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第一章:王都編

035:冒険者の期限

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 というわけで、私はその後に自分の魔法の特性について検証を行った。その結果をゲン爺が評価する。

「ふむ。バケツ一杯分の水か。あとは小さな火の玉に、風起こしの魔法。土を耕したりと言った感じで初級魔法しか使えないようじゃな。いわゆる生活魔法じゃ。魔力量は多いが放出できる距離は歩幅にして一〇歩の距離(七メートル強)まで……戦闘には不向きじゃな」

 私は天を仰いだ後で、地面に両膝と両手をついた。一言で表すならガックシと言う感じだ。そんな私を見たゲン爺が苦笑いを浮かべながら言う。

「戦闘で使うなら少々工夫がいる型ではあるが生活魔法や物作りに便利じゃな。どうじゃ。ティナちゃん。儂に弟子入りでもするかね?」

 弟子入り。

 錬金術師に……

 しかも当代随一。十指に入ると言われる人物に弟子入り……

「まぁ、とは言っても、しばらくは冒険者家業をしてもらうことになるがな」

 私は立ち上がり、膝と手についたホコリを払いながら問う。

「何故です?」
「まずは魔力の操作の練度を上げてもらいたいというのが一点。たしかに綺麗な流れをしておってそこは問題ない。一定量を維持し続ける点は合格。しかし繊細で精緻な扱いはできるかね?」

 そう言ってゲン爺は水を発現させた。そしてその水を操作して精緻で複雑な模様を生み出してみせたのだ。

「とまぁこんな感じじゃな。流石にここまで出来るようになれとは言わんが、せめて合格点がやれる程度にはなってもらう。これが出来るようになって始めて錬金術師の入り口に立てるのじゃ。魔力操作は基本中の基本にして奥義。これが出来ると出きんとでは錬金術として上に行けるかどうかが決まる。でじゃ。何故冒険者をするかじゃが、その間の生活費稼ぎじゃな。錬金術師の基礎となる札や薬剤すら作れない未熟者を養う理由はないんでな」

 なるほど。

「穀潰しは要らないと」
「そういうことじゃ。基本の技ぐらい独力で到達するぐらいでないと研究者として大成するはずがない。研究とは日々の地道な成果の果てにある。自身の魔力で試行錯誤も出来んで何が錬金術師か。というわけじゃな」

 なるほど。ちゃんと道理があるんだな。

「それに前にも言ったが、何事も経験じゃ。冒険の大変さを知るのも必要じゃて」

 冒険者になる理由もちゃんとあるのか。

 良し!

「私。まずは冒険者を極める!」

 するとゲン爺。

「いや。極めんでいい。そんなの何十年先になるか分からんし出来る保証もないからな」
「えぇ……」

 せっかく気合を入れたのに!

「まぁ、でもせめて中級冒険者程度にはなれ。欲を言えば上級じゃな。期限も切っておこうか。そうじゃな中級なら三年じゃな。上級なら十年じゃ」

 おおぅ。でも三年後となると十八、九歳。十年後でも二十五、六歳か。

「私。頑張る!」
「うむ。待っておるぞ」
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