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 布団に入って目を閉じ、いつもより近い距離にいる想の存在を感じる。俺はパーソナルスペースが広いほうだと自覚していたものの、想だけは別みたいだ。

 一緒に生活するうち、いつの間にか想は俺の心の内側に入り込んできていた。異世界に、唯一同郷の仲間。
 ……いや、それだけじゃない。もっと前からだ。
 
 モデルのときに1ページだけ載った雑誌も、アイドル時代に全く売れなかったCDも想は必ず買って、熱烈な感想を送ってくれたのだ。毎日届く賛辞や俺の身体を気遣うメールも、事務所に届くファンレターも、いつの間にか心の支えになっていた。
 
 この世界で想を見たとき、俺を追いかけてきたのかという恐怖と、それを上回る安心感が俺を包んだ。他の誰でもない、想だったからこそ、俺は前向きに暮らせるようになると確信した。
 
 実際は想も順風満帆の人生を一瞬で打ち砕かれた被害者でしかなかったことを知り、俺は自惚れへの羞恥と同時に理不尽な残念さを感じてしまった。なんだ、俺のために異世界転移したわけじゃなかったのか……と。

 想の一番が俺じゃないと嫌だなんて、どの口が言えるのか。でも、この世界では、俺のもの。俺を軟禁しようとする執着を、どこか甘露のように感じていたのだ。
 
 それなのに知った現実は残酷だった。想を支配していたのは、俺ではなくこの国の上層部。想は執着心でなくただ俺を守るために閉じ込めていたらしい。そんなの……好きとかいう甘い感情を、遥かに超えてるじゃんか。

 祈りの間で血を流している想を見たときに感じた、衝動。クインスに強姦されそうになったとき自覚した――強い想い。
 
 絶対つらかったくせに、平気そうにしている想にこそ伝えるべきだ。俺はぎゅっと布団を握り締め、誰にも告げたことのない言葉を差し出した。

「俺も……想が好きだ」
「…………え?」

 想の方へ身体を向け、どんな反応をするかと期待して顔を見る。光の加減によっては青くも見える漆黒の髪と、少し濃いめの眉。彫りの深い顔立ちで黙っていればイケメンの想は、ぽかん……と意識が宇宙へ飛ばされているかのように固まっていた。

 その様子に、そっと首を傾げて目をパチパチッと瞬く。「あ……」と小さく声を出して、俺は重大な事実に気付いてしまった。

 ――俺、想に『好き』って言われたことなくね……?

「~~~~~ッ!」
 
 恥ずかしすぎて死にたい。誰か俺を即座に埋めてくれ。ぶわっと身体が熱くなり、頬どころか首まで赤くなっているに違いない。

「成悟先輩」
「いやっ、今のは間違いで!」
「せんぱい……」

 いつの間にか目の前に想の顔があった。その瞳は潤み、真剣な表情をしている。溢れ出すなにかを堪えるように噛み締められていた唇が、開いた。

「おれ、先輩のこと、ずっと好きでした……性的な意味で!!」
「お……おぅ」
「高校の時からずっと先輩で抜いてました。卒業してからも雑誌とかネット、テレビで見れるからずっと……!」
「それは聞きたくなかった」

 素直に両想いで感動させてくれ。急に目の前で、長年のオカズにしていたと発表された俺の気持ちを考えてください。
 まさかこいつ……今も? 思いつきで俺に迫っている想の股間を手で探して触れる。

「ひゃぅ!」
「ガチガチじゃん。ははっ」

 完勃ちだった。面白くなってきた俺がバスローブ越しにそこを撫でると、ビクンと震えまた質量が増す。
 でか。こんなのずっと隠してたのか? 宝の持ち腐れじゃん。

「お前さ、俺のこと抱きたいんだろ? いいよ」
「いいんですか!?!?」

 言い切る前に前のめりで確認されて、必死かよと逆に可愛く思えてきた。
 俺は別にゲイじゃないが、不思議と嫌悪感はない。機会がなかっただけでセックスに興味はあるし、なんかこいつを抱きたいとは思えない。むしろ、望むなら抱かれてやってもいいと思ってしまっている。
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