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011:収穫祭2

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 カレナが「ねぇねぇジン?」と言って、声を潜めた。

「ん? 何だ?」

 俺も声のトーンを落とす。

「私の三つ下の妹のサリナなんだけどね。ジンに紹介したげよっか?」
「三つ下って、まだ十四じゃないか」
「来年には成人だよ」
「そりゃそうだけど」
「どうかな? 私と違って大人しい子なんだ」

 ゴンダも入ってきた。

「そうそう。大人しすぎて恋人もできないらしい。家からほとんど出ないしな。ちょっと心配でさ」

 ふぅん。なんかあったのかな?

「それで、ジンとどうだろうって話をしててね」
「どうだ? 悪い話じゃないと思うんだが」

 カレナとゴンダからの話に俺は「ん~。まぁ会って話をするだけでいいなら。付き合うかどうかはそれからかなぁ」と答える。すると二人は、じゃあ近いうちに紹介するからと言って場を離れていったのだった。





 今年は豊作だったようで徴税官がホクホクと機嫌が良かったらしい。俺も少し挨拶をした。

「ほぉ。国家錬金術師。それはまた凄い人物がいるな」

 俺は首を左右に振る。

「辞めた身の上ですから」
「それでもだ。賢者の塔まで上り詰めた英才か。それで? この村では何をするつもりだね?」
「錬金工房と雑貨屋をやろうかと」
「ふむ。何を作って売る予定だ?」
「現在のところ候補に上がっているのは低級から中級のポーション類ですね。他には簡易結界石などになります。冒険者向けの商品が主ですね」
「ほぉ。まぁ村で使う商品となると、どうしてもそうなるか。しかし、勿体なくないか? 知識と技術が泣いているぞ?」

 俺は少し困ってしまう。

「人々に寄り添った商品を作りたいので。いちおう野望もあるんですよ?」

 そう言って、夢を語って聞かせた。

「あっはっは。転移か。他にも空が飛びたいと。ロマンだなぁ。なるほど。賢者の塔は不向きだった理由がわかった」

 俺は苦笑いを浮かべる。

「どちらかというと愚者の烙印を押される内容ばかりでして。お恥ずかしい……」

 しかし徴税官さん。笑顔だが、それでも真剣な目をして言った。

「いや。夢があるのは良いことだ。空を飛びたい、か。ふふ。久しぶりに俺も子供の頃の夢を思い出した」

 俺は愉しげに笑う男に問うた。

「どんな夢です?」
「なに。この空の向こうには何があるのだろうか、とな」

 俺は空を見上げる。青い青い空。しばらく見上げていると吸い込まれていきそうなほど。

「空の先……ですか」
「そう。何があるんだろうな……」

 それは確かに興味がある。

「面白そうですね!」

 俺が頷くと徴税官は笑いながら言った。

「だろ?」

 そして村から出る時。俺に向かって言った。

「もし空を飛べるようになったら、ぜひ俺を呼んでくれ」
「えぇ。絶対に呼びます。空の向こうを一緒に見に行きましょう」

 すると徴税官。

「俺はヒックスだ。ヒックス・ビルマーナ」
「ジンです。ジン・マクウィル」
「頑張れよ。ジン」
「はい!」
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