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二章_本編
三話
しおりを挟む「……ヴィン。」
「なんですか?兄上。」
そう言いながらニコニコとこちらを向くヴィンセント。
その手には野菜が刺さったフォークが俺の口の前にあり、グリグリと押し付けてくる。
勘弁してくれ、、これじゃ前世でよく見た”あーん”じゃないかッ!
懐いてくれるのは嬉しいが兄弟ってここまで距離が近いものなのか…? 俺はそういう関係が無かったのでイマイチ分からない。
そして、こんな事を考える中もずっと俺の口に押し付けてくるヴィンセントの手首を握り遠ざけた。
「あにうえ、どうして食べて下さらないのですか、、?」
すると、悲しいとでも言うかのように憂いを帯びた目で此方を見てくるヴィンセント。
そんなヴィンセントの頭と尻には耳と尻尾が見えたような気がした。
俺は可愛さと尊さに悶えながらも必死に言葉を紡ぐ。
「ヴィン…。ここには母上もいるのだぞ。それに君の席は私の隣ではなく、机を挟んで前にある席だろう。」
「う、、」
「それに、こういう事は婚約者としなさいと何度も言っている。お茶会の際、婚約者とあまり話していないようだが、何がそんなに嫌なのだ。」
そう言うと人差し指で頬をかきながら困り眉で説明するヴィンセント。
困った顔もイケメンだな、、
「嫌という訳ではないのです。メアリーは好きですよ? けれどその好きは友達としてなのです。それは向こうも分かっているみたいですし、、そう言う兄上は婚約者を作られないのですか?」
その言葉に俺はどう返事をしようか迷った。
原作では俺が両親に見限られた事により当主にならずに済んでいたのだ。
しかし今世はどうだ。このままいくと俺は当主になってしまうではないか。
母からも使用人からも流石にこれ以上は待てないと何度も釘を刺されている。
俺は流石と言うべきか顔は相当いいので婚約を申し込む話が多くあるようだが、、、。
なにせ、そういうのを作る気になれない。
学園で何度か告白されたけど何も思わない所か面倒くさいとさえ思っていた。
そんな事を考えながら俺はヴィンセントに対して話をそらそうとご飯を食べる手を進め、最後の一口を食べ、立ち上がってから返事をした。
「私の話はいいから、ヴィンは早く食べて昼のお茶会の準備をするように。」
「……うぅ、、答えてくださらないのですね、、、分かりました。ですが兄上とも一緒にお茶を飲みたいのでまた、しましょうね!」
そう言いながら立ち去る私の手を引くヴィンセント。その笑顔が眩しすぎて手で光を防ぐ仕草をする俺を不思議そうな顔で見つめるヴィンセントを置いて俺は部屋から去った。
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