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第一章:王都編

029:オラクレアル男爵

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 オレクルアルの屋敷に到着した。そこで執事が対応したが何故か奥に通された。

「オレクルアル様がお会いになるそうです」

 どういう風の吹き回しか。名誉男爵の当主様が直々に会ってくれるらしい。

 なんでだよ。会いたくないよ。下の人間に任せておけよ。

 そうは思ったが貴族に会ってやると言われたら、逆らえないのが平民の悲しいところ。

 そして奥の応接室で待っていたのは、やけに服がキラキラピカピカした男だった。それがソファにふんぞり返って出迎えたのだ。

 うわぁ。いかにも成り上がりですって感じだぁ。趣味悪ぅ。

 そんな私の感想をよそにオレクルアルは目を細めて私を見ながら言った。

「ん? どこかで見た顔だな?」

 おっと、こりゃまずい。私の方は彼を見たのは初めてだが、彼の方はどうやら私を見たことがあるらしい。

 私はいちおう貴族に対する平民用女性のお辞儀をする。面を軽く伏せ、片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を軽く曲げ、背筋は伸ばしたままで両手でスカートの裾を軽く持ち上げて行う。今は私の服装は男性用の服でズボンなのでズボンの裾でそれを行う。

 面を伏せて頭が露わになったことで彼の記憶が呼び覚まされたようだ。

「その珍しい銀の髪! 確かグレイセント男爵家の!」

 あちゃー。バレちゃった!

 でもここは誤魔化せないかな?

 ポーカーフェイスで無反応。そして、とりあえず礼儀に則って名乗る。

「お初にお目にかかります、閣下。冒険者のティナにございます」

 すると男は片方の眉を上げて首を傾げた。

「何だ偶然か? それとも男爵家の落とし胤か? いや。確か銀の髪は妻の方だったはず……」

 どうやら私の社交界での出来事は知らないらしい。まぁ元婚約者の伯爵家にとっても私の元実家の男爵家にとっても醜聞だからな。上手いこと隠したのだろう。するとオレクルアルは不思議そうにしながらも椅子に深く座り直した。

「まぁいい。それで? 冒険者ということは私が出した依頼の件だな?」
「はい。閣下。左様にございます」
「魔力に問題はないんだな?」
「はい。閣下」
「ふん! いいだろう。ならば雇ってやる。期間は収穫が行われるまでの一〇日間。報酬は依頼票に出した通り。何か質問があれば担当の者に聞け。いいな?」
「はい。閣下」
「下がっていぞ」

 ふぅ。きりぬけたぁ。危なかったぁ。ドキドキしながら退室する。その後は魔薬草園の場所を聞いて移動。仕事をするだけだ。

 なんだか心臓に悪い仕事を受けちゃったなぁ。

 はぁ……

 何も起きなきゃいいけど。
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