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第一章:王都編

020:錬金術師のお爺さん

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 本の分別作業をする。お爺さんが話しかけやすい雰囲気なので雑談をしながらだ。

「っていうかお爺ちゃん。仕事って何やってんの?」

 飄々としたお爺ちゃんなので私はだいぶ気軽に話しかけるようになっている。そして、これだけの本を購入できる財力はどこからくるのかと素朴な疑問も湧いてくる。するとご老人はニコニコと笑顔で言った。

「錬金術師じゃよ」
「錬金術師? 金を作り出すっていう?」
「そうじゃよ」
「なんか凄そう……」
「かっかっか。実際、凄いんじゃぞ。儂はその錬金術師の中でも十指に入るな」
「この国で?」
「いんや。世界でじゃ」
「世界!」
「まぁ世界いうても、この国も含めて近隣諸国でと言う意味じゃがな」
「それでも凄い!」
「公式ではじゃけどな」
「非公式も居る?」
「そこを含めると、実態のほどは分からん」

 ほへー。そんな凄いお爺さんには見えんが。だがそれも、この本の数を見るに凄いんだろうなというのは分かる。

「敬語使おうか?」
「かっかっか。いらんわ。普通で良いぞ」

 変な爺さんだな。

「ふぅん。で、錬金術師ってどうやってなるの?」
「錬金術師自体は誰でもなれる。ただ上を目指すとなると色々と経験しておる方が有利じゃな。例えば実戦経験とか旅とか普通の生活とか」
「そんなのが必要なの?」
「そうじゃ。アイディアというのは何も無いところからは生まれてこん。錬金術の基本は、あったら良いなを実現することじゃ」
「へぇ。あったらいいなを、かぁ。素敵」
「ふぉっふぉっふぉ。じゃろ?」
「うん」
「かっかっか。さっきも言ったが何事も経験じゃよ」

 そう言ってお爺さんがニヤリと笑う。

「どうじゃ? 儂。良いこと言っておる? カッコいいかね?」

 私は苦笑い。

「最後の言葉がなければ格好良かったのに。色々と台無しだよ」
「かっかっか。そうか。それは失敗失敗」

 そう言って笑う老人。

 変な人。

 それが私の第一印象だった。
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