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Ⅰ. 透明少女
第11話 メッセージ
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牧玄弥は一つ息を吐くと、ヒマリの顔を見た。彼女の顔には憤怒と憐憫が同居していた。牧玄弥は彼女の顔を呆然としながら眺めていた。
「でも、マシロ先輩は屋上にはいなかったんですよね?」
僕の言葉で意識を取り戻したかのように、牧玄弥は僕の方を向き、自嘲しながら肯いた。
「お前はなんでもお見通しだな。屋上に行ってもマシロはいなかった。野球場の上も見たが、何も分からなかった。途方に暮れた俺は、ただ屋上から立ち去るしかなかったんだ」
牧玄弥の手は激しく震えていた。彼は震える手で膝を押さえつけた。
「もしかしたら、マシロは俺の計画に気づいていて、俺を恨んでいるんじゃないか? だから屋上来なかったんじゃないか? ……そう思うと、夜も眠れなかった。怖くて、マシロに声をかけることも出来なかった。そして、俺が怯えているうちに、マシロは自殺した。何故かは分からない。結局、俺はアイツに触れることを恐れて、アイツが何を考えてるのか、全く知ることが出来なかった。俺にとって、アイツは透明だったんだ」
牧玄弥の目は涙で充血していた。彼は涙を拭うとヒマリの方を向いた。
「ただ、一つだけ確かなことがある。アイツが死んだのは、俺のせいだ。ヒマリ、本当にすまなかった」
姉を愛し、そして殺した男を前に、ヒマリは必死に言葉を探しているようだった。ヒマリは膝の上の拳を強く握りしめた。憎悪と哀憐の狭間で彼女は葛藤していた。
「牧先輩。マシロ先輩のメッセージを見に行きませんか?」
僕がそう言うと、アカネは怪訝そうな顔をした。
「見に行くって、どこによ」
僕は指を鳴らして、人差し指を上に向けた。
「屋上にさ」
吉川先生が鍵を開け、僕たちは屋上に入った。僕は野球場がよく見える場所まで歩いていった。皆も僕についてきた。アカネは手すりにもたれかかりなが皮肉を言った。
「まったく、雲ひとつないわね」
僕はアカネの目線の先を指すす。
「ああ。だからよく見えるだろう? マシロ先輩のメッセージが」
ヒマリが「あっ」と呟いた。
「真紅の林檎」
アカネも理解したのだろう、目を少し細めながらマシロ先輩のメッセージを眺めた。
僕たちの目線の先で、真っ赤な丸い夕陽がメラメラと燃えていた。マシロ先輩が生前ひた隠しにしていた恋心が、彼女の真紅の林檎が、激しく燃えていた。
「きっとマシロ先輩は『屋上事件』の真相を知っていたんだと思います。でも、牧先輩を恨んではいなかった。ただ、悲しかった。ずっと愛し続けた幼馴染が、卑怯な手段で自分を手に入れようとしたことが、素直に『好きだ』と言ってくれなかったことが、あまりに悲しかったんだ」
牧玄弥はまさに落ちようとする夕陽を眺めながら、膝から崩れ落ちた。
「マシロ先輩はきっと、透明な体に宿る真紅の林檎を、いつかあなたに見せようと思っていた。あなたの前で、どこまでも赤く染まってやろうと思っていた。でも、あなたはあまりに黒かった。輪郭は見せても、その中身を見せようとしなかった。あなたは……透明過ぎたんだ」
「透明なあなた」を、牧玄弥を、輝く夕陽が赤く染める。純白な少女の赤い恋心は、黒く染まった男の心を明るく照らした。男の背後に伸びる漆黒の影は、どこか泣いているように見えた。
「それにしても、マシロ先輩はなんで手紙を2つに分けたのかしらね。それに、片方だけに本名を書いて。いったい何がしたかったのかしら?」
「ああ、そのことか。長い方の手紙を書いたのはマシロ先輩じゃないよ」
アカネとヒマリは目を丸くして僕の方を見た。そして二人で顔を見合わせた後、大声で叫んだ。
「はあ!?」
僕は思わずたじろぐ。声が大きいうえに息ぴったりだ。いつの間にこんなに仲良くなったのだろう?
「ほら、先月に一度だけマシロ先輩が部室に来たことがあっただろう? その時に、別の人が書いた長い方の手紙を読んで、それを受けてあの手紙を追加したんだ」
「いや、だって、『真っ白な私より』って書いてあったじゃないですか!」
「名前に白が入ってるのはマシロ先輩だけじゃないよ」
そう言って、僕は吉川先生を見た。いや、白秋先生言うべきか。吉川先生は扉の前で今にも逃げ出そうとしている。
「ヨ、ヨ、ヨ、ヨッシー!?」
アカネは吉川先生に詰め寄る。完全に逃げるタイミングを失ったようだ。僕は一つ咳払いをする。
「春の鳥な 鳴きそ鳴きそ あかあかと 外の面の草に 日の入る夕」
ハッとした表情を見せるヒマリとは対照的にアカネは眉を顰めている。
「北原白秋の歌さ」
まだ理解出来ないアカネのためにヒマリが現代語訳をする。
「『春の鳥よ、どうか鳴かないでくれ。家の外の草を夕陽が赤々と染めるこの夕暮れに』という意味です。自分と同じ名前の俳人の歌を手紙の冒頭に用いたんですね。さすが国語教師です」
「さすが」と言われ、吉川先生の顔が少し緩んだ。この人はむしろ感情が読み取りやす過ぎる。
「なるほど。それにヨッシーなら米に放課後に屋上を掃除するから、『いつでも待って』いることは可能よね」
僕は頷いた。緩んだ吉川先生の顔がまた厳しくなる。
「そして、『あなたと同じ高校に行くと決まったとき』っていうのは、まさか勤務先が一緒になるとは、って意味だろうね」
「ってことは、『透明なあなた』って……」
僕らは一斉にショーコ先生、いや硝子先生を見た。
「なるほど。硝子は透明だものね」
ショーコ先生は吉川先生を見た。吉川先生は穴があったら入りたいとでも言うように、顔を赤く染めもじもじしている。
「吉川くん……」
吉川先生の背中をアカネがポンと叩いた。ヒマリも吉川先生の顔を見てコクンと頷く。吉川先生は深呼吸をすると、ショーコ先生の目をまっすぐ見た。
「ショーコ、本当は大学にいたときに言うべきだったんだけど、臆病な僕はどうしても言えなかったんだ。でも、同じ高校で勤務することが決まって、僕は腹を決めたんだ。絶対に君に告白するって。でもやっぱり怖くて、手紙なんていう方法に逃げちゃった。いつまで経っても君は屋上に来ないし、僕のことなんかどうでもいいと思ってるんじゃないかって、そう思ってた……だけど、もう逃げない。ショーコ、君のことがずっと好きだった。僕と付き合ってください」
吉川先生は勢いよく頭を下げた。側にいたアカネの喉がゴクリと鳴る。
「ごめんなさい。私、彼氏いるの」
申し訳なさそうにするショーコ先生の前で、吉川先生は崩れ落ちた。アカネが背中をさすってやる。
ヒマリは一つ大きなため息をついた。
「告白はお早めに、ってことですね」
そう言ってヒマリは吉川先生を冷めた目で見下ろした。いや、あれはアカネを見ているのだろうか? アカネの手が少しの間止まったような気がした。
「でも、マシロ先輩は屋上にはいなかったんですよね?」
僕の言葉で意識を取り戻したかのように、牧玄弥は僕の方を向き、自嘲しながら肯いた。
「お前はなんでもお見通しだな。屋上に行ってもマシロはいなかった。野球場の上も見たが、何も分からなかった。途方に暮れた俺は、ただ屋上から立ち去るしかなかったんだ」
牧玄弥の手は激しく震えていた。彼は震える手で膝を押さえつけた。
「もしかしたら、マシロは俺の計画に気づいていて、俺を恨んでいるんじゃないか? だから屋上来なかったんじゃないか? ……そう思うと、夜も眠れなかった。怖くて、マシロに声をかけることも出来なかった。そして、俺が怯えているうちに、マシロは自殺した。何故かは分からない。結局、俺はアイツに触れることを恐れて、アイツが何を考えてるのか、全く知ることが出来なかった。俺にとって、アイツは透明だったんだ」
牧玄弥の目は涙で充血していた。彼は涙を拭うとヒマリの方を向いた。
「ただ、一つだけ確かなことがある。アイツが死んだのは、俺のせいだ。ヒマリ、本当にすまなかった」
姉を愛し、そして殺した男を前に、ヒマリは必死に言葉を探しているようだった。ヒマリは膝の上の拳を強く握りしめた。憎悪と哀憐の狭間で彼女は葛藤していた。
「牧先輩。マシロ先輩のメッセージを見に行きませんか?」
僕がそう言うと、アカネは怪訝そうな顔をした。
「見に行くって、どこによ」
僕は指を鳴らして、人差し指を上に向けた。
「屋上にさ」
吉川先生が鍵を開け、僕たちは屋上に入った。僕は野球場がよく見える場所まで歩いていった。皆も僕についてきた。アカネは手すりにもたれかかりなが皮肉を言った。
「まったく、雲ひとつないわね」
僕はアカネの目線の先を指すす。
「ああ。だからよく見えるだろう? マシロ先輩のメッセージが」
ヒマリが「あっ」と呟いた。
「真紅の林檎」
アカネも理解したのだろう、目を少し細めながらマシロ先輩のメッセージを眺めた。
僕たちの目線の先で、真っ赤な丸い夕陽がメラメラと燃えていた。マシロ先輩が生前ひた隠しにしていた恋心が、彼女の真紅の林檎が、激しく燃えていた。
「きっとマシロ先輩は『屋上事件』の真相を知っていたんだと思います。でも、牧先輩を恨んではいなかった。ただ、悲しかった。ずっと愛し続けた幼馴染が、卑怯な手段で自分を手に入れようとしたことが、素直に『好きだ』と言ってくれなかったことが、あまりに悲しかったんだ」
牧玄弥はまさに落ちようとする夕陽を眺めながら、膝から崩れ落ちた。
「マシロ先輩はきっと、透明な体に宿る真紅の林檎を、いつかあなたに見せようと思っていた。あなたの前で、どこまでも赤く染まってやろうと思っていた。でも、あなたはあまりに黒かった。輪郭は見せても、その中身を見せようとしなかった。あなたは……透明過ぎたんだ」
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「それにしても、マシロ先輩はなんで手紙を2つに分けたのかしらね。それに、片方だけに本名を書いて。いったい何がしたかったのかしら?」
「ああ、そのことか。長い方の手紙を書いたのはマシロ先輩じゃないよ」
アカネとヒマリは目を丸くして僕の方を見た。そして二人で顔を見合わせた後、大声で叫んだ。
「はあ!?」
僕は思わずたじろぐ。声が大きいうえに息ぴったりだ。いつの間にこんなに仲良くなったのだろう?
「ほら、先月に一度だけマシロ先輩が部室に来たことがあっただろう? その時に、別の人が書いた長い方の手紙を読んで、それを受けてあの手紙を追加したんだ」
「いや、だって、『真っ白な私より』って書いてあったじゃないですか!」
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そう言って、僕は吉川先生を見た。いや、白秋先生言うべきか。吉川先生は扉の前で今にも逃げ出そうとしている。
「ヨ、ヨ、ヨ、ヨッシー!?」
アカネは吉川先生に詰め寄る。完全に逃げるタイミングを失ったようだ。僕は一つ咳払いをする。
「春の鳥な 鳴きそ鳴きそ あかあかと 外の面の草に 日の入る夕」
ハッとした表情を見せるヒマリとは対照的にアカネは眉を顰めている。
「北原白秋の歌さ」
まだ理解出来ないアカネのためにヒマリが現代語訳をする。
「『春の鳥よ、どうか鳴かないでくれ。家の外の草を夕陽が赤々と染めるこの夕暮れに』という意味です。自分と同じ名前の俳人の歌を手紙の冒頭に用いたんですね。さすが国語教師です」
「さすが」と言われ、吉川先生の顔が少し緩んだ。この人はむしろ感情が読み取りやす過ぎる。
「なるほど。それにヨッシーなら米に放課後に屋上を掃除するから、『いつでも待って』いることは可能よね」
僕は頷いた。緩んだ吉川先生の顔がまた厳しくなる。
「そして、『あなたと同じ高校に行くと決まったとき』っていうのは、まさか勤務先が一緒になるとは、って意味だろうね」
「ってことは、『透明なあなた』って……」
僕らは一斉にショーコ先生、いや硝子先生を見た。
「なるほど。硝子は透明だものね」
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「わかった、ヒメ。みんなにもキミのことをヒメと呼ぶと言っておくよ」
「みんなはいいのよ。明彦は私をそう呼んで」
「ぼくだけ?」
「そういうこと」
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