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 慌てた声をあげたメルクはしかし、暴れる方が危ないと判断したのか大人しい。

「ユピー……まさかこのシャツ、僕のですか?」
「バレたか」
「~~~~!」
 
 階段を登っている間に、メルクはまた最大限勃起させた。可愛いやつめ。
 
 広い寝室は、さっきまで俺が自慰をしていたからフェロモンで満たされているはずだ。すでにシーツがくしゃくしゃになっている寝台にメルクを座らせて、俺もその上に跨った。
 ズプッ……と熱が質量を伴って入ってくる。蕩けた腔内は侵入者を容易に受け入れ、強く包み込んだ。
 
 その大半を飲み込んだあと、俺たちはしばらく動かないまま唇を重ねた。舌を吸うとメルクのペニスがぴくっと反応するのが面白い。反撃に上顎を擦られ、俺の腰も震える。
 メルクの手は俺の胸を揉みしだいている。力を込めていない筋肉は柔らかく弾力があって、こいつもお気に入りのようだ。女に負けたくなくて、胸筋は前以上に鍛えるようになった。
 
 そのうちメルクは舌で俺の首筋をなぞり、鎖骨を経由し、胸へと辿り着く。その先端でポツンと主張する乳首を、ちゅぱちゅぱと吸い始めた。
 両手は俺の腰を支え、尾てい骨を撫でている。俺はこのダブルコンボに弱かった。

「んあぁっ! メル、それはまずい……」
「ユピーはこれが好きでしょう?」

 激しいことは何もされていないのに、階段を駆け上がるように身体は高まっていく。隘路はぎゅうぎゅうとペニスに絡みつき、勝手に弱いところが刺激される。
 メルクが俺の呼吸を読み、タイミングを見計らったかのように乳首を強く吸った。同時に尾てい骨を強く押され、俺はガクガクと激しく達した。
 この快感を乗り越えればひと息つける。そう思ったのも束の間、奥にある結腸口がゆるんで「くぽっ」とメルクの亀頭が嵌った。

「っか! は……」
「あぁ、ユピー……今日はもう受け入れてくれたんですね。嬉しい」

 紺青の瞳が蕩けて俺を見つめる。その綺麗な顔がめちゃくちゃムカつくし、死ぬほど愛おしい。こいつはアルファで、俺はオメガだ。それは一生変えられない事実だがしかし俺がどんな姿を見せても、メルクは態度を変えなかった。
 俺を見下して甘やかすこともないし、番になってほしいとか子どもを産んでほしいと言ったこともない。ずっと尊敬と憧れを真っ直ぐに向けて、俺のやりたいことを右腕として、時には陰ながら支えてくれる。

 寝台のスプリングを利用して、メルクが俺を突き上げ始めた。俺が着地しメルクが下から跳ね返す瞬間、信じられないほど奥まで昂ぶりが届く。見えない子宮が口を開いて待っている気がした。
 初めて肌を重ねたときから、メルクは俺が避妊薬を飲んだか必ず確認してくれる。こんな頼もしいパートナーはそういない。何度も達すると何も考えられなくなってくるが、安心して身を任せられる。これを愛じゃなくてなんという?

「める、あっ。メルクッ……愛してるぜ」
「ユピー……僕の憧れ。僕も心からあなたを愛しています……」
 

 ◇
 

 それからさらに数年経ったころ、騎士団内に大激震が走った。

 緑騎士団の団長が番のヒート休暇明けのある日、突然項に噛み跡をつけて出勤したのだ。皆がオメガに噛まれたのかと冗談交じりに噂したが、団長ユピテルはこう言ってのけた。

「俺の腹にはメルキュール副団長との子どもがいる。したがって半年後、俺は出産のため休暇を取る予定だ。その後も育児でしばらく抜けるが、必ず戻ってくると約束しよう。お前たち、俺のいない間に弱くなるなよ!」

 これには騎士団の上層部もさすがに慌てた。なにせ団長が出産なんて前例がない。しかし総帥は、これが前例になると笑って許可した。

 騎士でも二次性に振り回されない、新しい時代の幕開けだ、と。





――――――――――





お読みいただきありがとうございます。おもちデラックスです。
本作品はXのタグ企画 #再会年下攻め創作BL に参加して書いた作品です。
年下攻め……いいですよね。

そして私の作品としては初めて、男前受けです!
ユピテルが予想以上に男前になって、大満足でした~。
短編はどうしてもRシーンばかりになってしまうのですが、みなさん付いてこれましたでしょうか?(不安)

拙作【貧乏貴族は婿入りしたい!】と同じ世界観なので、そのギャップもお楽しみいただければ嬉しいです。
両作の登場人物が出会うコラボ番外編もいずれ投稿したいと考えております。

楽しみにしていてください!
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