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「たかやくん、あの風船ほしくない?」
「あ、かわいい……でも子ども向けだろ? てかアトラクション乗るのに邪魔だからいい」
二人は今、某夢のテーマパークに来ている。鷹哉が冗談半分で行きたいと主張して、連れてきてもらったのだ。善はかなり努力して休みを手に入れたらしい。
いまや入場のチケット代は一万円近く、パーク内で食事をするにもグッズを買うにも、かなりの浪費を覚悟しなければならない場所である。
付き合いたてで行く場所ではないと聞いたこともある。アトラクション待ちの行列で喧嘩するカップルが続出……なんて噂のある場所だが、善の事前サーチと下準備によって喧嘩になるようなこともなく楽しめている。
そもそも、善が相手だと喧嘩になりようがないのだ。鷹哉の言うことに関して善はイエスマンなのだから。――あのこと以外。
「そろそろご飯に行こうか。キャラクターに会える店を予約してみたんだ」
「えっ、まじ? そこ憧れだったんだけど」
思わず目を輝かせると、善はにこにこと嬉しそうにこちらを見つめた。いつも無表情とはいえ、かなりはしゃいでるのが伝わってしまったからだろう。
何を隠そう、鷹哉はこういう場所が大好きだった。キャラに会えるなら会いたいし、パーク限定のグッズも欲しい。予約のできるレストランはパークの中でもお高めだと知っている。
学費には困ってないが、バイト代を趣味に浪費できる金額にも限界がある。友人と来たことはあるものの、そのときは頭につけるカチューシャさえ我慢したのだ。
でもいまは、頭に好きなキャラクターの耳をカチューシャでつけ、飾りのついたポップなサングラスをかけ、時期限定のポップコーンケースを首から下げている。
お得意の開き直りを発揮して、チケット代が浮いた分を自由に使っていた。
ちなみに耳とサングラスは善にもつけさせた。おかげで中身はどれだけ真面目な人間でも、全力でパークを楽しんでいる人にしか見えない。こういうのは一人でやっても楽しくないからな。
アトラクションも料金さえ支払えば予約できるものが色々あるらしい。パレードだっていい場所を予約してくれていた。つまり善は鷹哉のために金に物言わせ、ほとんど並ばずノーストレスで遊ばせてくれている。
「あれぇ……? 確かこっちの方向なんだけどなぁ」
「善、地図見せて。あ~ここか! 道が一本違うって。こっち、ついてきて」
「すごい! もう道覚えたの? たかやくんありがとうっ」
サングラスをずらしながら小さなスマホの画面を一緒に覗きこみ、マップを確認する。大きなカチューシャがコツンとぶつかった。
確かに初めてなら迷うかもしれないが、善はそれ以上に方向音痴だ。
しっかりしているようでおっちょこちょい。鷹哉も自分が役に立てる場面があって少しホッとしたし、だいぶ歳上なのにちょっと可愛いな、なんて……いや、思ってないぞ?
浮かれた格好をした成人男性ふたりは、秋晴れのテーマパーク内を楽しそうに進んでいく。
今日はなんと、お泊りつきのデートである。都内だから日帰りできないこともないけど、「せっかくだから」と善がパーク内のホテルを予約してくれたのだ。
どうせ別々に寝るんだろうなと思いつつ、せっかくなら誘惑してやろうと鷹哉は考えている。
思い切って購入したきわどい下着はボストンバッグに入れてホテルに預けてあった。あとは酒でも呑ませてみようと企んでいたり。
(我慢してるなら……その壁をぶち壊すだけだろ?)
暗い場所で繋がれる手や、あのキスの情熱を鷹哉は忘れていない。
自分の気持ちについては保留中だ。意地の張り合いになっている気がしないでもないが、こと恋愛に関して鷹哉は超がつく初心者だった。
「あ、かわいい……でも子ども向けだろ? てかアトラクション乗るのに邪魔だからいい」
二人は今、某夢のテーマパークに来ている。鷹哉が冗談半分で行きたいと主張して、連れてきてもらったのだ。善はかなり努力して休みを手に入れたらしい。
いまや入場のチケット代は一万円近く、パーク内で食事をするにもグッズを買うにも、かなりの浪費を覚悟しなければならない場所である。
付き合いたてで行く場所ではないと聞いたこともある。アトラクション待ちの行列で喧嘩するカップルが続出……なんて噂のある場所だが、善の事前サーチと下準備によって喧嘩になるようなこともなく楽しめている。
そもそも、善が相手だと喧嘩になりようがないのだ。鷹哉の言うことに関して善はイエスマンなのだから。――あのこと以外。
「そろそろご飯に行こうか。キャラクターに会える店を予約してみたんだ」
「えっ、まじ? そこ憧れだったんだけど」
思わず目を輝かせると、善はにこにこと嬉しそうにこちらを見つめた。いつも無表情とはいえ、かなりはしゃいでるのが伝わってしまったからだろう。
何を隠そう、鷹哉はこういう場所が大好きだった。キャラに会えるなら会いたいし、パーク限定のグッズも欲しい。予約のできるレストランはパークの中でもお高めだと知っている。
学費には困ってないが、バイト代を趣味に浪費できる金額にも限界がある。友人と来たことはあるものの、そのときは頭につけるカチューシャさえ我慢したのだ。
でもいまは、頭に好きなキャラクターの耳をカチューシャでつけ、飾りのついたポップなサングラスをかけ、時期限定のポップコーンケースを首から下げている。
お得意の開き直りを発揮して、チケット代が浮いた分を自由に使っていた。
ちなみに耳とサングラスは善にもつけさせた。おかげで中身はどれだけ真面目な人間でも、全力でパークを楽しんでいる人にしか見えない。こういうのは一人でやっても楽しくないからな。
アトラクションも料金さえ支払えば予約できるものが色々あるらしい。パレードだっていい場所を予約してくれていた。つまり善は鷹哉のために金に物言わせ、ほとんど並ばずノーストレスで遊ばせてくれている。
「あれぇ……? 確かこっちの方向なんだけどなぁ」
「善、地図見せて。あ~ここか! 道が一本違うって。こっち、ついてきて」
「すごい! もう道覚えたの? たかやくんありがとうっ」
サングラスをずらしながら小さなスマホの画面を一緒に覗きこみ、マップを確認する。大きなカチューシャがコツンとぶつかった。
確かに初めてなら迷うかもしれないが、善はそれ以上に方向音痴だ。
しっかりしているようでおっちょこちょい。鷹哉も自分が役に立てる場面があって少しホッとしたし、だいぶ歳上なのにちょっと可愛いな、なんて……いや、思ってないぞ?
浮かれた格好をした成人男性ふたりは、秋晴れのテーマパーク内を楽しそうに進んでいく。
今日はなんと、お泊りつきのデートである。都内だから日帰りできないこともないけど、「せっかくだから」と善がパーク内のホテルを予約してくれたのだ。
どうせ別々に寝るんだろうなと思いつつ、せっかくなら誘惑してやろうと鷹哉は考えている。
思い切って購入したきわどい下着はボストンバッグに入れてホテルに預けてあった。あとは酒でも呑ませてみようと企んでいたり。
(我慢してるなら……その壁をぶち壊すだけだろ?)
暗い場所で繋がれる手や、あのキスの情熱を鷹哉は忘れていない。
自分の気持ちについては保留中だ。意地の張り合いになっている気がしないでもないが、こと恋愛に関して鷹哉は超がつく初心者だった。
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