何か妖怪

魔女裁判

　驚いたことに現代に魔女が現れたという。

　それに驚いた民衆は、こぞって密告を始めた。「あいつは魔女だ！」と。

　こうして集められた魔女と呼ばれた女性たち。

　彼女たちに「汝は魔女か」と問えば、当然彼女たちは「いいえ」と答える。

　それどころか自信満々で言い放つ。

「私達が魔女かどうか裁判でも何でもすればいい」

　困ったのは裁判官達だ。

　魔女かどうかの判断をどうするかの話し合いが行われた。そこに一人の賢者が現れこう答えた。

「過去。魔女裁判が開かれた際に行われた方法で水に沈めて判断する方法があったそうです」

　その判断方法に、裁判官達は半信半疑だった。「水に沈めた程度で分かるのか？」と。

　しかし他に方法を思い浮かばなかった裁判官達は、この方法を試してみることにした。

　水に沈めて、1分。苦しいのだろう。水の中でもがく者が出始める。

　そして……

　水から顔を上げた女達を見て、裁判官達はおろか、陪審員達も驚愕する。

　そこにあったのは、魔法が溶け、シワだらけになった魔女たちの姿だったのだ。

「こ、この者たちは魔女だ！　即刻、火炙りの刑に！」

　こうして、世間に魔女が認知されだすと驚いたことに、次々に民衆から密告が始まったのだ。

　ある者はこう言ったという。

「一晩だ。一晩共に過ごして朝目が覚めたら、隣に老婆がいた！」

　また、ある者はこう言ったという。

「結婚する前は、普通の女性だったんだ。それが年々、怪しい魔法を使い始めたんだ。俺の給料を使い潰して！」と。

　後に、美しさを翻弄する魔法を使う彼女たちには「美魔女」と言う名が付けられた。

　近世暗黒期の幕開けだ。