敏感リーマンは大型ワンコをうちの子にしたい

おもちDX

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「ふぅ~っ……きもち~」

 いい香りと湯の温もりに全身が包まれて、思わず感嘆の声が出る。スマホを持ってこればよかったと一瞬後悔したけど、一日中酷使した目を休める時間も必要だと思い直した。
 入浴剤はもう溶け切っていたものの、生み出された泡はシュワシュワと肌に心地いい刺激を運んでくる。目を閉じた柊が考えるのは、やっぱり夕里のことだった。


 夕里と話すことはできたけど、あの日の出来事はまだうまく消化できていない。夕里の行動についてもそうだし、自分の反応も……自分じゃないみたいで戸惑った。
 お洒落な正方形のソファ。後ろから抱き抱えるようにして座った夕里が背もたれ代わりになって、あったかくて安心した。
 それで、なぜか頸を舐められて……

「っひゃ……」

 湯と空気の境目で、首に刺激を感じてしまう。柊の手は無意識に胸元へ向かっていく。夕里の手は熱かった。その指先が、乳首をスリスリと撫でてきて……

「……ん」

 自分で触っても、あの時ほどの刺激は感じない。しかし触っているうちにそこは尖り、小さいながらも触ってと言わんばかりに存在を主張した。
 彼の手は肉感のない柊の身体を這いまわる。どこに触れられても気持ちがよくて、びくんびくんと身体を跳ねさせた。
 
 自分の手は記憶よりも欲望に忠実らしい。ゆるく勃ちあがった陰茎を、湯の中で掴む。

「あぁっ……んん……」

 あのときは噛み付くようなキスが降ってきた。ファーストキスというには激しく、夕里の舌は柊の口の中を縦横無尽に動き回る。必死に息継ぎするたびに、鼻から抜けた甘い声が漏れた。
 
 口が寂しい。そんな感情を誤魔化すように、自分の欲望を扱く。湯のおかげで手の動きが滑らかだ。
 思い通りにならない手に翻弄されたときは、自分でするよりも遥かに強い快感を得られることを知った。

「くぅッ……ゆり、くんっ……!」

 ぞくぞくと快感が全身へと広がり、絶頂の壁を越える。最後に親指で先端を強く擦ると、ピュッと精液が飛び出してくるのを感じた。
 あのとき、夕里はどんな顔をしていただろうか。黒い目に情欲を滾らせて、柊を見ていなかったっけ?従順な大型犬が突然牙を剥き、狼になったように……

「あー……」

 いくら驚いたとはいえ、あのまま泣いて帰るなんて最悪だ。謝って謝られて、一応赦しは得られたけれど。
 最後に会ったとき、夕里はなにを話そうとしていたのだろうか。

「…………」
 
 冷静になって湯から上がり、栓を抜く。鏡に映った顔は茹だったように赤い。

(ていうか、うあああゆりくんで抜いてしまった……!)
 
 男同士がどこを使って性行為に及ぶのかは知っていた。役割分担というか、どっちがどっちなんだろう。身体を洗いながら、石鹸まみれの指を尻の狭間に持っていってみる。

(こんなところ……!)

 滑りがあるお陰で、少し力を入れれば指くらい入ってしまいそうだった。
 慌てて手を離し、シャワーで洗い流す。ここは出す場所で、入れる場所なんかじゃない。性器とは違うから気持ちよさもないだろうし、受け入れるには相当な覚悟が必要だ。

「え……めちゃくちゃ喘いでる」

 風呂上がり。無料のアダルトサイトなんて久しぶりに見た。未知に対する恐れと、好奇心。柊は湯当たりしたような感覚で行動していた。
 おそるおそるゲイの方を選択し、リアルすぎるのは怖くて外国人の動画を再生する。すると、いきなりずっぽり嵌めて喘ぐガタイのいい男たちが画面上で動き出して唖然としてしまった。
 
 もちろんこういうのは大袈裟に演技していることを承知の上だ。でもなんというか、思ったよりもちゃんとセックスだった。
 そこに、あれを、突っ込むのか……
 
 フィニッシュまで見る勇気はなく動画の再生は止めたものの、いろいろと調べてしまう。洗浄、洗浄かぁ……

 その日は夜更かしになってしまったことは言うまでもない。
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