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6.※
しおりを挟むあんなに妄想が得意なのに、僕がここまで快感に支配されたのは初めてだった。テルルにくったりと体重を預けたまま、びくびくと身体を震わせ、口はずっと半開きになっている。
前に触らずとも、今日なら達せそうだと思った。あと少し。あと少しの刺激で……
僕は見えないながらもテルルの顔がある方向へと首を動かし、懇願するような声を出した。
「てるるの、挿れてほし……」
「!!」
張り型が抜かれ喘いだ次の瞬間、シーツの上に仰向けで転がされていた。背中が急に冷たくなって「ふぁ」と声が漏れる。
もしかして……僕のひと言に呆れ返って投げ出された? この部屋に来てからどの時点を振り返っても、普通の人なら引く場面しかないことに気づいてしまう。
アイマスクの下で、瞼にじわっと涙が滲んだ。
「て、てるる……ごめ」
「後悔するなよ」
急にアイマスクを剥ぎ取られて、眩しさに目を細める必要はなかった。テルルが僕に覆い被さり、ランプの光は遮られている。薄暗い中でも、鮮やかなブルーは光を孕み揺れていた。
そこから読み取れるのは、情欲。そして……?
テルルは泣きそうになっている僕の目を見てどう思ったのか、チッと舌打ちをした。僕の膝を下から抱え上げ、「やめないからな」と念押しする。
やめないんだ……
ほっと安心した僕は、両腕を伸ばしてテルルの首に絡めた。
「やめないでいいから、きて」
「!!」
テルルが顔を真っ赤に染めて、童貞みたいな頼りない顔をした。さっきから、こんな顔してたのかな? ……僕も童貞だけど。
でも後ろに当てられたペニスは凶悪だ。火傷しそうなほど熱いし、さっき感じた硬さ。テルルの体格から考えても、アルファの僕に負けず劣らずなモノを持っていることは間違いないだろう。
――そう。僕はこれでもアルファなのだ。
どうしてこうなったかは分からないけど、成り行きだとしても誰かに抱いてもらえるなんて、思ってもみなかった。いまはアルファとかベータとか、関係なく僕らは向き合っている。
決意したようなテルルが僕を見つめてくるから、見つめ返す。少し潤んだ瞳に、蕩けた顔の僕が映り込んでいた。
ぐ、と力を込められ先端が入ってくる。――は? で……でっか…………!
明らかに張り型より大きい。少し痛いくらいだったものの、柔らかく熟れた蕾は懸命に広がって大きな亀頭を受け入れた。
「く、う……」
「痛いか?」
痛いというより、苦しい。でも本物が入っているという満足感がすごい。
それに僕が押し切ったような状況なのに、苦しげに動きを止めて、心配そうに聞いてくるテルルが可愛かった。なんだろ、この気持ちは……
腕で引き寄せ、テルルの唇にちゅっと自分の唇を合わせた。にこっと笑って、「大丈夫」と伝える。気分は年上のお兄さんだ。そして僕は、テルルにとって間違いなく年上のお兄さんだった。
ポカンとしたテルルの表情が想像以上に間抜けで、あははと声を出して笑う。ちょっと余裕が出てきて、僕は完全に油断していた。
途端に悪い顔つきになったテルルが、獲物を喰らうように深いキスを仕掛けてくる。舌が入ってくるのと同時に、腰をズッ……と押し進めてきた。
「んぅ!?」
最初ほどの抵抗はない。けれど内腔のひだを巻き込んでゴリゴリと突き抜けていく屹立は、圧倒的な質量で僕を征服しにきていた。角度を間違えるだけで痛みを伴う張り型と違って、柔軟で、熱くて……きもちいい。
誰も、何も届かなかった奥地まで遠慮なく突き入れられ、苦しいのに、その強引さにも身体が歓喜した。
押し出されたような嬌声をも飲み込むように唇を覆われ、遠慮なく舌が絡め取られる。キュッと舌を吸われると、舌の根元が痺れて気持ちいい。
息も満足に吸えないまま、テルルは腰を引いて……バチュ! と奥へ熱棒を叩きつけた。
「ゔあ!!」
「ローラ、アウローラ……もう、俺……」
いつもは後ろに流している髪が垂れてきて、僕の顔に降りかかる。銀白色のカーテンに包まれながら、その髪に手を差し込んだ。
お腹の奥に重苦しい感覚が溜まり、それが繰り返されると快感に置きかわってゆく。あぁ……初めてなのに、なんて柔軟な身体なんだろう。
テルルが切羽詰まった声で僕の名前を呼ぶ。それは、家族に呼ばれるのとはちがった甘い響きで。
またテルルを愛おしく感じた僕は、その気持ちのまま、微笑んだ。
「んっ、ん……いいよ……テルル。達って」
「~~~!!!」
「ひゃっ、ちょ、――~~~ぁあん!!」
顔を顰めたテルルは達する直前、抱えていた僕の脚を肩にかけ、空いた両手で僕の乳首をギュッと摘んだ。
上から串刺しのように貫かれたまま、ドクンと中で膨らんだペニスが熱い飛沫を叩きつけてくる。
最後に重なった唇だけが優しかった。
中に情熱を注がれることへの快感と、抵抗できない体勢。敏感になっていた乳首への痛いほどの愛撫……ぜんぶがぐちゃぐちゃに混じり合って、僕に襲いかかる。
胸と顎に濡れたものを感じて、僕は自分も達していたことに気づいた。
「ローラ……おれ……」
「……テルル! すごいよ~~イケた! 前に触らずイケたよ!!」
「……」
身体はくたくたで、まだ余韻に痺れているなかでも、僕はこの感動を伝えずにはいられなかった。だって、テルルのおかげだ!
しかしテルルは死んだ魚のような目になって、感情のこもってない声で「良かったな」と言った。
え。テルルも達したってことは、気持ちよかったんだよね? 僕、なんかした??
……まぁいいか。
ありがとう! と元気よく伝え、未だ存在感を主張しナカに居座る男を、片づけるから腰を引けと肩に掛けられたままの脚で押した。
「ていうかさぁ、萎えてもこのデカさって……テルルのお相手は大変じゃない?」
「……これを体験したのは、お前だけだよ」
「は? え……まじ? ――って、え。あ。ぁあ~っ!?」
脚を掴まれて、ぐりんとうつ伏せに転がされる。一瞬抜けたペニスはなぜか芯を持ったままで、両手で僕の尻肉を広げたテルルは……後ろから再び挿入してきた。
僕の戸惑いなどおかまいなしに、内腔はテルルの雄との再会を喜んで、絡みつく。さっきとは当たる場所がぜんぜん違って、僕は驚きに戸惑った声を上げた。
「まって、てるる……なに、これぇ……?」
「身体から落とす方が早そうだ」
「あっ。るる、これ、きもちぃ……んっ。もっとぉ…………」
「…………」
うつ伏せで寝ているだけなのに気持ち良すぎる。ゆるゆると奥を捏ねられて、蕩けるような快感に思考まで溶けてしまった。
テルルの動きに合わせて、僅かに芯を持った中心がシーツに擦れる。ずっと敏感なままの乳首も擦れて、頭がおかしくなりそう。いや、もうおかしくなっている。
当初の目的なんて頭からスポンと抜けてしまい、テルルの猛攻に僕は喜んで応えた。これでも騎士だから、なまじ体力はあるのだ。
そう、思っていたんだけどな……
(腰、いったぁ……。しかもまだ尻に、なんか挟まってる感じがする……)
直立した姿勢を保ちながら、僕は身体の違和感に内心泣いていた。こんなの、楽勝だと思っていた騎士の訓練で立てなくなるほど扱かれた新人の頃以来だ。
今日は隣国から大使が来ているため、僕も久しぶりに王宮中心部へ配備されている。以前兄さんがわざわざ確認に来ていたように隣国との関係は微妙で、王宮全体がピリついていた。
なぜなら表向きは友好関係を保っていて経済的同盟も結んでいるが、国境での小競り合いは絶えないからだ。
大陸の長い歴史の中で、隣国との国境は何度も動いている。約百年前に一度大きな大戦があって現在の国境に落ち着いたものの、血気盛んな辺境の少数民族やそれと見せかけた騎士がゲリラ部隊を組んで土地を返せとたびたび仕掛けてくるのだ。……その相手をする緑騎士団は大変だろうな。
国境での小競り合いに隣国は知らない振りをしているし、国内には同盟を結び続けることに不満を持つものもいる。中にはもう一度大戦を望む過激派もいて、そういった者たちが今回の同盟を邪魔しようとする可能性があった。
実際五年前の同盟のときも徒党を組んでテロ行為を計画していた前例があって、その際は青騎士団と合同で粛清が行われたのだ。僕は新人だったから末端の作戦に参加しただけだけど……
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