異を唱えても仕方がないからだ。
そんな事を考えていると、隣でハルが、さっそく「ステータス」と呟いて、ウィンドウを開いた。半透明の青い色をしたパソコンのようなシステム画面。
「本当に開きやがったよ。まるでゲームだな」
そんな俺の言葉のあとに、洞窟内に響く声が言った。
「そうだ。私の管理する世界を、おおいに楽しんでくれたまえ。お客人よ!」
そう言って気配が消えた。勝手なこと言いやがって!
とは言えだ。現状が、あまりに荒唐無稽で、混乱が冷め止まない事態であることは事実。
とりあえず本当に『ステータス』という魔法が使えるということは、俺達は未知なる存在に拉致され、理の違う世界に転移させられたと考えて行動したほうがよさそうだ。
「くっそぉ。面倒くさいことになったな……」
ハルに同意を求めて視線を向けたが、彼女の瞳は爛々と輝いている。そんな彼女が言った。
「面白くなってきましたね!」
なわけあるか!
すると耳の直ぐ側で声が聞こえた。
「今回の人たちは随分と面白い人達のようだね」
驚くがしかし、やはり声の主の姿は見えない。声の調子からするに若い男の声なのだが。俺は声の主に尋ねる。
「誰だ!」
すると声はクスクス笑った後で、俺の質問には答えず一人で喋り始めた。
「これから説明することを覚えるように。命に関わるよ? いいね?」
そう言って説明を始めた。
「君たちには共通して一つの魔法を使えるようにした。その魔法とは『ステータス』。この呪文を唱えると目の前の空間にウィンドウが開く。そこに表示される内容を理解し、運用してくれ」
突然、始まった意味不明な内容に俺が戸惑って声を上げようとすると、ハルが大声で叫んだ。
「ステータスですね。わっかりました!」
分かったのかよ!
俺が驚いてハルを見ると、ハルは人差し指を口元に当てて首を左右に振った。静かにしていろということのようだ。
俺は大人しくしていることにする。
「さて。説明は以上だ。予想以上にあなた方が静かだったので私は機嫌がいい。何か質問があれば、三つまでなら答えるよ?」
するとハルが手を上げた。
「はいはーい。私たちの現状を教えてくださーい」
「君たちは私の管理する世界に招かれた客、という立ち位置だね」
「うん。じゃあ、どうやったら帰れますか?」
「それは自分自身で調べて欲しい」
「じゃあ、最後に何で私たちだったんですか?」
「たまたま近くにいたからだね」
俺は思わずハルに拍手を贈りたくなった。ナイスだハル。
現状の理解。それから回帰。最低限それだけでも充分な質問だったが、動機が分かったのは大きい。
誰でもよかった。たまたま近くに居たから、という答え。それはつまり突発的な犯行であり、愉快犯であるということを示唆している。
つまり現状からの回帰は用意されていない可能性があるということだ。相手の気分次第で用意してくれる可能性もあるが……さてこの相手はどうだろうな?
帰れない、という可能性も視野に入れて行動する必要がありそうだ。
そう思うと恐怖と怒りが湧き起こるが、言ってもしょうがないので深呼吸して心の平静を整えることに。超常の存在の理不尽さに異を唱えても仕方がないからだ。
そんな事を考えていると、隣でハルが、さっそく「ステータス」と呟いて、ウィンドウを開いた。半透明の青い色をしたパソコンのようなシステム画面。
「本当に開きやがったよ。まるでゲームだな」
そんな俺の言葉のあとに、洞窟内に響く声が言った。
「そうだ。私の管理する世界を、おおいに楽しんでくれたまえ。お客人よ!」
そう言って気配が消えた。勝手なこと言いやがって!
とは言えだ。現状が、あまりに荒唐無稽で、混乱が冷め止まない事態であることは事実。
とりあえず本当に『ステータス』という魔法が使えるということは、俺達は未知なる存在に拉致され、理の違う世界に転移させられたと考えて行動したほうがよさそうだ。
「くっそぉ。面倒くさいことになったな……」
ハルに同意を求めて視線を向けたが、彼女の瞳は爛々と輝いている。そんな彼女が言った。
「面白くなってきましたね!」
なわけあるか!
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