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第一章:王都編
038:隣町への道中にて
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クレアと話し合って、隣町までの道を往復しようとなった。途中には森があり草原が有り川もある。まずは街道に沿って移動をする。
季節は三の月から、もうすぐ四の月に変わろうかという頃のこと。
「いやぁ。ポカポカ陽気を通り越して少し暑いくらいだねぇ」
春の陽気の中を徒歩で街道を進む。ときおり護衛付きの行商人や商隊が通り過ぎていく。行く人、来る人と実に様々だ。
「うぅん。人の往来が多いね」
私の言葉にクレアが頷く。
「そうだな。王都が近いから当然といえば当然か」
「どうする?」
この場合のどうするとは戦闘のことだ。ここまで人の往来が多いと魔物だって出てきやしない。
クレアは少し考えて答えた。
「いいんじゃないかな。とりあえず道を覚えよう。何が在って何が無いかを知るのが目的だし。魔物との戦闘に関しては遅いか早いかだけの違いだろう」
「それもそうだね。ここでいきなり誰も通らない道なき道を進んでも、しょうがないか」
というわけで、特別に何があるものでもない街道をただただ歩く。
ちなみに、これから行く街は小さなダンジョンを要する街だ。それ以外に観るべきもののない街。
いや、まぁ。ダンジョンが在るってだけで充分な気もするが、クレアが調べたところでは、そのダンジョンに出る魔物が、これまたショボいらしい。
どうショボいかと言うと、なんと大ネズミが出てくる程度だとか。
戦闘経験を積むという点で考えると大ネズミに価値はない。いや。それ以外にも価値がない。まぁそれでもダンジョンの雰囲気を知るために経験として一度は入っておこうかと言う話にはなっているけどね。それだけだ。
旅慣れた者で往復するだけなら合計四日の旅となる。向こうの街で二日ほど滞在する予定だから今度、王都に帰るのは六日後だ。その間。レダとミアには宿題を出してある。
ってもまぁ内容はというと、今まで教えた文字や計算をより完璧にしておくこと。あとは体力づくりを怠らないこと。という感じだ。ホルアダにも様子を見てくれるようにお願いしてあるから大丈夫だろう。
私たちは街道を歩く。天気は快晴で風も心地よく日差しも気持ちがいい。
何事もなく平野部を歩ききった。そして目の前には森。迂回するルートと直進するルートの両方がある。もちろん森の中を通る直進ルートのほうが危険も大きい。とは言っても微々たる差だ。私たちは行きは森ルートを通ることにした。
「森と言ってもたいしたことないね」
私の感想。それにクレアが答える。
「まぁ道が通っているからな。ときおり馬車も通るし人通りもある。木陰が涼しいしで快適なルートだな」
そんな森の道を歩いていると、トトが視線を上げた。
視界がちょうど小高い丘に遮られて見渡せない状況だ。
そんな小高い丘向こうの先へ耳を立てて、しきりに匂いを嗅いでいる。クレアがそれに気付いて警戒態勢へ。私も腰の剣の柄に手を添える。そこに男たちの声が聞こえてきた。
「おらおら。ゴブリン相手に手こずってんじゃねぇぞ!」
「しっかりしろ。新人。腰が引けてっぞ!」
声の様子から、新人の教育中らしい。
私たちが小高い丘を登りきってみると、囃し立てている男たちが顔を上げてこっちを見た。ちょうど輪になっていて、その中央では十代前半ぐらいの男の子が一匹のゴブリンと戦っていた。男たちは全員で七人。私たちも少し観戦したが、いい戦いをしているようだ。男の子が必死に戦いゴブリンも必死だ。
まぁ見てても得るものもないし、邪魔をするのも何だしなので、私たちは彼らの後ろを通ることに。リーダーと思しき男が視線をこっちに向けて一言。
「女か……」
私は軽く会釈をして通り過ぎる。クレアは完全無視だ。トトは少し警戒中といった様子。
私はクレアの態度が気になったが、今は尋ねるのを止めて歩くことに専念するのだった。
季節は三の月から、もうすぐ四の月に変わろうかという頃のこと。
「いやぁ。ポカポカ陽気を通り越して少し暑いくらいだねぇ」
春の陽気の中を徒歩で街道を進む。ときおり護衛付きの行商人や商隊が通り過ぎていく。行く人、来る人と実に様々だ。
「うぅん。人の往来が多いね」
私の言葉にクレアが頷く。
「そうだな。王都が近いから当然といえば当然か」
「どうする?」
この場合のどうするとは戦闘のことだ。ここまで人の往来が多いと魔物だって出てきやしない。
クレアは少し考えて答えた。
「いいんじゃないかな。とりあえず道を覚えよう。何が在って何が無いかを知るのが目的だし。魔物との戦闘に関しては遅いか早いかだけの違いだろう」
「それもそうだね。ここでいきなり誰も通らない道なき道を進んでも、しょうがないか」
というわけで、特別に何があるものでもない街道をただただ歩く。
ちなみに、これから行く街は小さなダンジョンを要する街だ。それ以外に観るべきもののない街。
いや、まぁ。ダンジョンが在るってだけで充分な気もするが、クレアが調べたところでは、そのダンジョンに出る魔物が、これまたショボいらしい。
どうショボいかと言うと、なんと大ネズミが出てくる程度だとか。
戦闘経験を積むという点で考えると大ネズミに価値はない。いや。それ以外にも価値がない。まぁそれでもダンジョンの雰囲気を知るために経験として一度は入っておこうかと言う話にはなっているけどね。それだけだ。
旅慣れた者で往復するだけなら合計四日の旅となる。向こうの街で二日ほど滞在する予定だから今度、王都に帰るのは六日後だ。その間。レダとミアには宿題を出してある。
ってもまぁ内容はというと、今まで教えた文字や計算をより完璧にしておくこと。あとは体力づくりを怠らないこと。という感じだ。ホルアダにも様子を見てくれるようにお願いしてあるから大丈夫だろう。
私たちは街道を歩く。天気は快晴で風も心地よく日差しも気持ちがいい。
何事もなく平野部を歩ききった。そして目の前には森。迂回するルートと直進するルートの両方がある。もちろん森の中を通る直進ルートのほうが危険も大きい。とは言っても微々たる差だ。私たちは行きは森ルートを通ることにした。
「森と言ってもたいしたことないね」
私の感想。それにクレアが答える。
「まぁ道が通っているからな。ときおり馬車も通るし人通りもある。木陰が涼しいしで快適なルートだな」
そんな森の道を歩いていると、トトが視線を上げた。
視界がちょうど小高い丘に遮られて見渡せない状況だ。
そんな小高い丘向こうの先へ耳を立てて、しきりに匂いを嗅いでいる。クレアがそれに気付いて警戒態勢へ。私も腰の剣の柄に手を添える。そこに男たちの声が聞こえてきた。
「おらおら。ゴブリン相手に手こずってんじゃねぇぞ!」
「しっかりしろ。新人。腰が引けてっぞ!」
声の様子から、新人の教育中らしい。
私たちが小高い丘を登りきってみると、囃し立てている男たちが顔を上げてこっちを見た。ちょうど輪になっていて、その中央では十代前半ぐらいの男の子が一匹のゴブリンと戦っていた。男たちは全員で七人。私たちも少し観戦したが、いい戦いをしているようだ。男の子が必死に戦いゴブリンも必死だ。
まぁ見てても得るものもないし、邪魔をするのも何だしなので、私たちは彼らの後ろを通ることに。リーダーと思しき男が視線をこっちに向けて一言。
「女か……」
私は軽く会釈をして通り過ぎる。クレアは完全無視だ。トトは少し警戒中といった様子。
私はクレアの態度が気になったが、今は尋ねるのを止めて歩くことに専念するのだった。
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