16 / 36
アイウス編
六本目『影から移る者』①
しおりを挟む
禿鷹の月住人『影から移る者』は、三人を敵として捉え、上空に浮上し、十分な距離を確保すると再び滑空し、その鉄球の様に硬い頭部を衝突させようとする。
「やらせんっ!!」
パジェットは赤黒い茨を伸ばし、岩を呑み込む波の様にクラヴィスを捕らえようとする。それでもクラヴィスはその速度を緩める事無く、突き進む。
すると、クラヴィスは螺旋状にその肉体を歪め、その姿を完全に消してしまう。
「何ッ!?」
「馬鹿ッ!! 影から離れろッ!!」
驚愕するパジェットに対し、セオドシアが警告を出した瞬間、パジェット自身の影からクラヴィスが飛び出す。
「ッ!?」
セオドシアの警告もあって、パジェットは無理矢理身体を反って衝突を回避する。しかし完全には避け切れなかった様で、額から血が噴き出す。
「くっ!? ……なるほど……『影から移る者』は伊達じゃ無いか……!!」
「影の中を転移する能力さ、一度潜ったら半径五十m以内のどの影からだって出てくるぞ!!」
「ふんっ、害鳥に相応しい意地汚い能力だ……」
そう言って、パジェットは額の出血を抑える様に右手を当てる。
するとクラヴィスはまた上空に浮上し、距離を確保する。
「二人共!! また来る……って、あれ?」
デクスターのそんな警告を他所に、クラヴィスはあらぬ方向へと滑空する。
一瞬、逃げるつもりなのかと考えたが、クラヴィスが次に取った行動は、今自身に起こっている闘争に勝利する為の一手だった。
「おいおい……おいおいおいおいおい……!?」
クラヴィスが滑空した方向は家、店、あらゆる建物の壁や柱であり、クラヴィスは次々に突っ込んで行っては、瓦礫の雨を作り出して行く。
「きゃあああっ!!」
「うわぁっ!!」
倒壊した建物は、逃げ遅れた人達に向かって降り注ぐ。
「害鳥風情がッ!!」
逃げ遅れ、倒壊した建物の下敷きなる所を、パジェットは茨で自身の方向へ引っ張り、寸前で助け出す。しかしそれだけではクラヴィスの破壊行為は終わらず、嵐の様に壊しては去り、壊しては去り……と繰り返す。
パジェットはホワイプスの群れを退治した時の様に、茨を蜘蛛の巣の様に使って修復していく。
「ぐっ……デクスター!! 奴を狙撃して止めるんだ!!」
「う、うん!! わかった!!」
防戦一方の態勢を変えるため、デクスターは弓を構えて弦を引き絞り、クラヴィスの破壊活動を止めようとする……その時だった、背後から殺意が船の上で感じた波風の様に胸を吹き抜ける。
「ッ!?」
振り返ると、先程落下して来た女性の遺体が、精神異常患者の様な尋常じゃない雰囲気を持ちながら、むくりと立ち上がる。
「まさか……今なのか!? もう一体!?」
見開かれた眼は、石炭の様な艶々とした黒を持ち、ざわざわと音を立てたかと思えば、毛髪が抜け落ち、皮膚が硬質化され、禿鷹の羽毛に生え変わっていく。骨格や筋肉に至るまで、その原型を殆ど失うと、自らの誕生を祝う様に、二体目のクラヴィスは背中に生える巨大な羽根を展開する。
「グォアァァァッ!!」
「うぐッ!? 来るなッ!!」
デクスターは咄嵯に矢を放つが、クラヴィスはその矢を軽々と羽根で叩き落とし、勢いそのままに、嘴で啄もうとする。
「うわぁぁぁぁっ!?」
クラヴィスの嘴がデクスターを喰らう……事はなく、セオドシアが自身の腕に喰らい付かせ、勢いを殺す。
「セオドシアッ!?」
「全く……子供は手間が掛かるね……!!」
そう言うと、彼女はアイスピックの様に細く削り出した骨を取り出し、クラヴィスの右眼に突き刺す。
「グギャアアアアアアーーッ!!」
苦痛の叫びを上げるクラヴィスは、セオドシアに突進し、彼女ごと螺旋状に畝りながら、影の中へと飛び込んでいく。
「そ、そんなっ!? セオドシアッ!?」
「やらせんっ!!」
パジェットは赤黒い茨を伸ばし、岩を呑み込む波の様にクラヴィスを捕らえようとする。それでもクラヴィスはその速度を緩める事無く、突き進む。
すると、クラヴィスは螺旋状にその肉体を歪め、その姿を完全に消してしまう。
「何ッ!?」
「馬鹿ッ!! 影から離れろッ!!」
驚愕するパジェットに対し、セオドシアが警告を出した瞬間、パジェット自身の影からクラヴィスが飛び出す。
「ッ!?」
セオドシアの警告もあって、パジェットは無理矢理身体を反って衝突を回避する。しかし完全には避け切れなかった様で、額から血が噴き出す。
「くっ!? ……なるほど……『影から移る者』は伊達じゃ無いか……!!」
「影の中を転移する能力さ、一度潜ったら半径五十m以内のどの影からだって出てくるぞ!!」
「ふんっ、害鳥に相応しい意地汚い能力だ……」
そう言って、パジェットは額の出血を抑える様に右手を当てる。
するとクラヴィスはまた上空に浮上し、距離を確保する。
「二人共!! また来る……って、あれ?」
デクスターのそんな警告を他所に、クラヴィスはあらぬ方向へと滑空する。
一瞬、逃げるつもりなのかと考えたが、クラヴィスが次に取った行動は、今自身に起こっている闘争に勝利する為の一手だった。
「おいおい……おいおいおいおいおい……!?」
クラヴィスが滑空した方向は家、店、あらゆる建物の壁や柱であり、クラヴィスは次々に突っ込んで行っては、瓦礫の雨を作り出して行く。
「きゃあああっ!!」
「うわぁっ!!」
倒壊した建物は、逃げ遅れた人達に向かって降り注ぐ。
「害鳥風情がッ!!」
逃げ遅れ、倒壊した建物の下敷きなる所を、パジェットは茨で自身の方向へ引っ張り、寸前で助け出す。しかしそれだけではクラヴィスの破壊行為は終わらず、嵐の様に壊しては去り、壊しては去り……と繰り返す。
パジェットはホワイプスの群れを退治した時の様に、茨を蜘蛛の巣の様に使って修復していく。
「ぐっ……デクスター!! 奴を狙撃して止めるんだ!!」
「う、うん!! わかった!!」
防戦一方の態勢を変えるため、デクスターは弓を構えて弦を引き絞り、クラヴィスの破壊活動を止めようとする……その時だった、背後から殺意が船の上で感じた波風の様に胸を吹き抜ける。
「ッ!?」
振り返ると、先程落下して来た女性の遺体が、精神異常患者の様な尋常じゃない雰囲気を持ちながら、むくりと立ち上がる。
「まさか……今なのか!? もう一体!?」
見開かれた眼は、石炭の様な艶々とした黒を持ち、ざわざわと音を立てたかと思えば、毛髪が抜け落ち、皮膚が硬質化され、禿鷹の羽毛に生え変わっていく。骨格や筋肉に至るまで、その原型を殆ど失うと、自らの誕生を祝う様に、二体目のクラヴィスは背中に生える巨大な羽根を展開する。
「グォアァァァッ!!」
「うぐッ!? 来るなッ!!」
デクスターは咄嵯に矢を放つが、クラヴィスはその矢を軽々と羽根で叩き落とし、勢いそのままに、嘴で啄もうとする。
「うわぁぁぁぁっ!?」
クラヴィスの嘴がデクスターを喰らう……事はなく、セオドシアが自身の腕に喰らい付かせ、勢いを殺す。
「セオドシアッ!?」
「全く……子供は手間が掛かるね……!!」
そう言うと、彼女はアイスピックの様に細く削り出した骨を取り出し、クラヴィスの右眼に突き刺す。
「グギャアアアアアアーーッ!!」
苦痛の叫びを上げるクラヴィスは、セオドシアに突進し、彼女ごと螺旋状に畝りながら、影の中へと飛び込んでいく。
「そ、そんなっ!? セオドシアッ!?」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説


ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始

【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる