14 / 48
第一章:王都編
014:食事への誘い
しおりを挟む
三人で帰宅する。その際、二人とも視線をキラキラと輝せながら先程の試合の感想を言い合っている。まぁ感想と言っても「すごかった」「かっこいい」と言うこの二つの言葉で片が付く程度の感想だ。
とはいえ、いきなり二人が格闘マニアも真っ青な感想戦をやり始めても困りものだけどね。
私的には久しぶりにワクワクと楽しかったので大変に満足のいく一戦だった。
少し時間が遅くなってしまった。
とはいえ汗を拭かないで職場に行くのも何だか嫌だ。仕方がないので朝食は屋台で済ませることにした。
※
※
※
さて、写本の仕事の最終日。腕を痛めていた職人さん二人は十日目には復帰していたが、残りの五日間も頼むと言われていたので頑張った。
昼が少し過ぎた頃。工房の親方が私を呼んだ。
「今日までご苦労さんだったね」
そう言って完了印を押した冒険者ギルドの査定票を私に手渡した。ついでに給料も払ってくれる。
「ティナ殿。また機会があったら是非、貴女に頼みたい」
「はい。ありがとうございます。それではまた!」
お礼を言って工房を後にした私は冒険者ギルドに向かう途中で査定表を見てみた。そこには優良の文字が。
「やった!」
十五日間。私、頑張った。偉い!
自分でも自分の頑張りを褒める。
「ふんふんふ~ん」
ご機嫌で王都の街なかを歩いていると、今日の明け方に戦った禿頭の男が冒険者ギルドの前で立っていた。何してんだろ?
私が不思議に思いながらも近づくと、男も私の存在に気がついたようだ。右手を上げて私に声をかけてきた。
「よぉ」
声をかけられたので返事する。
「よぉ。何か用?」
そういえば戦った後。何かを言おうとしてたな。すると男は少し気恥ずかしそうに言った。
「あぁ。今日の仕事は終わりか?」
「うん。終わった」
「そうか。なぁ。良かったら酒とかどうだ? 奢るぞ?」
「ん?」
酒か。こっちの世界に来てからは飲んでないな。少し考える。飲み慣れない酒を、よく知らない男と飲む。うん、間違いしか起こらないな。迷っているとそこにレダが冒険者ギルドから出てきた。ナイスタイミング!
「レダ」
「あっティナ姉ちゃん……と、朝のオッサン!」
オッサンと呼ばれて男が叫ぶ。
「オッサンじゃねぇ! お兄さんだ! まだ二十一だよ!」
今度は私が叫ぶ。
「二十一! 見えない!」
「余計なお世話だ!」
ふむ。なかなかキレの良いツッコミをする面白い男だ。まぁ。そういう定番の漫才は置いておいて本題だな。
「酒はまだ飲み慣れてないから。食事なら良いけど?」
「あ? あぁ、なら飯屋に行こう」
するとレダが私と男を交互に見ながら言った。
「ティナ姉ちゃん。今日は外食?」
私は禿頭の自称二十一歳の男を見る。すると彼は苦笑い。
「そっちの弟も一緒でいいぞ?」
「妹も居るんだけど。一緒にいい?」
ミアだけ仲間外れは可愛そうだ。すると男は頷いた。
「あぁ。構わんぞ。子供が一人も二人も変わらん」
こうして私たちは男と食べに行く事になったのだった。
とはいえ、いきなり二人が格闘マニアも真っ青な感想戦をやり始めても困りものだけどね。
私的には久しぶりにワクワクと楽しかったので大変に満足のいく一戦だった。
少し時間が遅くなってしまった。
とはいえ汗を拭かないで職場に行くのも何だか嫌だ。仕方がないので朝食は屋台で済ませることにした。
※
※
※
さて、写本の仕事の最終日。腕を痛めていた職人さん二人は十日目には復帰していたが、残りの五日間も頼むと言われていたので頑張った。
昼が少し過ぎた頃。工房の親方が私を呼んだ。
「今日までご苦労さんだったね」
そう言って完了印を押した冒険者ギルドの査定票を私に手渡した。ついでに給料も払ってくれる。
「ティナ殿。また機会があったら是非、貴女に頼みたい」
「はい。ありがとうございます。それではまた!」
お礼を言って工房を後にした私は冒険者ギルドに向かう途中で査定表を見てみた。そこには優良の文字が。
「やった!」
十五日間。私、頑張った。偉い!
自分でも自分の頑張りを褒める。
「ふんふんふ~ん」
ご機嫌で王都の街なかを歩いていると、今日の明け方に戦った禿頭の男が冒険者ギルドの前で立っていた。何してんだろ?
私が不思議に思いながらも近づくと、男も私の存在に気がついたようだ。右手を上げて私に声をかけてきた。
「よぉ」
声をかけられたので返事する。
「よぉ。何か用?」
そういえば戦った後。何かを言おうとしてたな。すると男は少し気恥ずかしそうに言った。
「あぁ。今日の仕事は終わりか?」
「うん。終わった」
「そうか。なぁ。良かったら酒とかどうだ? 奢るぞ?」
「ん?」
酒か。こっちの世界に来てからは飲んでないな。少し考える。飲み慣れない酒を、よく知らない男と飲む。うん、間違いしか起こらないな。迷っているとそこにレダが冒険者ギルドから出てきた。ナイスタイミング!
「レダ」
「あっティナ姉ちゃん……と、朝のオッサン!」
オッサンと呼ばれて男が叫ぶ。
「オッサンじゃねぇ! お兄さんだ! まだ二十一だよ!」
今度は私が叫ぶ。
「二十一! 見えない!」
「余計なお世話だ!」
ふむ。なかなかキレの良いツッコミをする面白い男だ。まぁ。そういう定番の漫才は置いておいて本題だな。
「酒はまだ飲み慣れてないから。食事なら良いけど?」
「あ? あぁ、なら飯屋に行こう」
するとレダが私と男を交互に見ながら言った。
「ティナ姉ちゃん。今日は外食?」
私は禿頭の自称二十一歳の男を見る。すると彼は苦笑い。
「そっちの弟も一緒でいいぞ?」
「妹も居るんだけど。一緒にいい?」
ミアだけ仲間外れは可愛そうだ。すると男は頷いた。
「あぁ。構わんぞ。子供が一人も二人も変わらん」
こうして私たちは男と食べに行く事になったのだった。
80
お気に入りに追加
173
あなたにおすすめの小説
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!
錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~
転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!
小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。
しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。
チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。
研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。
ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。
新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。
しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。
もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。
実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。
結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。
すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。
主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる