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第一章:王都編

023:王都ってこんな場所

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 ランツは私に、しばしの別れを告げたその日のうちに王都から出ていった。見送りはしない。私にも仕事があるし、朝のうちに話もしたしね。

 さて。それじゃあ三件目の仕事だ。今回。選んだ仕事は野営の訓練を兼ねた実践で、とある薬師の手伝いだ。王都には一本の大きな河と細かな支流が流れている。その河の源流付近に群生している藻を採ってきてくれというものだ。

「藻の採り方の説明をしようかな」

 そう言って説明をしてくれるのは四〇歳ぐらいの男性の薬師だ。

「清流でしか生きられない短命の藻だ。清流から出すとすぐに死滅して腐ってしまうから、採取には細心の注意が必要だ」
「どうやって採取して持ち運ぶんですか?」
「道具がある。魔道具だ。常に水を濾過して循環する優れものの。それに入れればいいよ。あぁそうだ。藻は河の水ごと掬い上げてくれ」

 私にとっては初の城壁の外での仕事となる。城壁の外と言っても第二城壁の外だ。

 王都の城壁は全部で六つある。拡張に継ぐ拡張で増えたのだ。

 一番外側の城壁である第六城壁の外は魔物が跋扈する土地で危険な地域となる。

 その一番外側の城壁(第六城壁)と二番目の城壁(第五城壁)の間には広大な畑が広がっている。それなりの森もあるぐらいだ。

 そして二番目と三番目の城壁の間にも畑が広がっている。その一部地域には工業区画があり、職人さんたちが働いている。貧民もこの辺に住み着いている。

 三番目と四番目の城壁の間には商業区と庶民の住居が。

 四番目と五番目の城壁が上級区画で貴族や聖職者が住んでいる。

 王族は六番目の城壁の中だ。まぁ正確にいえばこの六番目の城壁こそが第一城壁なんだけどな。

 私が今回、藻を採りに行く場所は一番外の第六城壁と第五城壁の間の部分を流れている河の中だ。河は王都を幾つかに区切ってもいる。

 つまり王都は三角州の上に作られているのだ。

 河はしっかりと整備されていて、雨の少ない地域なので洪水とも無縁。しかし第一城壁と第二城壁はとにかく広大だ。どんなに駆除しても、どこからか魔物が入り込んでくる。一説では河を渡って来る。または泳いで来るのではないかとも言われている。

 王都に限らず村や町の城壁には結界と呼ばれる魔物除けが施されているのだが、さすがに広すぎて王都の全てをカバーはしきれないらしい。そのため綻びが多く、その綻びから入った魔物は人の手によって排除しているというのが現状だ。

 そんなわけだから、私が行く城壁の間は危険度は少ないが、全く安全という場所でもないのだ。

 それ故。初心者や見習いの冒険者が働ける場所となっている。ちなみに畑や農家の人を守るために巡回を専属にしている冒険者もいるとのことだ。兵士の見回り地域は住民区画から内側なので。

 さて、説明ばかりで飽きただろうから、この辺で説明は終わり。

 要約すると、王都はとにかく広くて一部城壁の中では魔物も出る場所があるということだな。
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