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しおりを挟むこの人なら。この人となら番になりたい。アクアのフェロモンをこの先一生、彼だけのものにしたい。
アクア自身まだ自覚していなかったが、それは初めて抱いた未来への希望だった。
「んぁ~~~っ!~~~!!」
背中を反らしてアクアが絶頂したとき、ブラッドはもう一度強く腰を押し込んできた。雄膣は蠕動し、もっと奥へ、奥へとペニスを誘い込む。
ぐ、ぐっ……ぐぷんっと後孔に圧迫感を感じた瞬間、今までよりさらに奥へとブラッドの先端が届いた。
最奥に熱い精液が叩きつけられ、その快感は脳みそが焼き切れるほどだった。自分の感覚よりも長い射精に、お腹がいっぱいになりそうだ。
アクアはぴくぴくと恍惚に震える。セックスがこんなにも幸せを感じるものだなんて知らなかった。
「はわぁ~。しあわせ、です……だんなさま、すごい……」
「上手くできただろ?受け入れてくれてありがとう、アクア」
「えへへ。――んっ」
自分がへらへら笑った振動で、まだお腹の中にずっぷりと居座っているブラッドの形を認識してしまう。お腹の奥が、切なくて気持ちいい。
これ以上感じてしまったら、脳が溶けて、ふにゃふにゃ人間になってしまう!
慌ててアクアはブラッドに声をかけた。
「だ、だんなさま?そろそろ……」
「あぁ、ごめんな。ノットってわかるか?まだしばらく、抜けないんだ」
「あ!んん」
ブラッドが少し腰を引くと、何かが栓のように詰まっているのを感じた。アルファは性交時にペニスが抜けにくいよう、あるいは子種をこぼさないよう、陰茎の根元に亀頭球ができるらしい。
へー、と納得したように答えながらも、アクアは内心困っていた。ずっと快感がお腹の中に渦巻いていて、胎内がひくひくと蠢いてしまう。
気を抜くとまた、達してしまいそうだ。ぎゅっと眉間に皺をよせる。
「ああ、幸せだな」
「はぁんっ。~~~ッ!!!」
ブラッドが微笑んで頭を撫でてくれただけで、キューンと幸せが襲ってきて油断してしまう。また甘イキしてしまった。
ヒートのときだってこんなにも連続で達することはないのに、どうなっているんだろう?アクアの中心はもうくたっとしたままで、芯を持っていない。
「またイッたのか?かわいいなぁ……まだ抜けないだろうし、もっと、可愛がらせてくれ」
「も、むりですっ……やぁっ!?」
大丈夫大丈夫、という言葉と共に、コロンとうつ伏せにされる。大きいままの屹立がアクアの中を半回転して、また目の前に火花が飛んだ。
いつの間にか解けていた髪の毛が目の前に散らばっている。「流れ星の光みたいだ」と言ってブラッドが手で梳いてくれるけど、甘い仕草に意識を向ける余裕はなかった。
ノットは抜けないだけで、多少の動きは可能らしい。ブラッドが奥を捏ねるように腰を動かして、アクアは喘ぎをもらす。
注がれた精液が潤滑剤となって、くちゅくちゅと卑猥な音が耳元で聞こえる気さえしてくる。ふにゃふにゃになったアクアは自分が何を言っているのかわからなかった。
「ん~~~……お腹、きもちぃっ。あっ、ぶらっどさまぁ……もっと、子種ちょーだい?」
「ゔ。まて……」
ドックンとナカの熱杭が拍動し、じわぁっと生温かいものが奥に広がる。アクアは嬉しくて、花開いたような笑みを後ろのブラッドに向けた。
「きたぁ!……ぶらっどさま。すき、だいすき」
「私のほうが大好きだ!!」
また急に大きな声を出したブラッドはアクアの唇を奪い、手の平で項を撫でた。
ぴり、と痺れるような感覚が背筋を駆け下りる。確か……番になるときって…………
「噛んでくれますか?」「次の発情期に噛ませてほしい」
同時に口に出したから、多幸感で胸がいっぱいになった。優しく見つめられて、なんだか涙まで浮かんでくる。
ブラッドはアクアのほんとうの旦那さまになった。番という切っても切れない関係になれるのももうすぐだし、まだ想像はつかないけど、いつか家族が増えたりすることもあるのかもしれない。
ずっとひとりだった。
仕事を覚えてからは仕事だけがアクアのものだった。暗殺に理由は必要なく、自分が死にかけたって仕方ないで済ませられる。
なんの後悔もなかったのに、ブラッドのせいで躊躇いが生まれて、初めて反発を覚えた。彼がアクアを救い、結婚までしてあたたかい生活を与えてくれたからだ。
寂しさも、幸せも知った。
ブラッドのせい……おかげだ。
好き。その言葉を口に出すだけで、あたたかい気持ちになれる。
明日も旦那さまに伝えよう。また笑い合えたらいいなぁ。そんな夢を抱いて目を閉じ、眠りの世界に旅立った。
――なんてことをブラッドが許してくれるはずもなく。彼が満足してノットが解消されるまでのあいだ、アクアはさまざまな体位で、甘い言葉で、蕩かされたのだった。
――――――――――
お読みいただきありがとうございます!
短編ですので短いですが、アクア視点はこれにて終わりです。
次はブラッド視点。一日二回の更新となります。楽しんでいただけると嬉しいです♡
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