28 / 61
028:サリナと話そう
しおりを挟む
さて。サリナちゃんだが今回は姉の勧めではなく自分の意思で来たようだ。
「それで? 今日はどうしたの?」
俺がそう尋ねると、彼女は頬を膨らませた上に口を尖らせて言った。
「用がなきゃ来ちゃいけないんですか?」
「あはは。ごめんごめん。そんなことはないよ」
「本当は仕事終わりの夕方頃にでも来たいんですよ。でもジンさん。その時間も仕事してるでしょ? もうね。尋ねていい時間が居つなのかさっぱりなんです。しょうがないので今日は、その辺の話をしに来ました」
おおう。それは済まなんだ。
「そうだな。お昼の時間とかはどう? 一緒に昼食とか」
「それってエステラさんも一緒にですか?」
「まさか。そこは別で」
空気が重い中で食事なんてしたくないからね。
「ふぅん。じゃあ、そうですね。私が昼食を用意しますので食べて下さい」
「あ~、うん。わかったよ。ありがとう。食材とか届けようか? 昼食分として。さすがに全部を持ってもらうわけにはいかないからね」
「それは……正直、助かります」
そこで俺は彼女が日常をどう過ごしているのか気になった。ゴンダやカレナが言うには外にあまり出ないらしいので。
「そうだ。サリナちゃんて普段、家で何してるの? 家って農家だよね。でもあまり外に出ないって……」
「え。えっとぉ、そのぉ……」
「ん?」
「家事の手伝いです。あとは、その……実は木工細工をしています」
おっ! モノ作りしてんだ。
「え。見せて欲しいな。興味ある!」
「別に大したものは作ってませんよ?」
「うん。それでも見てみたいな。どんな物を作ってるの?」
「ペンダントとかを少し……」
「へぇ。木彫りのペンダントか。いいね」
「そう、ですか?」
「うん。じゃあ細かい仕事とか好きなの?」
「はい!」
へぇ。これはもしかしたら。
「実は俺ね。そういう物や道具のデザインって苦手なんだ。実用性重視と言えば聞こえはいいけど。作ったものに飾り気がないって言われる」
「へぇ。ジンさんにも苦手なものがあるんですね」
「そりゃあるよ。腕っぷしにも自信がないからね!」
「そこ。自慢するところですか?」
「あっはっは。そうだね。でもさ。もし良かったら俺の作った道具に飾りを付けてくれないかな? 給金も出すよ?」
「えっ! い、いえ。それは、ちょっと……」
「どうして?」
「じ、自信がない、です」
「そう? まぁさ。無理にとは言わないけど。でも考えておいてよ」
「と、とりあえず作品を見てからにして下さい」
「おっ。実はちょっと自信あり?」
「……わかりません。今まで家族以外の人に見せたことがないので。家族には好評なんですけどね」
「ふぅん。そっか。そうだ! じゃあさ。行商人にでも見せて幾らの値がつくか試してみない?」
「いえ。あの……とりあえずジンさんが気に入るかどうかを先に……」
「そうだね。了解。んじゃ今度、来る時に作品を見せてね!」
「は、はい!」
そんな会話を工房で交わしていると培養中のスライムが動いた。サリナちゃんが興味を示す。
「なんですか? この茶色と黄色のゲチョゲチョは……」
「スライムだよ」
「スライム?」
「魔物だね」
「え! 魔物を飼ってるんですか!」
「うん。錬金の素材用にね」
「へ、へぇ……」
顔が引きつってるな。まぁ魔物を飼育なんて普通は狂気の沙汰だよな。いちおう説明しておく。
「このスライムをね弱体化させて、トイレの排泄物処理用に改良するんだ。王都では、これが主流でさ」
「わざわざですか? その……家畜にでも食べさせたらいいんじゃないですか? 豚も居ますし」
「うん。まぁこの辺では、それでもいいんだけど。王都では家畜を飼育は簡単じゃないからね」
「はぁ……?」
どうやらピンとこないようだ。家畜とともに生きる生活をしている人ならではだよな。
「まぁ。いいや。いちおう我が家では、これを導入しようと思ってる。冒険者ギルドの職員の宿舎でも取り入れるらしいよ。職員がお金を出し合ってね」
「へえ……良い物、なんですよね?」
「そうだね。一度経験すると分かるんだけどね」
するとサリナちゃん。
「都会の人って変わってる」
そう感想を述べたのだった。
ふっふっふ。いずれ君もスラリン無しでは要られない体にしてやろう。俺は密かにそう思うのだった。
「それで? 今日はどうしたの?」
俺がそう尋ねると、彼女は頬を膨らませた上に口を尖らせて言った。
「用がなきゃ来ちゃいけないんですか?」
「あはは。ごめんごめん。そんなことはないよ」
「本当は仕事終わりの夕方頃にでも来たいんですよ。でもジンさん。その時間も仕事してるでしょ? もうね。尋ねていい時間が居つなのかさっぱりなんです。しょうがないので今日は、その辺の話をしに来ました」
おおう。それは済まなんだ。
「そうだな。お昼の時間とかはどう? 一緒に昼食とか」
「それってエステラさんも一緒にですか?」
「まさか。そこは別で」
空気が重い中で食事なんてしたくないからね。
「ふぅん。じゃあ、そうですね。私が昼食を用意しますので食べて下さい」
「あ~、うん。わかったよ。ありがとう。食材とか届けようか? 昼食分として。さすがに全部を持ってもらうわけにはいかないからね」
「それは……正直、助かります」
そこで俺は彼女が日常をどう過ごしているのか気になった。ゴンダやカレナが言うには外にあまり出ないらしいので。
「そうだ。サリナちゃんて普段、家で何してるの? 家って農家だよね。でもあまり外に出ないって……」
「え。えっとぉ、そのぉ……」
「ん?」
「家事の手伝いです。あとは、その……実は木工細工をしています」
おっ! モノ作りしてんだ。
「え。見せて欲しいな。興味ある!」
「別に大したものは作ってませんよ?」
「うん。それでも見てみたいな。どんな物を作ってるの?」
「ペンダントとかを少し……」
「へぇ。木彫りのペンダントか。いいね」
「そう、ですか?」
「うん。じゃあ細かい仕事とか好きなの?」
「はい!」
へぇ。これはもしかしたら。
「実は俺ね。そういう物や道具のデザインって苦手なんだ。実用性重視と言えば聞こえはいいけど。作ったものに飾り気がないって言われる」
「へぇ。ジンさんにも苦手なものがあるんですね」
「そりゃあるよ。腕っぷしにも自信がないからね!」
「そこ。自慢するところですか?」
「あっはっは。そうだね。でもさ。もし良かったら俺の作った道具に飾りを付けてくれないかな? 給金も出すよ?」
「えっ! い、いえ。それは、ちょっと……」
「どうして?」
「じ、自信がない、です」
「そう? まぁさ。無理にとは言わないけど。でも考えておいてよ」
「と、とりあえず作品を見てからにして下さい」
「おっ。実はちょっと自信あり?」
「……わかりません。今まで家族以外の人に見せたことがないので。家族には好評なんですけどね」
「ふぅん。そっか。そうだ! じゃあさ。行商人にでも見せて幾らの値がつくか試してみない?」
「いえ。あの……とりあえずジンさんが気に入るかどうかを先に……」
「そうだね。了解。んじゃ今度、来る時に作品を見せてね!」
「は、はい!」
そんな会話を工房で交わしていると培養中のスライムが動いた。サリナちゃんが興味を示す。
「なんですか? この茶色と黄色のゲチョゲチョは……」
「スライムだよ」
「スライム?」
「魔物だね」
「え! 魔物を飼ってるんですか!」
「うん。錬金の素材用にね」
「へ、へぇ……」
顔が引きつってるな。まぁ魔物を飼育なんて普通は狂気の沙汰だよな。いちおう説明しておく。
「このスライムをね弱体化させて、トイレの排泄物処理用に改良するんだ。王都では、これが主流でさ」
「わざわざですか? その……家畜にでも食べさせたらいいんじゃないですか? 豚も居ますし」
「うん。まぁこの辺では、それでもいいんだけど。王都では家畜を飼育は簡単じゃないからね」
「はぁ……?」
どうやらピンとこないようだ。家畜とともに生きる生活をしている人ならではだよな。
「まぁ。いいや。いちおう我が家では、これを導入しようと思ってる。冒険者ギルドの職員の宿舎でも取り入れるらしいよ。職員がお金を出し合ってね」
「へえ……良い物、なんですよね?」
「そうだね。一度経験すると分かるんだけどね」
するとサリナちゃん。
「都会の人って変わってる」
そう感想を述べたのだった。
ふっふっふ。いずれ君もスラリン無しでは要られない体にしてやろう。俺は密かにそう思うのだった。
0
お気に入りに追加
1,058
あなたにおすすめの小説
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話
此寺 美津己
ファンタジー
祖国が田舎だってわかってた。
電車もねえ、駅もねえ、騎士さま馬でぐーるぐる。
信号ねえ、あるわけねえ、おらの国には電気がねえ。
そうだ。西へ行こう。
西域の大国、別名冒険者の国ランゴバルドへ、ぼくらはやってきた。迷宮内で知り合った仲間は強者ぞろい。
ここで、ぼくらは名をあげる!
ランゴバルドを皮切りに世界中を冒険してまわるんだ。
と、思ってた時期がぼくにもありました…
突然シーカーになったので冒険します〜駆け出し探索者の成長物語〜
平山和人
ファンタジー
スマートフォンやSNSが当たり前の現代社会に、ある日突然「ダンジョン」と呼ばれる異空間が出現してから30年が経過していた。
26歳のコンビニアルバイト、新城直人はある朝、目の前に「ステータス画面」が浮かび上がる。直人は、ダンジョンを攻略できる特殊能力者「探索者(シーカー)」に覚醒したのだ。
最寄り駅前に出現している小規模ダンジョンまで、愛用の自転車で向かう大地。初心者向けとは言え、実際の戦闘は命懸け。スマホアプリで探索者仲間とダンジョン情報を共有しながら、慎重に探索を進めていく。
レベルアップを重ね、新しいスキルを習得し、倒したモンスターから得た魔石を換金することで、少しずつではあるが確実に成長していく。やがて大地は、探索者として独り立ちしていくための第一歩を踏み出すのだった。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
追放された武闘派令嬢の異世界生活
新川キナ
ファンタジー
異世界の記憶を有し、転生者であるがゆえに幼少の頃より文武に秀でた令嬢が居た。
名をエレスティーナという。そんな彼女には婚約者が居た。
気乗りのしない十五歳のデビュタントで初めて婚約者に会ったエレスティーナだったが、そこで素行の悪い婚約者をぶん殴る。
追放された彼女だったが、逆に清々したと言わんばかりに自由を謳歌。冒険者家業に邁進する。
ダンジョンに潜ったり護衛をしたり恋をしたり。仲間と酒を飲み歌って踊る毎日。気が向くままに生きていたが冒険者は若い間だけの仕事だ。そこで将来を考えて錬金術師の道へ進むことに。
一流の錬金術師になるべく頑張るのだった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる