追放された武闘派令嬢の異世界生活

第一章：王都編

026：野宿２

　独りで野営は何かと難しい。やはり寝れない、休めないというのはキツい。どうしても独りでというのなら、せめて音や気配に敏感な犬の相棒が欲しいところだなとクレアには言われてしまった。

「犬、ですか……」
「あぁ。無理にとは言わんがな」

　悩みどころだ。生き物を飼う。それはすなわち他の動物の命を預かるということだ。重いな。私がクレアにそう言うと彼女は笑顔で言った。

「そういう人にこそオススメなんだ。他の生命を軽々しく扱わない精神は大事な要素だ」

　まぁ候補の一つとして考えておこう。

　さて。ありがたい事に、朝までクレアは付き合ってくれるという。私とクレアは仮眠を取る。私はマントに身を包み荷物を枕にして。クレアはトトと一緒だ。何か異変に気がつけば魔犬のトトが目を覚ますと言う感じだ。

　と言うわけで、お休みぃ。

　深夜。私は普通に目を覚ます。いつもの鍛錬の時間だ。私が起きた気配でトトも起きたようだ。そしてクレアも起きる。

「どうした？」

　私は正直に話す。

「ん。いつもなら鍛錬の時間だから目が覚めたみたい」
「ほぉ」
「してもいいかな？」
「まぁ良いんじゃないか？。まだ暗いしな。ポピテピ藻を採るのは明るくなってからの方がいいし他にやることもないから」
「ん。ありがと」

　今日は走り込みは無し。その代わりに柔軟体操をしつこいぐらいにやる。それを見ていたクレアが言った。

「ずいぶんと体が柔らかいんだな」
「ん。可動域に差が出るからね」
「ほぉ」
「本格的に動く前に体を暖める効果もあるんだ」
「ふむ。面白い。どうやるんだ？」

　クレアも一緒に混じってのストレッチ。それから筋トレに入り。形の稽古を軽く行う。

「面白い動きだな」

　クレアも真似をして形の稽古を行っているが、初心者らしく挙動が少しおかしいので簡単に指導を行う。

「ふむ。こうか？」
「うん。そう。腰をひねってその流れを腕や足の先へ伝える感じ」
「む。以外に難しいな」
「そうなのよ。でも基本になる動作だからね。そこは徹底して行う」
「なるほど」

　最後に剣の素振りだ。

　私が持っているのは、この国での一般的な直剣ではなくて半曲剣と呼ばれるタイプのサーベルを持っている。

　直剣ほどは普及していない武器で、少し特殊な武器だ。斬ることがメインで日本刀のそれが一番イメージしやすい。

　私は女性にしては腕力がある方だが上背と体重が無いために、戦法は避けて斬るが基本動作になる。基本的に受けてしまったら腕力差で負ける可能性があるためだ。だから視界と動作を阻害する盾も捨てた。

　剣の師匠であるホルアダと悩んだ末の答え。

　私は剣の素振りを行う。隣ではクレアもサブウエポンである剣の素振りを行っている。

　こうして朝を迎えるまで私たちは鍛錬に励むのだった。