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第2話 残したことば

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 ライブが終わると、私たちは前田さんから話を聞くため、控室に向かった。コーセーさんの方を見ると、少しボーっとした様子だったが、目は輝いて見えた。アカネちゃんは無関心を装っているが心なしか足取りが軽いように見える。初めてのライブハウスをそれなりに満喫してくれたみたいだ。
 ドアをノックし控室に入ると、前田さんがベースの手入れをしながら私たちを待ってくれていた。扉の前に立つ私を見て、前田さんは手を上げた。
「ヒマリちゃん、おひさー。よく来てくれたね」
「お久しぶりです。前田さん」
 前田さんは表情の変化が乏しく一見無愛想に見えるが、意外と人懐っこい人だ。
「部活の先輩を連れてきたんです。こちらがコーセーさんで、こっちがアカネちゃん」
 前田さんは二人を見ると、「どーもー」と言って手を振った。二人は慌ててお辞儀した。
「実は、今日はお姉ちゃんのことについて聞きに来たんです。お姉ちゃんのことは、もう聞いてますよね」
 前田さんは静かに頷いた。
「聞いたときは超ショックだったよ。まさかあのマシロがね……いや、一番ショックなのはヒマリちゃんか。ヒマリちゃん、マシロのこと大好きだったもんね」
  私は、コーセーさんとアカネちゃんの方をちらと見て、
「確かに辛かったですけど、辛いことだけじゃなかったんです。お姉ちゃんの死をきっかけに、この二人と出会うことが出来たんですから……なんていうとちょっと不謹慎ですかね」
 前田さんは首を横に振って、
「いや、天国のマシロも、ヒマリちゃんが元気そうにしてるの見て安心してると思うよ。お二人さん、ヒマリちゃんのこと、よろしくね」
 コーセーさんとアカネちゃんは勢いよく頷いた。
「ところで、苅谷さんは今日いらっしゃらないんですか? 田村さんとは連絡がとれたんですけど、苅谷さんからは返信が来なくって」
 田村さんも苅谷さんも、お姉ちゃんが前にいたバンドのメンバーだ。田村さんはドラマーで、前田さんと同じく『ハローズ』のメンバーだが、今日はバイトがあって来られないそうだ。ライブでは代わりにサポートメンバーが叩いていた。苅谷さんはギタリストで、バンドメンバーの中ではお姉ちゃんと一番仲が良かった人だ。
「アイツはいま大阪にいるよ。親の仕事の都合で引っ越したんだ」
「えっ、そうだったんですか!?」
 まさか引っ越していたとは。お姉ちゃんからそんな話を聞かなかったので驚いた。
 前田さんは少し暗い顔をして少し俯いた。そして私の顔をもう一度見ると、静かに言った。
「アイツな、大阪に行く前、こんなこと言ってたんだよ。『マシロは私が殺したんだ』って。なあ、ヒマリちゃんは、どういう意味か分かるか?」
 静寂が4人を包んだ。苅谷さんが、お姉ちゃんを、殺した?
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