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ずっと一緒にいたい。この男に、どうしてここまで惹かれるのかわからなかった。フェロモンが合うのかもしれない。ただの一目惚れだとしても、リュヌはどこか運命的なものを感じていた。
彼ならリュヌを幸せにしてくれそうだ。外見だけじゃなく、内面も愛してくれそう。自分が一国民であれば叶ったかもしれないのに――胸に浮かぶのは、叶わないと分かっているからこそ幸せな想像だった。
熱い息を交わす。与えられる快感を全身でナージに返すと、倍になって返ってくる。それを繰り返す。リュヌはナージとひたすらに快感を追い、しばし言葉を忘れた。
胸にはいっぱい想いが満ちていたし、身体の中もナージに満たされている。口に出さずとも、伝わってしまえばいい……リュヌはひとりの男として、ナージに恋をしてしまったのだと。
リュヌの望みを、仕方ないなぁと叶えてくれる人。リュヌが王子だと分かっても、態度を変えなかった人。あぁ、好きだ。
「俺も好きだ。リュヌ、君が愛おしい……!」
都合のいい幻聴が耳に届く。人生で一番しあわせで、現実味のない瞬間。
「……ぁっ。も、いく……!~~~~~っ!!!」
「く…………ッ」
目の前に星が散ったようにチカチカと光が飛び、身体の中で積もり積もった快感が爆発した。感じたことのないほどの悦楽は宙に浮くような感覚で、思わず両腕でナージにしがみつく。
全身が震え、雄膣もびくびくと痙攣している。子種を搾り取るような動きに抗わず、ナージは奥に精液を叩きつけた。
時間をかけて息を整える。ズルンとペニスを抜いたナージが、リュヌをぎゅうぎゅう抱きしめる。発情の終わった人はみなあっさりと離れていくというが、その抱擁は情熱的だ。こんな種族もいるのだなぁと、リュヌは彼の腰へ手を滑らせた。
そういえば、どんな尻尾してるんだろ……??
「えっ。あれっ……ない!!!」
「は?おいおい、くすぐったいぞ」
この国に尾のない獣人はいないのだ。いったい、どういうこと???
「尻尾が……ない!」
ナージはちら、と脇に視線をやり、サイドテーブルに置かれた剣を示す。
「あっはっは!まだ気づいてなかったのか?俺は人間だ。お前の言う、なよっとした弱い、な」
「えええええ~~~~~!?!?」
◆
謁見の間に呼び出されて、リュヌは艶のあるため息をついた。
それだけで部屋がざわつく。近衛や王の側近たちが顔を赤くしてリュヌを見つめてくる。最近はこんなことばかりだし、気にする余裕もない。
――ひと晩の家出をして以来、リュヌの意識は遥か彼方に飛んでいる。
「リュヌ、サンディの王太子はお前がお手付きでも構わないと寛大な心で受け入れてくれた。まったく……運の良いやつだ」
「…………」
なにも嬉しくない。よりにもよって……人間の王子なんて。
人間への偏見はなくなったものの、リュヌが求める人はただひとり。どんな人種だろうと、あの人以外は全員どうでもいいのだ。
リュヌはナージに抱かれたあと、衝撃で放心している間に身体を洗われ、手配してくれた馬車に乗せられた。(信じられな……いや信じるけど。……え、ほんとに?)と自問自答しているあいだに、気づけば王宮に帰っていた。なんとも手際の良いことだ。
王族に近い近衛と使用人のみで密かに捜索されていたリュヌは正面から家に戻り、素直に謝った。もちろんそれだけでは終わらず、鼻の利く獣人によって男に抱かれたことまでばっちりバレて大目玉をくらった。
リュヌは知らなかったが、処女であるかどうかは男でもわかるものらしい。人間は特に、そういったことに敏いようだ。
でもそれだけ。誰に何と言われようとも、自分の行動を後悔したり反省する気にはなれない。
彼ならリュヌを幸せにしてくれそうだ。外見だけじゃなく、内面も愛してくれそう。自分が一国民であれば叶ったかもしれないのに――胸に浮かぶのは、叶わないと分かっているからこそ幸せな想像だった。
熱い息を交わす。与えられる快感を全身でナージに返すと、倍になって返ってくる。それを繰り返す。リュヌはナージとひたすらに快感を追い、しばし言葉を忘れた。
胸にはいっぱい想いが満ちていたし、身体の中もナージに満たされている。口に出さずとも、伝わってしまえばいい……リュヌはひとりの男として、ナージに恋をしてしまったのだと。
リュヌの望みを、仕方ないなぁと叶えてくれる人。リュヌが王子だと分かっても、態度を変えなかった人。あぁ、好きだ。
「俺も好きだ。リュヌ、君が愛おしい……!」
都合のいい幻聴が耳に届く。人生で一番しあわせで、現実味のない瞬間。
「……ぁっ。も、いく……!~~~~~っ!!!」
「く…………ッ」
目の前に星が散ったようにチカチカと光が飛び、身体の中で積もり積もった快感が爆発した。感じたことのないほどの悦楽は宙に浮くような感覚で、思わず両腕でナージにしがみつく。
全身が震え、雄膣もびくびくと痙攣している。子種を搾り取るような動きに抗わず、ナージは奥に精液を叩きつけた。
時間をかけて息を整える。ズルンとペニスを抜いたナージが、リュヌをぎゅうぎゅう抱きしめる。発情の終わった人はみなあっさりと離れていくというが、その抱擁は情熱的だ。こんな種族もいるのだなぁと、リュヌは彼の腰へ手を滑らせた。
そういえば、どんな尻尾してるんだろ……??
「えっ。あれっ……ない!!!」
「は?おいおい、くすぐったいぞ」
この国に尾のない獣人はいないのだ。いったい、どういうこと???
「尻尾が……ない!」
ナージはちら、と脇に視線をやり、サイドテーブルに置かれた剣を示す。
「あっはっは!まだ気づいてなかったのか?俺は人間だ。お前の言う、なよっとした弱い、な」
「えええええ~~~~~!?!?」
◆
謁見の間に呼び出されて、リュヌは艶のあるため息をついた。
それだけで部屋がざわつく。近衛や王の側近たちが顔を赤くしてリュヌを見つめてくる。最近はこんなことばかりだし、気にする余裕もない。
――ひと晩の家出をして以来、リュヌの意識は遥か彼方に飛んでいる。
「リュヌ、サンディの王太子はお前がお手付きでも構わないと寛大な心で受け入れてくれた。まったく……運の良いやつだ」
「…………」
なにも嬉しくない。よりにもよって……人間の王子なんて。
人間への偏見はなくなったものの、リュヌが求める人はただひとり。どんな人種だろうと、あの人以外は全員どうでもいいのだ。
リュヌはナージに抱かれたあと、衝撃で放心している間に身体を洗われ、手配してくれた馬車に乗せられた。(信じられな……いや信じるけど。……え、ほんとに?)と自問自答しているあいだに、気づけば王宮に帰っていた。なんとも手際の良いことだ。
王族に近い近衛と使用人のみで密かに捜索されていたリュヌは正面から家に戻り、素直に謝った。もちろんそれだけでは終わらず、鼻の利く獣人によって男に抱かれたことまでばっちりバレて大目玉をくらった。
リュヌは知らなかったが、処女であるかどうかは男でもわかるものらしい。人間は特に、そういったことに敏いようだ。
でもそれだけ。誰に何と言われようとも、自分の行動を後悔したり反省する気にはなれない。
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