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第一章:王都編

034:魔法

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 私はゲン爺に愚痴を吐き出す。

「あぁあ。魔法が使いたいなぁ」

 特に傷を癒やす魔法だ。光属性の魔法が使えたら何かと便利なのに。それ以外にも水と火が使えたらなと思う。風と土と闇? 知りませんねぇ。

 ここで少し魔法について解説をしようかな。この世界で魔法を使える人間は希少だ。まず魔力を持つ人間が少ないらしい。その上で魔法の技術の多くは秘匿されて世に出ていないのだと言う。

 私は魔力はあるが秘匿された技術に触れる機会がなかったタイプの人間だ。私が男だったら父も大金を払って魔法使いを教師として雇っただろうけどね。あいにく貴族の令嬢が魔法を習うメリットなんてないんだよ。だって貴族令嬢の役目は家の存続のために男児を産んで、その後は夫のサポートをするだけだから。

 そんな感じの世界にも関わらず独学で魔力制御を行っていた私の態度こそが異常だったのだ。

 でもどんなに魔力制御を行い、魔力が綺麗に流れていようとも魔法が使えなければ意味がない。

 そんな私の愚痴をニコニコと聴いているだけだったゲン爺が目を見開いて驚いた。

「おや。それだけ綺麗な魔力の流れをしているのに使えないのかね?」
「視えるの?」
「そりゃあな。これでも魔術師の端くれじゃからな」

 あぁ。そりゃそうか。錬金術師だもんね。魔法も使えるよね。

「えっと、じゃあさ。ゲン爺。私に魔法を教えて!」

 するとゲン爺は少し考えたあとで言った。

「いいぞ。まぁティナちゃんなら悪用はせんじゃろ」

 というわけで突然始まる魔法の講義。

「まずは身体強化を教えようかの。それだけ綺麗に魔力を制御できておるんじゃ。たぶん直ぐにできるようになるじゃろ」

 そう言って、実演付きで教えてくれた。

「普段、自然に全身に流している魔力を足腰で止めてみぃ」

 私は言われた通りに魔力を制御する。

「その状態でジャンプをしなさい」

 ジャンプをしてみる。すると明らかに違うのだ。

「おぉ!」

 ゲン爺はさらに言う。

「普段は垂れ流しにしている魔力を体の周りで留め、さらに全身くまなく循環させれば一時的にじゃが防御力が上がる。鍛錬次第では剣すら通さんようになるぞ」

 ほぉほぉ。ゲン爺はさらに追加で情報をくれる。

「体外に放出して魔法という現象にする方法じゃが、これは想像力が鍵を握ると言われておる。魔力が水に変わる姿を想像してみなさい」

 私は言われた通りに魔力が水に変化する様を想像した。少し時間がかかったが、それでもあっさりと魔力が水へと変化した。

「やはり魔力操作の練度が高いから飲み込みが早いの」

 そう言ってホッホッホと笑う。

 だが私は、それどころじゃなかった。こんな簡単なことだったのかと絶句する。

 そんな私にゲン爺が言った。

「日々の魔力制御の鍛錬の成果じゃな」と。

 私は叫ぶ。

「納得がいかなぁい!」
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