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第一章:王都編

021:順調そのもの

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 お爺ちゃんとは色んな話をした。主にモンスターとの戦闘や、その際にどういったことを思ったのか。モンスターの生態や特徴なんてのも簡単だが教えてもらった。主に冒険者に必要そうなことばかり。

 他にもお爺さんが自身で作ったモンスター事典なる物も見せてもらった。お爺さんは若い頃は冒険者をしていたそうで、驚いたことにポーションを始めて作ったのもお爺さんらしい。

 そう言ったことを話しながら本の整理をしているので遅々として進まないのも事実。だがお爺さんは構わないという。

「いいんじゃよ。どこで何がアイディアの切っ掛けになるか分からんからな。遠回りもいいもんじゃて。カッカッカ」

 そう言って笑う、お爺ちゃんを見ていると、私は今の私の生活を今ひとつ見つめ直す必要性を感じた。豊かにするにはどうしたいいだろうかと考えるようになったのだ。

 そんな仕事をしながら三日ほどが経った。一軒家の本の整理は中々進まず。工房の弟子たちが呆れていた。私は平謝りするばかり。そこでポロッと言ってしまった。

「もうね。いっその事。大きな屋敷でも買えばいいのに。お金はあるんでしょ?」

 するとお爺ちゃん。目を見開いた。驚愕しているようだ。

「そ、それは!」
「えっ、何? 何かまずいこと言った?」
「まさに発想の転換! その発想はなかったわ!」

 そう言って弟子たちに屋敷を探してくれと頼んでいた。

「もしかして、お爺さん。賢いけど馬鹿なのかな?」

 それから五日。近所の屋敷を買い取ったお爺ちゃんは一軒家から屋敷へと引っ越した。私はそのお手伝い。というわけで仕事内容は変わっちゃったけど、依頼主の評価は高く、給金も弾んでくれた。なによりお爺ちゃんと知り合えたこと自体が私の財産だ。

「いつでも来なさい。歓迎するよ」

 そう言ってくれたのも嬉しかったな。

 さて。仕事は順調に進んだ。季節はようやく春を迎えて、暦は雪が解け花開き始める季節となった。まぁ前世だと三月も終わりぐらいの頃のこと。

 一つ面白い出来事があった。

 いつものように深夜。冒険者ギルドでホルアダに剣の稽古をしてもらっていた時。ランツがやってきた。何故か頭が青々としている。髪を生やしていたのだ。

「どうしたの、その髪。伸ばしてるの?」

 私が問うと彼は「お、おう。まぁちょっと気分転換にな」と言った。ちょっと挙動がおかしい。私をチラチラとしか見ない。そしてこう言ったのだ。

「へ、変かな?」
「変ではないけど……」

 私はそこでピンときた。

「もしかして私がハゲは嫌だからって言ったから伸ばしたの?」
「ち、違う。ただの気分だよ!」

 ふぅん。気分ねぇ。

 私がニヤニヤしていると、ランツは顔が真っ赤になり始めた。するとホルアダが笑い始めた。

「あっはっは。ランツが! ランツが恋してる!」

 そう言って髪が伸び始めた坊主頭をぐりぐりとした。やめたげなよぉ。ランツの顔がどんどんと赤くなっていく。こっちをチラチラ見ながら!

 私は思わずランツを見て言った。

「何。この可愛い生き物!」

 するとランツは恥ずかしかったのだろう。走って逃げ出したのだった。
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