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 団長は迷いなく僕のズボンを脱がせ、下穿きを下ろした。そこは僕の混乱をよそにガチガチに勃起している。「……でかいな」なんて団長は笑ってつつくけど、些細な刺激にさえも腰が跳ねそうになる。
 だって仕方ないだろ! 初めてオメガのフェロモンに当てられたのだ。
 恥ずかしながら、僕には対人での性的な経験が全くない。青騎士団でも休みのたびに同期たちがデートや娼館に出かけている間、僕はひらすら訓練に勤しんでいたのだ。

 正真正銘の童貞アルファが、オメガのヒートを目の当たりにして、抗えるわけもない。
 ――そう、信じられないけど団長はオメガだったのだ!





 ユピテル団長は硬さを確かめるように僕の屹立を何度か扱き、腰をあげた。手で角度を調整されたペニスが団長の……濡れたところに当たる。
 僕の拙い知識が正しければ、そこはオメガの、団長の後孔のはずだ。

「……ひぇ」
「悪いな、メルク。お前は目を閉じて寝てるだけでいいから、人助けだと思って、付き合ってくれ」

 僕の口から情けない声が漏れる。きっと顔も情けない表情をしているに違いない。団長は謝ってくれるけど、別に嫌とかではないのだ。嬉しい、というのもちょっと違う。
 憧れの人と肌を重ねようとしている今の状況はあまりにも……畏れ多かった。

 僕たち騎士団員は、訓練されていて夜目が利く。外に光が漏れないよう小さなランプしか置かれていない天幕の中でも、団長の様子はよく見えた。
 
 淡く日に焼けた小麦色の肌は赤らみ、汗の粒が浮かんでいる。深碧の瞳は緑に近く、潤んでいるさまは森の中の湖のようだ。
 普段より息が荒い。眉がきつく寄っていて苦しそうだった。
 オメガの発情期を薬もなく、相手もいない状態で乗り越えるのは心身に大きな負担がかかると同僚が言っていたことを思い出す。

 ――そうだ。いまの僕は自分のことしか考えていなかった。

 ユピテル団長は『人助け』と言った。推しが助けてほしいと言っているのに、どうして迷うことがある?

「よ、喜んで!」
「はは! 威勢がいいな」

 この台詞はなんか違うな、と思ったときにはもう口から言葉が零れてしまっていた。案の定団長に笑われたけど、眉間の皺は取れた。

「僕の身体でよければ、いくらでも使ってください!」
「……ありがとな」

 迷いのなくなった表情を見て安心したのか、ユピテル団長は腰をゆっくりと落とし始めた。団長が脚を左右に開いているおかげで、申し訳ないほど絶景だった。目を閉じるなんてできそうもない。ガン見だ。
 僕のペニスが飲み込まれていく。団長の、なかに。

「くぅっ」

 ぐ、と圧力がかかったかと思うと、ぬめって熱い肉に包まれた。まだ先端だけなのに、想像の何倍も強い快感が襲ってきて声が出てしまう。なんだこれ! 手と全然違うぞ!?
 団長の中はヌルヌルで狭かった。未経験の快感を僕はまだ処理できていないというのに、団長は止まらない。どんどん気持ちよさが増していき、根本まであと少し、というところでやっと止まった。
 
「あぁ~~……やっべぇな」
「っ……」

 大丈夫ですか、ちゃんと気持ちいいですか。そう聞きたかったものの、ひと言でも発したならば即座に達してしまいそうだった。
 団長の動きが止まったからって余裕なんてない。視覚から入る情報が、凄艶すぎる。引っ掛けただけのシャツはその完璧な肢体を彩る飾りにしかなっていなかった。
 体格は似ているけど、筋肉のつき方が僕とは違う。ユピテル団長の身体にはバランスよく、滑らかな筋肉が乗っている。普段騎士服に隠れている部分を目の当たりにして、鼻血がでそうだ。

「おい、なんで鼻を抑えるんだ。もしかして、俺のフェロモン臭いか?」
「いいいいい匂いです! ……ぁっ」
「……はは、あはははは!」
 
 反射的に答えてしまったせいで、あっけなく僕は達してしまった。団長が大笑いするせいで、腔内も震える。それがまた刺激になって、腰が溶けそうなほどの快楽が僕を襲った。
 ……長い射精が終わった頃、僕は情けなさと悔しさで涙目になっていた。こんなのじゃ少しも団長を満足させられない。


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