出戻り国家錬金術師は村でスローライフを送りたい

023：スライムの豆知識

　さて、錬金工房と雑貨屋を始めたわけだけどお客の入りが思った以上に多いので大変だ。作った端から売れていく。同時に買い取りも多い。

　特にメジュ草の代わりになるボランド草とトラシの種。

　大樹海に少し入れば直ぐに生えているのだ。村人も森の浅い層にこぞって入っているようだ。危ないから止めれ。簡易結界石だって万能じゃないんだ。実際、魔物に襲われて怪我した人まで出た。

　自己責任と言えば自己責任だが。

　これに関しては村長に相談した。

　そしたら村の規則が刷新された。曰く。森に入るなら冒険者を雇うように、だ。

　それでも入るならもう完全に自己責任となる。何が起きても知らんと言う感じだな。

　そんな感じの忙しい日々を過ごして八日が経った。昨夜は雪が降ったので景色はすっかり雪景色だ。サクッサクッと新雪を踏むと音が心地いい。

「さっぶぅ！」

　工房の暖炉に火を焚べていく。そして日課の作業を行っているとエステラがやってきた。

「ジン。ちょっといいかな？」
「どうした？」
「うん。冒険者が来ててスライムを生け捕ったって」
「あぁ。ようやくか。分かった。ちょうど区切りが良いとこなんで直ぐ行くよ」

　火の始末をして、店の方へ行く。すると女性の冒険者が立っていた。

「スライムを捕獲したそうで？」

　すると女性の冒険者が頷き捕獲したスライムを見せてきた。

「これだ」

　俺はそれを確認する。生きているかどうかをだ。

　捕獲器の中で確かにスライムは動いている。だがやはり小さい。冬場は餌が少ないので仕方がない。少し培養というか飼育して大きくする必要があるな。

　俺は女性の冒険者にお礼を言って冒険者ギルドに見せる査定表に『良』と書き込む。女性と少し会話だ。

「大変じゃなかったです？」

　すると女性冒険者が頷く。

「あぁ。大変だったよ。スライムの捕獲の仕事。今回、初めて受けたんだけど全然見つからなくてさ」
「すみませんね。夏場が最も活動的で数も多いんですよ。逆に冬場は越冬するために大人しくて。見つけてしまえば捕まえやすいんですけどね」

　すると女性冒険者。

「確かに捕まえやすかったな。夏場は逆なんだ？」
「えぇ。夏場に捕まえるなら少し弱らせないと危険です」
「へぇ。そうなんだ。それはいいことを聞いた」
「あぁそうそう。樹上には気をつけるようにしてくださいね。この辺にいるマーブルスライムがするとは聞いたことないけど、ブラックスライムと呼ばれる第一種特定危険生物は樹上から。または天井から覆いかぶさってくるモノもいるそうですから。もしブラックスライムの居る森やダンジョンに入るなら要注意です」
「スライムが狩りをするのか？」
「えぇ」
「わかった。ありがとう。樹上にも気を張るようにするよ」
「今回のスライム捕獲。少し料金に色を付けさせてもらいますので、また機会があればよろしくお願いします。いちおう、また捕獲依頼を出す予定なので」

　女性冒険者は「わかった。ありがとう」と、そう言って帰っていったのだった。