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番外編
5.*
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「もーちょっと上、そう、そのままこっち」
「ああ!だめ、これ……んん~~っ」
「きもち?腰ガクガクしてる」
柊はまだ、夕里の上に覆い被さったままだ。指示の声に従い身体を前に出すと、乳首が濡れたものに包まれる。唾液でぬるぬるの舌。感覚はいつも以上に鋭敏だった。
なぜなら……柊の視界は真っ暗だ。かつてヘッドマッサージ店で購入したアイマスクは、ただのリラックスアイテムだったのに……
夕里に自分で身体を差し出して、舐めてもらっているみたい。きっと乳首はてらてらと濡れているだろう。視界が覆われ、上下が変わるだけで倒錯的な感覚に陥っていた。
カチッと聞き覚えのある音が耳に届く。蓋の開閉音だ。腰が震えて、ひくっと孔が疼く。
柊の下着を取り払った夕里は、期待したとおりにローションで濡れた指を尻の狭間に添えた。焦らすこともなく、つぷと指が入ってくる。
「あ、あっ。~~~っゆりく、ん……」
「柔らか……昨日したのに、今日も準備してきたんですか?」
「だってぇ……っ」
「さっきので期待したんだ?イケなかったですもんね。あ~、ちんちん苦しそう……」
「……んっ、あ……もうイキそ、」
そうなのだ。謝らないと、話し合わないとと考えつつも、一度火をつけられた身体は期待を押し隠せなかった。好きにしてと言いながら、夕里に触れてほしかった。
指が中に入ってくる。昨日彼に愛された身体は、洗浄しただけで簡単に蕩けていた。柔らかい隘路が、大好きな人を締めつける。
夕里のもう片方の手は柊の陰茎を包んだ。もうだめだ。三箇所の性感帯を同時に責められるなんて。
もう、イくこと以外考えられない。手に擦り付けるように、下手くそに腰を振る。
「へこへこしてかわいー……でも駄目。お仕置き、して欲しいんですよね?」
「ち、ちがっ……」
いつもは優しく導いてくれる夕里が、いじわるだ。お仕置きなんて言わなきゃよかった~……っ!
また寸止めされて、発散できない熱がぐるぐると体内を駆け巡っている。甘くて苦しい。苦しくて甘い。
夕里はいま、どんな表情をしているだろうか。見えなくて不安だ。柊はせめてもと身体を近づけ、首元に顔で擦り寄った。
「う~~~っ。ゆりくん……ぃきたい……」
「じゃあ自分で挿れてください。そしたらもう止めません。……好きなだけイっていいですよ」
「んあっっ!」
最後の一言は耳に直接吹き込まれた。唇が触れて、耳たぶを挟まれる。まだ許可を貰えていないのに、軽く気を遣ってしまった。
ひくひくっと指を締め付けてしまったから、気づかれているはずだ。余韻に痺れる身体を慌てて起こし、自分の下肢を見る。……見えなかった。でも多分、射精してないからセーフかな?
「かわい~~~……」
夕里が呟く。柊はいつの間にか、夕里の許可がないと達してはいけないと思い込んでいる。
欲しくて、もう必死だった。手探りで夕里のペニスを取り出し、硬くなっていることにホッとする。触ってないのに……若いな。
腰を上げて、勘で位置を合わせ、自分の後孔に押し当てた。
「あ゙~~~、たまらね~……」
これがとても難しい。自分の方はローションで濡れ、夕里の屹立もおそらく先走りで濡れている。呻く声は聞こえるものの、何度腰を落としてもツルッと滑って外れてしまうのだ。
「ゆ、ゆりくん……」
「やべ、ゴム忘れてた!」
言われて、確かにそんなものもあったな、という感覚だった。夕里はいつも周到で、気づけばコンドームを付けている。
ガサゴソとベッド脇の棚を漁る音が聞こえるなか、柊はふと思った。生って気持ちいいのかなぁ……と。
「ね……いい。そのままでいいから……」
「は?駄目ですよ。分かってますか?後処理が簡単とか理由は色々ありますけど、一番は柊さんの身体のためなんです。そりゃ、いつかは……って思ってるけど。まだセックスも慣れないうちはだーめ」
「ご、ごめん……」
ぎゅっと鼻を摘まれる。怒った感じがしたのは序盤だけで、あとは柊に優しく諭すような言い方だった。
いくら知識がなかったからといって、自分はこういった判断を夕里に任せっきりだったことに気付く。どんな性行為にもリスクはつきものだ。特に男同士の場合は本来性器ではないところを使うのだから、様々な面に気を遣わなければいけないだろう。
浮かれていた気分がぺしゃんこになって、反省する。けれど同時に、胸がほわりと温かくなった。
まただ。また夕里は、柊の気づかないところで色々なことを考えてくれている。柊自身より柊のことを気遣ってくれるところ。彼の優しすぎるところが、柊はどうしようもなく好きだ。
「ゆりくん……顔、見たい」
「あー……実は俺ももう限界でした」
アイマスクが外されて眩しさに目を細めながらも、やっと視線を交わす。部屋の照明が煌々と明るいままだったことに気づき、カッと身体が熱くなる。全部、余すことなく、見られていたに違いない。
「ぁっ」と小さく声を上げたときには、柊の陰茎にもコンドームが被せられていた。
夕里のは黒いのに自分のは透明で恥ずかしい。いや、色がついていても見られるのが恥ずかしいことに変わりはないけど……夕里は柊のすみずみまで見たがるから困る。
コンドームは彼がいつの間にか柊の分まで買ってきてくれていて、どうして色が違うのか問うと、サイズが……とごにょごにょ口ごもっていた。サイズで色が違うなんて、そんな残酷なことがあるのだろうか。
どうして自分に着けられるのか、初回は分からなかったが答えはすぐに出た。
「これで、汚すとか気にせずにイっていいですからね。はい……じゃあ続き、しましょ?」
「ああ!だめ、これ……んん~~っ」
「きもち?腰ガクガクしてる」
柊はまだ、夕里の上に覆い被さったままだ。指示の声に従い身体を前に出すと、乳首が濡れたものに包まれる。唾液でぬるぬるの舌。感覚はいつも以上に鋭敏だった。
なぜなら……柊の視界は真っ暗だ。かつてヘッドマッサージ店で購入したアイマスクは、ただのリラックスアイテムだったのに……
夕里に自分で身体を差し出して、舐めてもらっているみたい。きっと乳首はてらてらと濡れているだろう。視界が覆われ、上下が変わるだけで倒錯的な感覚に陥っていた。
カチッと聞き覚えのある音が耳に届く。蓋の開閉音だ。腰が震えて、ひくっと孔が疼く。
柊の下着を取り払った夕里は、期待したとおりにローションで濡れた指を尻の狭間に添えた。焦らすこともなく、つぷと指が入ってくる。
「あ、あっ。~~~っゆりく、ん……」
「柔らか……昨日したのに、今日も準備してきたんですか?」
「だってぇ……っ」
「さっきので期待したんだ?イケなかったですもんね。あ~、ちんちん苦しそう……」
「……んっ、あ……もうイキそ、」
そうなのだ。謝らないと、話し合わないとと考えつつも、一度火をつけられた身体は期待を押し隠せなかった。好きにしてと言いながら、夕里に触れてほしかった。
指が中に入ってくる。昨日彼に愛された身体は、洗浄しただけで簡単に蕩けていた。柔らかい隘路が、大好きな人を締めつける。
夕里のもう片方の手は柊の陰茎を包んだ。もうだめだ。三箇所の性感帯を同時に責められるなんて。
もう、イくこと以外考えられない。手に擦り付けるように、下手くそに腰を振る。
「へこへこしてかわいー……でも駄目。お仕置き、して欲しいんですよね?」
「ち、ちがっ……」
いつもは優しく導いてくれる夕里が、いじわるだ。お仕置きなんて言わなきゃよかった~……っ!
また寸止めされて、発散できない熱がぐるぐると体内を駆け巡っている。甘くて苦しい。苦しくて甘い。
夕里はいま、どんな表情をしているだろうか。見えなくて不安だ。柊はせめてもと身体を近づけ、首元に顔で擦り寄った。
「う~~~っ。ゆりくん……ぃきたい……」
「じゃあ自分で挿れてください。そしたらもう止めません。……好きなだけイっていいですよ」
「んあっっ!」
最後の一言は耳に直接吹き込まれた。唇が触れて、耳たぶを挟まれる。まだ許可を貰えていないのに、軽く気を遣ってしまった。
ひくひくっと指を締め付けてしまったから、気づかれているはずだ。余韻に痺れる身体を慌てて起こし、自分の下肢を見る。……見えなかった。でも多分、射精してないからセーフかな?
「かわい~~~……」
夕里が呟く。柊はいつの間にか、夕里の許可がないと達してはいけないと思い込んでいる。
欲しくて、もう必死だった。手探りで夕里のペニスを取り出し、硬くなっていることにホッとする。触ってないのに……若いな。
腰を上げて、勘で位置を合わせ、自分の後孔に押し当てた。
「あ゙~~~、たまらね~……」
これがとても難しい。自分の方はローションで濡れ、夕里の屹立もおそらく先走りで濡れている。呻く声は聞こえるものの、何度腰を落としてもツルッと滑って外れてしまうのだ。
「ゆ、ゆりくん……」
「やべ、ゴム忘れてた!」
言われて、確かにそんなものもあったな、という感覚だった。夕里はいつも周到で、気づけばコンドームを付けている。
ガサゴソとベッド脇の棚を漁る音が聞こえるなか、柊はふと思った。生って気持ちいいのかなぁ……と。
「ね……いい。そのままでいいから……」
「は?駄目ですよ。分かってますか?後処理が簡単とか理由は色々ありますけど、一番は柊さんの身体のためなんです。そりゃ、いつかは……って思ってるけど。まだセックスも慣れないうちはだーめ」
「ご、ごめん……」
ぎゅっと鼻を摘まれる。怒った感じがしたのは序盤だけで、あとは柊に優しく諭すような言い方だった。
いくら知識がなかったからといって、自分はこういった判断を夕里に任せっきりだったことに気付く。どんな性行為にもリスクはつきものだ。特に男同士の場合は本来性器ではないところを使うのだから、様々な面に気を遣わなければいけないだろう。
浮かれていた気分がぺしゃんこになって、反省する。けれど同時に、胸がほわりと温かくなった。
まただ。また夕里は、柊の気づかないところで色々なことを考えてくれている。柊自身より柊のことを気遣ってくれるところ。彼の優しすぎるところが、柊はどうしようもなく好きだ。
「ゆりくん……顔、見たい」
「あー……実は俺ももう限界でした」
アイマスクが外されて眩しさに目を細めながらも、やっと視線を交わす。部屋の照明が煌々と明るいままだったことに気づき、カッと身体が熱くなる。全部、余すことなく、見られていたに違いない。
「ぁっ」と小さく声を上げたときには、柊の陰茎にもコンドームが被せられていた。
夕里のは黒いのに自分のは透明で恥ずかしい。いや、色がついていても見られるのが恥ずかしいことに変わりはないけど……夕里は柊のすみずみまで見たがるから困る。
コンドームは彼がいつの間にか柊の分まで買ってきてくれていて、どうして色が違うのか問うと、サイズが……とごにょごにょ口ごもっていた。サイズで色が違うなんて、そんな残酷なことがあるのだろうか。
どうして自分に着けられるのか、初回は分からなかったが答えはすぐに出た。
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