14 / 40
Ⅱ. 革命
第弐話 彼氏と妹
しおりを挟む
銀時計の前には、低い身長に不釣り合いな大きなギターケースを背負った少女が一人佇んでいた。
「ヒマリ、おはよう」
僕が手を挙げると彼女は元気よく手を振った。
「随分と大きな荷物だね」
僕がギターケースを指差すとヒマリは恥ずかしそうに頭を掻いた。
「苅谷さんが、『ライブが終わったら一緒に弾こう』って言うんです。弾くのはいいんですけど、ギターケース背負って歩くのはちょっと恥ずかしいですね」
苅谷さんというのは、マシロ先輩の友人で、今回のライブに出演するギタリストのことだ。今年の3月までは名古屋にいたらしいのだが、親の転勤で大阪に引っ越したらしい。
「ところで、その……アカネは?」
僕がそう言うと、ヒマリはため息をつきながらスマホの画面を見せた。
アカネちゃん ヒマリー、暇だからあと5秒で来て
ー。30分も前に来ちゃって、もう退
屈で死にそうなのよ。5、4…
ヒマリ え? アカネさん、今どこですか?
アカネちゃん あっ、ごめん、金時計と間違えた
ヒマリ 5、4…
アカネちゃん ちょ、待って! すぐ行くから!
「あれから2分は経ってますね」
「アハハ、まあ、そんなに距離はないし、すぐ来るさ」
そう言うと、遠くからアカネがトランクを引きずって走ってきた。こんなに慌てているアカネは久しぶりに見た。
「ハア、ハア……わ、私が一番乗りね。皆、遅いわよ、まったく。ハア、ハア」
「それが言いたかったから、僕と一緒に電車に乗らなかったんだね」
同じ電車に乗ろうと誘っても頑なに断られたときは嫌われたんじゃないかと思いヒヤッとしたが、まさかこんなにくだらない理由だったとは。電車に揺られながら調べた「彼女 復縁 方法」という検索履歴を今すぐ消したい……
「ほら、早く行きますよ。3番乗りさん」
ヒマリは冷めた顔で改札に向かう。
「コーセー、ヒマリが冷たいー」
「駄々こねてないで行くよ。ドベ子さん」
「コーセーまで!?」
アカネは悄然としながら改札に向かう。これくらいの仕返しをしたって罰は当たらないはずだ。改札を抜けたヒマリが小さく吹き出した。
新幹線に乗るとアカネはすぐに寝てしまった。一番乗りをするために頑張って早起きしていたようだ。まあ、その努力は水の泡になってしまったのだが……
「幼稚園児みたいな寝顔」
ヒマリが悪戯っぽく笑う。たしかに高校生には見えないほど気の抜けた顔で寝ている。どちらかというとクールな顔立ちのアカネだが、寝顔はとても愛らしく見える。僕は顔にかかった髪の毛を優しく払った。
「やっぱり彼女の寝顔は格別ですか?」
ヒマリがニヤニヤしながら聞いてくる。ここ数週間で分かったことだが、ヒマリは意外と人をイジるのが好きな性格のようだ。それに、わりと辛辣。
「まあ、それなりにね」
僕が苦笑いしながら言うと、ヒマリは少し不満そうな顔を見せた。ヒマリが僕の顔をじっと覗き込む。
「コーセーさんって、本当にアカネさんのことが好きなんですか?」
「へ?」
意外な問いを喰らって目が点になる。
「そりゃあ、まあ、好きだけど」
「そうは見えませんけどね」
ヒマリは検察官が被告人を問い詰めるみたいに僕に迫ってくる。
「どういうこと?」
「つまり、コーセーさんの愛は受動的すぎると言っているんです」
受動的……たしかにそうかもしれない。アカネはあれでけっこう僕に甘えてくるが、僕の方からアカネに働きかけることはあまりない。アカネの愛に応えるだけの愛。まさに受動的だ。
「In the end, the love you take is the equal to the love you make.」
流暢な英語だ。さすが期末考査学年一位の秀才。
「『つまるところ、汝が受けし愛は、汝が与えし愛に等しいのだ』。私の好きな言葉です」
「つまり、僕は強盗ってこと?」
「罪を責めているのではありません。ただ、タダで食べる飯はそんなに美味しくないということです」
なるほど。アカネから一方的に愛されているだけでは、彼女の愛を十分に受け止めていることにはならないということか。僕はもう一度アカネの顔を見た。小さくいびきをかいて快眠している。人の気も知らないで。僕は一つ大きなため息をついた。
「彼氏って、難しいなぁ」
項垂れる僕を見て、ヒマリは小さく笑った。
「ところで、そろそろ本題に入らないか?」
「本題?」
ヒマリがキョトンとした顔をする。
「単にチケットが余っていたから僕らを誘ったわけじゃないんだろう? あのチケットはマシロ先輩が自殺の一週間前に君に渡したものだ。ただ不要になったから渡しただけとは到底思えないね」
ヒマリは引き締まった顔で頷いた。
「『屋上事件』で全て片が付いたと思いたいところなんですが、そうもいかないんです。貰ったチケットは3枚。1枚なら分かる。姉の分を私が譲り受ける。至極単純です。でも3枚となると話は違う。姉はどうして2枚も余分にチケットを貰ったんでしょう? 私には、この3枚のチケットが、コーセーくんとアカネちゃんと一緒に大阪に行ってこい、という、姉からのメッセージのように思えるのです」
「大阪に行ってこい、というより、苅谷さんに会ってこいということだろうね。苅谷さんは、マシロ先輩の自殺についての何かを知っているんだ。どんなことかは、全く検討がつかないけどね」
そう言って僕は窓の外を眺めた。外は小雨が降っていた。田舎道を傘をさした人が歩いている。小さな雨粒が窓に点々と打ち付けられる。僕は静かにシャッターを下ろした。
「それにしても困った姉です。私たちにメッセージを一方的に与えて、自分は勝手に永眠しちゃうんですから。こっちの気持ちも少しは受け取ってほしいものです。本当に、人の気も知らないで」
「妹も難しそうだね」
膨れっ面のヒマリを見て、僕は小さく笑った。
「ヒマリ、おはよう」
僕が手を挙げると彼女は元気よく手を振った。
「随分と大きな荷物だね」
僕がギターケースを指差すとヒマリは恥ずかしそうに頭を掻いた。
「苅谷さんが、『ライブが終わったら一緒に弾こう』って言うんです。弾くのはいいんですけど、ギターケース背負って歩くのはちょっと恥ずかしいですね」
苅谷さんというのは、マシロ先輩の友人で、今回のライブに出演するギタリストのことだ。今年の3月までは名古屋にいたらしいのだが、親の転勤で大阪に引っ越したらしい。
「ところで、その……アカネは?」
僕がそう言うと、ヒマリはため息をつきながらスマホの画面を見せた。
アカネちゃん ヒマリー、暇だからあと5秒で来て
ー。30分も前に来ちゃって、もう退
屈で死にそうなのよ。5、4…
ヒマリ え? アカネさん、今どこですか?
アカネちゃん あっ、ごめん、金時計と間違えた
ヒマリ 5、4…
アカネちゃん ちょ、待って! すぐ行くから!
「あれから2分は経ってますね」
「アハハ、まあ、そんなに距離はないし、すぐ来るさ」
そう言うと、遠くからアカネがトランクを引きずって走ってきた。こんなに慌てているアカネは久しぶりに見た。
「ハア、ハア……わ、私が一番乗りね。皆、遅いわよ、まったく。ハア、ハア」
「それが言いたかったから、僕と一緒に電車に乗らなかったんだね」
同じ電車に乗ろうと誘っても頑なに断られたときは嫌われたんじゃないかと思いヒヤッとしたが、まさかこんなにくだらない理由だったとは。電車に揺られながら調べた「彼女 復縁 方法」という検索履歴を今すぐ消したい……
「ほら、早く行きますよ。3番乗りさん」
ヒマリは冷めた顔で改札に向かう。
「コーセー、ヒマリが冷たいー」
「駄々こねてないで行くよ。ドベ子さん」
「コーセーまで!?」
アカネは悄然としながら改札に向かう。これくらいの仕返しをしたって罰は当たらないはずだ。改札を抜けたヒマリが小さく吹き出した。
新幹線に乗るとアカネはすぐに寝てしまった。一番乗りをするために頑張って早起きしていたようだ。まあ、その努力は水の泡になってしまったのだが……
「幼稚園児みたいな寝顔」
ヒマリが悪戯っぽく笑う。たしかに高校生には見えないほど気の抜けた顔で寝ている。どちらかというとクールな顔立ちのアカネだが、寝顔はとても愛らしく見える。僕は顔にかかった髪の毛を優しく払った。
「やっぱり彼女の寝顔は格別ですか?」
ヒマリがニヤニヤしながら聞いてくる。ここ数週間で分かったことだが、ヒマリは意外と人をイジるのが好きな性格のようだ。それに、わりと辛辣。
「まあ、それなりにね」
僕が苦笑いしながら言うと、ヒマリは少し不満そうな顔を見せた。ヒマリが僕の顔をじっと覗き込む。
「コーセーさんって、本当にアカネさんのことが好きなんですか?」
「へ?」
意外な問いを喰らって目が点になる。
「そりゃあ、まあ、好きだけど」
「そうは見えませんけどね」
ヒマリは検察官が被告人を問い詰めるみたいに僕に迫ってくる。
「どういうこと?」
「つまり、コーセーさんの愛は受動的すぎると言っているんです」
受動的……たしかにそうかもしれない。アカネはあれでけっこう僕に甘えてくるが、僕の方からアカネに働きかけることはあまりない。アカネの愛に応えるだけの愛。まさに受動的だ。
「In the end, the love you take is the equal to the love you make.」
流暢な英語だ。さすが期末考査学年一位の秀才。
「『つまるところ、汝が受けし愛は、汝が与えし愛に等しいのだ』。私の好きな言葉です」
「つまり、僕は強盗ってこと?」
「罪を責めているのではありません。ただ、タダで食べる飯はそんなに美味しくないということです」
なるほど。アカネから一方的に愛されているだけでは、彼女の愛を十分に受け止めていることにはならないということか。僕はもう一度アカネの顔を見た。小さくいびきをかいて快眠している。人の気も知らないで。僕は一つ大きなため息をついた。
「彼氏って、難しいなぁ」
項垂れる僕を見て、ヒマリは小さく笑った。
「ところで、そろそろ本題に入らないか?」
「本題?」
ヒマリがキョトンとした顔をする。
「単にチケットが余っていたから僕らを誘ったわけじゃないんだろう? あのチケットはマシロ先輩が自殺の一週間前に君に渡したものだ。ただ不要になったから渡しただけとは到底思えないね」
ヒマリは引き締まった顔で頷いた。
「『屋上事件』で全て片が付いたと思いたいところなんですが、そうもいかないんです。貰ったチケットは3枚。1枚なら分かる。姉の分を私が譲り受ける。至極単純です。でも3枚となると話は違う。姉はどうして2枚も余分にチケットを貰ったんでしょう? 私には、この3枚のチケットが、コーセーくんとアカネちゃんと一緒に大阪に行ってこい、という、姉からのメッセージのように思えるのです」
「大阪に行ってこい、というより、苅谷さんに会ってこいということだろうね。苅谷さんは、マシロ先輩の自殺についての何かを知っているんだ。どんなことかは、全く検討がつかないけどね」
そう言って僕は窓の外を眺めた。外は小雨が降っていた。田舎道を傘をさした人が歩いている。小さな雨粒が窓に点々と打ち付けられる。僕は静かにシャッターを下ろした。
「それにしても困った姉です。私たちにメッセージを一方的に与えて、自分は勝手に永眠しちゃうんですから。こっちの気持ちも少しは受け取ってほしいものです。本当に、人の気も知らないで」
「妹も難しそうだね」
膨れっ面のヒマリを見て、僕は小さく笑った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
冬の水葬
束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。
凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。
高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。
美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた――
けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。
ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
ナツキス -ずっとこうしていたかった-
帆希和華
ライト文芸
紫陽花が咲き始める頃、笹井絽薫のクラスにひとりの転校生がやってきた。名前は葵百彩、一目惚れをした。
嫉妬したり、キュンキュンしたり、切なくなったり、目一杯な片思いをしていた。
ある日、百彩が同じ部活に入りたいといい、思わぬところでふたりの恋が加速していく。
大会の合宿だったり、夏祭りに、誕生日会、一緒に過ごす時間が、二人の距離を縮めていく。
そんな中、絽薫は思い出せないというか、なんだかおかしな感覚があった。フラッシュバックとでも言えばいいのか、毎回、同じような光景が突然目の前に広がる。
なんだろうと、考えれば考えるほど答えが遠くなっていく。
夏の終わりも近づいてきたある日の夕方、絽薫と百彩が二人でコンビニで買い物をした帰り道、公園へ寄ろうと入り口を通った瞬間、またフラッシュバックが起きた。
ただいつもと違うのは、その中に百彩がいた。
高校二年の夏、たしかにあった恋模様、それは現実だったのか、夢だったのか……。
17才の心に何を描いていくのだろう?
あの夏のキスのようにのリメイクです。
細かなところ修正しています。ぜひ読んでください。
選択しなくちゃいけなかったので男性向けにしてありますが、女性の方にも読んでもらいたいです。
よろしくお願いします!
Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
よこはま物語 壱、ヒメたちとのエピソード
セキトネリ
ライト文芸
ぼくの中学高校の友人で仲里というヤツがいる。中学高校から学校から徒歩20分くらいのところに住んでいた。学校帰り、ぼくはよく彼の家に行っては暇つぶしをしていた。彼には妹がいた。仲里美姫といって、ぼくらの学校の一駅手前の女子校に通っている。ぼくが中学に入学した時、美姫は小学校6年生だった。妹みたいなものだ。それから6年。今、ぼくは高校3年生で彼女は2年生。
ぼくが中学1年の時からずっと彼女のことをミキちゃん、ミキちゃんと呼んでいた。去年のこと。急に美姫が「そのミキちゃんって呼び方、止めよう!なんかさ、ぶっとい杉の木の幹(みき)みたいに自分が感じる!明彦、これからは私をヒメと呼んで!」と言われた。
「わかった、ヒメ。みんなにもキミのことをヒメと呼ぶと言っておくよ」
「みんなはいいのよ。明彦は私をそう呼んで」
「ぼくだけ?」
「そういうこと」
「・・・まあ、了解だ」みんなはミキちゃんと呼んで、ぼくだけヒメって変だろ?ま、いいか。
「うん、ありがと」
ヒメはショートボブの髪型で、軽く茶髪に染めている。1975年だから、髪を染めている女子高生というだけで不良扱いされた時代。彼女の中学高校一貫教育のカトリック系進学校では教師に目をつけられるギリギリの染め方だ。彼女は不良じゃないが、ちょっとだけ反抗してみてます、という感じがぼくは好きだ。
黒のブランドロゴがデザインされたTシャツ、デニムの膝上15センチくらいのミニスカートに生足。玄関に立った彼女の目線とぼくの目線が同じくらい。
ポチャっとしていて、本人は脚がちょっと太いかなあ、と気にしている。でも、脚はキレイだよ、無駄毛の処理もちゃんとしてるんだよ、見てみて、触って。スベスベだよ、なんて言う。小学生の時だったらいいが、ぼくも高校3年生、色気づいていいる。女子高生に脚を触ってみて、なんて言われても困る。彼女は6年前と変わらず、と思っていた。
「よこはま物語」四部作
「よこはま物語 壱½、ヒメたちとのエピソード」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/913345710/343943156
「よこはま物語 弐、ヒメたちのエピソード」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/913345710/245940913
「よこはま物語 参、ヒメたちのエピソード」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/913345710/59941151
「よこはま物語 壱、ヒメたちとのエピソード」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/913345710/461940836
黒蜜先生のヤバい秘密
月狂 紫乃/月狂 四郎
ライト文芸
高校生の須藤語(すとう かたる)がいるクラスで、新任の教師が担当に就いた。新しい担任の名前は黒蜜凛(くろみつ りん)。アイドル並みの美貌を持つ彼女は、あっという間にクラスの人気者となる。
須藤はそんな黒蜜先生に小説を書いていることがバレてしまう。リアルの世界でファン第1号となった黒蜜先生。須藤は先生でありファンでもある彼女と、小説を介して良い関係を築きつつあった。
だが、その裏側で黒蜜先生の人気をよく思わない女子たちが、陰湿な嫌がらせをやりはじめる。解決策を模索する過程で、須藤は黒蜜先生のヤバい過去を知ることになる……。
よこはま物語 弐、ヒメたちのエピソード
セキトネリ
ライト文芸
ぼくの中学高校の友人で仲里というヤツがいる。中学高校から学校から徒歩20分くらいのところに住んでいた。学校帰り、ぼくはよく彼の家に行っては暇つぶしをしていた。彼には妹がいた。仲里美姫といって、ぼくらの学校の一駅手前の女子校に通っている。ぼくが中学に入学した時、美姫は小学校6年生だった。妹みたいなものだ。それから6年。今、ぼくは高校3年生で彼女は2年生。
ぼくが中学1年の時からずっと彼女のことをミキちゃん、ミキちゃんと呼んでいた。去年のこと。急に美姫が「そのミキちゃんって呼び方、止めよう!なんかさ、ぶっとい杉の木の幹(みき)みたいに自分が感じる!明彦、これからは私をヒメと呼んで!」と言われた。
「わかった、ヒメ。みんなにもキミのことをヒメと呼ぶと言っておくよ」
「みんなはいいのよ。明彦は私をそう呼んで」
「ぼくだけ?」
「そういうこと」
「・・・まあ、了解だ」みんなはミキちゃんと呼んで、ぼくだけヒメって変だろ?ま、いいか。
「うん、ありがと」
ヒメはショートボブの髪型で、軽く茶髪に染めている。1975年だから、髪を染めている女子高生というだけで不良扱いされた時代。彼女の中学高校一貫教育のカトリック系進学校では教師に目をつけられるギリギリの染め方だ。彼女は不良じゃないが、ちょっとだけ反抗してみてます、という感じがぼくは好きだ。
黒のブランドロゴがデザインされたTシャツ、デニムの膝上15センチくらいのミニスカートに生足。玄関に立った彼女の目線とぼくの目線が同じくらい。
ポチャっとしていて、本人は脚がちょっと太いかなあ、と気にしている。でも、脚はキレイだよ、無駄毛の処理もちゃんとしてるんだよ、見てみて、触って。スベスベだよ、なんて言う。小学生の時だったらいいが、ぼくも高校3年生、色気づいていいる。女子高生に脚を触ってみて、なんて言われても困る。彼女は6年前と変わらず、と思っていた。
「よこはま物語」四部作
「よこはま物語 壱½、ヒメたちとのエピソード」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/913345710/343943156
「よこはま物語 弐、ヒメたちのエピソード」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/913345710/245940913
「よこはま物語 参、ヒメたちのエピソード」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/913345710/59941151
「よこはま物語 壱、ヒメたちとのエピ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる