3 / 29
一章_出会い
第二話
しおりを挟む「……ここは。」
「兄上っ! 良かった……このまま目が覚めないのかと、、。」
目が覚めると知らない天井に聞き覚えのない男の子の声。
(……ここは何処だ。なんで子供が近くに?)
混乱しながらも声のする方向へとゆっくり視線を向ける。目線の先にいたのは大人が二人に子供が一人。
ちょっと待て、ここは何処だ……?
さっきまで俺は部屋に居たはずだろ!
それにこの人達、誰!?
じっと三人を見つめる俺に何故か皆驚いた顔をし、急いで近づいて来る。
(頼むから近づいてこないでくれ!)
心の中で半泣きで叫ぶ俺に子供はギュッと手を握られる。知らない名前を何度も呼んでいる少年に本当に何がなんなのか分からない。
すると目の前の少年は先程の表情とは打って変わり表情を変えた。急に様子が変わるものだからなんなんだと。そう思ったのもつかの間。
「な、何故!……泣いておられるのですか? 私が貴方に言われた事を無視し近づいてしまったからですか?」
泣きそうな顔で見つめる彼。
後ろの二人も傷ついたような表情で俺を見ていた。
けれど俺にもなんで泣いているのか分からない。
言われるまで気づかなかった程だ。
俺は左右に首を振る。
すると安心した表情と共に「ならば何故……?」と聞いてくる子供。
正直、何と言っていいのか分からない。
だって俺、自分でもなんで泣いているか分からないし。
それに、この子が誰か知らない。君に俺が何を言ったのかすら覚えてない。
そんな顔をされても俺の頭にはどうすればいいのか分からないんだが……。
その後も心配そうに見つめる彼らにしばらく一人にして欲しいと言った後、彼らは名残惜しそうに部屋を去っていった。
「……さて。一体何が起こっているんだ。」
取り敢えず状況理解が重要だ。
周りを見るが高そうな服にふかふかのベッド。
そして物凄く高い天井をみて、確実に俺の部屋では無いことが分かった。
さて、何故俺はここに居るのか。
ここが何処なのか、理解しようにも余りにも非現実すぎて何も考えられなくなりそうだ。
それもその筈、さっきまで部屋にいた筈なのに気づけば知らない場所に居るだなんて誰が理解できるのだろう。
家には帰れるのだろうか。
そんな不安ばかりが頭に浮かぶ。
しかし喉が渇いた。
声を出そうにも長く眠っていたようで上手く声も出せない。周りを見渡すと机に置かれている水を発見。
「取り敢えず水を飲もう。 コップにしてはだいぶ歪な形をしているがこの世界のコップはそういうものなのだろうか。」
そう言いながら立ち上がりコップを手に持つ。
少し飲んだ後戻そうと机を見た瞬間、手を滑らしてしまい床に勢いよく落とした。
大きな音が部屋中に響く。
俺自身も別の意味でだが驚いている。
なんたってこのコップが置いてあった所の横に少し濡れた花びらがあったのだ。
(もしかしてこれって、花が入っていた水か…?)
なんならよく見ると水の中に少しの花びらと小さな虫が何匹か浮いている。
量を見るに飲み込んでしまった可能性は高い。
どうして飲んでいる間に気づかなかったのだと。
虫嫌いの俺は絶望し割れた花瓶の方に視線を移した時だった。
「あれ、この顔って……」
大きな音がしたからだろう。
ドアの向こうから心配するような声が聞こえる。
そして俺は割れたガラスに反射する自分を見て。
「あぁ~もしかして俺、悪役に転生しちゃった……?」
その事を理解した瞬間、焦るメイドを横目に俺は莫大な記憶を思い出し意識を失った。
応援ありがとうございます!
31
お気に入りに追加
2,735
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる