21 / 56
21.*
しおりを挟む
「ふぅ~っ……きもち~」
いい香りと湯の温もりに全身が包まれて、思わず感嘆の声が出る。スマホを持ってこればよかったと一瞬後悔したけど、一日中酷使した目を休める時間も必要だと思い直した。
入浴剤はもう溶け切っていたものの、生み出された泡はシュワシュワと肌に心地いい刺激を運んでくる。目を閉じた柊が考えるのは、やっぱり夕里のことだった。
夕里と話すことはできたけど、あの日の出来事はまだうまく消化できていない。夕里の行動についてもそうだし、自分の反応も……自分じゃないみたいで戸惑った。
お洒落な正方形のソファ。後ろから抱き抱えるようにして座った夕里が背もたれ代わりになって、あったかくて安心した。
それで、なぜか頸を舐められて……
「っひゃ……」
湯と空気の境目で、首に刺激を感じてしまう。柊の手は無意識に胸元へ向かっていく。夕里の手は熱かった。その指先が、乳首をスリスリと撫でてきて……
「……ん」
自分で触っても、あの時ほどの刺激は感じない。しかし触っているうちにそこは尖り、小さいながらも触ってと言わんばかりに存在を主張した。
彼の手は肉感のない柊の身体を這いまわる。どこに触れられても気持ちがよくて、びくんびくんと身体を跳ねさせた。
自分の手は記憶よりも欲望に忠実らしい。ゆるく勃ちあがった陰茎を、湯の中で掴む。
「あぁっ……んん……」
あのときは噛み付くようなキスが降ってきた。ファーストキスというには激しく、夕里の舌は柊の口の中を縦横無尽に動き回る。必死に息継ぎするたびに、鼻から抜けた甘い声が漏れた。
口が寂しい。そんな感情を誤魔化すように、自分の欲望を扱く。湯のおかげで手の動きが滑らかだ。
思い通りにならない手に翻弄されたときは、自分でするよりも遥かに強い快感を得られることを知った。
「くぅッ……ゆり、くんっ……!」
ぞくぞくと快感が全身へと広がり、絶頂の壁を越える。最後に親指で先端を強く擦ると、ピュッと精液が飛び出してくるのを感じた。
あのとき、夕里はどんな顔をしていただろうか。黒い目に情欲を滾らせて、柊を見ていなかったっけ?従順な大型犬が突然牙を剥き、狼になったように……
「あー……」
いくら驚いたとはいえ、あのまま泣いて帰るなんて最悪だ。謝って謝られて、一応赦しは得られたけれど。
最後に会ったとき、夕里はなにを話そうとしていたのだろうか。
「…………」
冷静になって湯から上がり、栓を抜く。鏡に映った顔は茹だったように赤い。
(ていうか、うあああゆりくんで抜いてしまった……!)
男同士がどこを使って性行為に及ぶのかは知っていた。役割分担というか、どっちがどっちなんだろう。身体を洗いながら、石鹸まみれの指を尻の狭間に持っていってみる。
(こんなところ……!)
滑りがあるお陰で、少し力を入れれば指くらい入ってしまいそうだった。
慌てて手を離し、シャワーで洗い流す。ここは出す場所で、入れる場所なんかじゃない。性器とは違うから気持ちよさもないだろうし、受け入れるには相当な覚悟が必要だ。
「え……めちゃくちゃ喘いでる」
風呂上がり。無料のアダルトサイトなんて久しぶりに見た。未知に対する恐れと、好奇心。柊は湯当たりしたような感覚で行動していた。
おそるおそるゲイの方を選択し、リアルすぎるのは怖くて外国人の動画を再生する。すると、いきなりずっぽり嵌めて喘ぐガタイのいい男たちが画面上で動き出して唖然としてしまった。
もちろんこういうのは大袈裟に演技していることを承知の上だ。でもなんというか、思ったよりもちゃんとセックスだった。
そこに、あれを、突っ込むのか……
フィニッシュまで見る勇気はなく動画の再生は止めたものの、いろいろと調べてしまう。洗浄、洗浄かぁ……
その日は夜更かしになってしまったことは言うまでもない。
いい香りと湯の温もりに全身が包まれて、思わず感嘆の声が出る。スマホを持ってこればよかったと一瞬後悔したけど、一日中酷使した目を休める時間も必要だと思い直した。
入浴剤はもう溶け切っていたものの、生み出された泡はシュワシュワと肌に心地いい刺激を運んでくる。目を閉じた柊が考えるのは、やっぱり夕里のことだった。
夕里と話すことはできたけど、あの日の出来事はまだうまく消化できていない。夕里の行動についてもそうだし、自分の反応も……自分じゃないみたいで戸惑った。
お洒落な正方形のソファ。後ろから抱き抱えるようにして座った夕里が背もたれ代わりになって、あったかくて安心した。
それで、なぜか頸を舐められて……
「っひゃ……」
湯と空気の境目で、首に刺激を感じてしまう。柊の手は無意識に胸元へ向かっていく。夕里の手は熱かった。その指先が、乳首をスリスリと撫でてきて……
「……ん」
自分で触っても、あの時ほどの刺激は感じない。しかし触っているうちにそこは尖り、小さいながらも触ってと言わんばかりに存在を主張した。
彼の手は肉感のない柊の身体を這いまわる。どこに触れられても気持ちがよくて、びくんびくんと身体を跳ねさせた。
自分の手は記憶よりも欲望に忠実らしい。ゆるく勃ちあがった陰茎を、湯の中で掴む。
「あぁっ……んん……」
あのときは噛み付くようなキスが降ってきた。ファーストキスというには激しく、夕里の舌は柊の口の中を縦横無尽に動き回る。必死に息継ぎするたびに、鼻から抜けた甘い声が漏れた。
口が寂しい。そんな感情を誤魔化すように、自分の欲望を扱く。湯のおかげで手の動きが滑らかだ。
思い通りにならない手に翻弄されたときは、自分でするよりも遥かに強い快感を得られることを知った。
「くぅッ……ゆり、くんっ……!」
ぞくぞくと快感が全身へと広がり、絶頂の壁を越える。最後に親指で先端を強く擦ると、ピュッと精液が飛び出してくるのを感じた。
あのとき、夕里はどんな顔をしていただろうか。黒い目に情欲を滾らせて、柊を見ていなかったっけ?従順な大型犬が突然牙を剥き、狼になったように……
「あー……」
いくら驚いたとはいえ、あのまま泣いて帰るなんて最悪だ。謝って謝られて、一応赦しは得られたけれど。
最後に会ったとき、夕里はなにを話そうとしていたのだろうか。
「…………」
冷静になって湯から上がり、栓を抜く。鏡に映った顔は茹だったように赤い。
(ていうか、うあああゆりくんで抜いてしまった……!)
男同士がどこを使って性行為に及ぶのかは知っていた。役割分担というか、どっちがどっちなんだろう。身体を洗いながら、石鹸まみれの指を尻の狭間に持っていってみる。
(こんなところ……!)
滑りがあるお陰で、少し力を入れれば指くらい入ってしまいそうだった。
慌てて手を離し、シャワーで洗い流す。ここは出す場所で、入れる場所なんかじゃない。性器とは違うから気持ちよさもないだろうし、受け入れるには相当な覚悟が必要だ。
「え……めちゃくちゃ喘いでる」
風呂上がり。無料のアダルトサイトなんて久しぶりに見た。未知に対する恐れと、好奇心。柊は湯当たりしたような感覚で行動していた。
おそるおそるゲイの方を選択し、リアルすぎるのは怖くて外国人の動画を再生する。すると、いきなりずっぽり嵌めて喘ぐガタイのいい男たちが画面上で動き出して唖然としてしまった。
もちろんこういうのは大袈裟に演技していることを承知の上だ。でもなんというか、思ったよりもちゃんとセックスだった。
そこに、あれを、突っ込むのか……
フィニッシュまで見る勇気はなく動画の再生は止めたものの、いろいろと調べてしまう。洗浄、洗浄かぁ……
その日は夜更かしになってしまったことは言うまでもない。
243
お気に入りに追加
462
あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。


久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?


性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる