【完】オメガ騎士は運命の番に愛される《義弟の濃厚マーキングでアルファ偽装中》

市川パナ

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世界観崩壊注意

IF:メスガキ系主人公☆ロイズくん②(微修正)

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 あのクソガキのフェロモンを使って、アルファに成りすませるんちゃうか。
 祖父をどうにか言いくるめる必要がある。どないしよ。
 頭しこたまどついて、どこぞの病院に放りこんだらええか。

 と、思っていたら、祖父はポックリ死んだ。ザァザァと雨が降っている。

「俺が倒そ思ってたのになぁ……」

 葬儀で呟くと、ジョシュアくんがなぜか手を握ってきた。
 キショいわ、と言って振り払ったけれどまた握られて、俺もつい握り返していた。

 と、感傷に浸ったのも三日だけだ。

「ほんでな、ジョシュアくん。君のフェロモン、俺が有意義に使ったるわ」
「…………あの、もう一回言ってもらっていいですか?」

 ジョシュアくんはやけに頭が痛そうな顔だ。
 ちゃんと聞いとけや、と思いながらしっかりと説明する。
 そして拳を力強くにぎって計画名を述べた。

「アルファ偽装計画や!」
「…………イヤですけど」
「知るかい。これまで稽古つけたったやろが、恩も返せんカスか?」

 ジョシュアくんはハァ、と溜め息をついているが、知ったことやない。

「今日から毎晩添い寝頼むで」
「…………どうなっても知りませんけど」

 翌朝、勃起したものに気付いて、俺はベッドから全力で蹴り落とした。

「サルか? 君は?」
「いや、言いましたよね。これでもガマンしたんですけど」
「は? キショいねん。鎮静剤でも抑制剤でもぶっこんだるわ」
「ええ……」

 勃起したクソガキと添い寝できるかい。
 主治医を呼びつけて適当な薬よこせ、と言ったが、少年期の薬の投与は危険と渋られる。
 知るかボケカス。
 裏ルートを調べて睡眠薬やら鎮静剤やらラット抑制剤を購入し、ジョシュアくんに毎晩飲ませて、抱き枕にした。
 フェロモンの効果は確かだった。

「すごいわ、コレ……! 俺のフェロモンみたいやない?」

 パァァァ……と世界が明るくなっていく。
 ジョシュアくんはゲッソリしているが、精進せえ。

「……喜んでくれたならいいです、もう」
「きみは匂い袋やな。せいぜい使たるから感謝しいや!」

 意気揚々と復学届をだして、俺は学校にもどった。
 すると教室は騒然とした。

「ロイズがもどってきた……!!」

 一同そろって嫌悪や恐怖で顔をゆがめており、恐れられてるんやなぁと愉快で仕方ない。

「なまっとるんちゃうやろなぁ。鍛えたるわ!!」

 稽古の時間になると、全員をウキウキで転がしていった。
 ここにはアルファが仰山おるからなおのこと愉快や。
 ザコの山を積んで踏み、死屍累々の景色を眺める。

 ここ一年の憂いが晴れていくのを感じる。
 そこに、ザコ――ではなくなってきたミカエルが現れた。
 不快な事にミカエルは好戦的な笑みを浮かべてくる。

「よー、学校でヤるのは久々だな……?」
「ハ、みんなの前で転がしたるわ、ザァコ」

 ――なんでやねん……!
 ミカエルとの腕は五分五分になっていて、引き分けた。
 クソが、と俺は自主訓練の時間を増やして稽古に没頭した。しかしその一年後。学年トーナメントで完全に負けた。完膚なきまでに。

 周囲は俺を目の敵にするやつばっかりで歓声が響いとる。
 ミカエルは自負心に満ちた笑みを浮かべて来た。

「テメェがザコだったな」

 血管がブチィッ、と切れた音がした。
 しかし、剣技は実力が全て。

「せいぜい今のうちに短い永光、満喫しとけや。あっちゅう間に引きずりおろしたるわ……」
「そーするよ。つーかお前……」

 ミカエルが眉をひそめ、顔を近づけてきた。

「オメガだろ」

 小声で指摘され、俺はすかさず下あごにアッパーを食らわせた。

「寝言は寝て言えや」

 ミカエルは不意を突かれて尻もちをついた。

「……まあ、そうだよな。勘違いか……」

 ぶつぶつ呟いとって気味が悪い。
 後日、ミカエルの女どもが校門前で修羅場を繰り広げたらしいが、くだらん。興味ない。

 俺は時間があれば剣の稽古に明け暮れた。それは学校を卒業して、騎士になってからも続いた。
 朝、ベッドで起きてふと呟く。

「騎士って”王国の守護者”とかいうけど、しょーもないやんなぁ」
「…………外で口にしたらだめですよ」

 ジョシュアくんは何やかんやマーキングを続けてくれており、俺はそこそこ感謝している。

「はい、スカーフです。ちゃんと首に巻いて下さいね」
「なんや、首輪されとるみたいでイヤやねんけど」
「四の五の言わないでください」

 生意気になってきたなぁ、と思う。
 今年で十八になるから、昔の可愛げも減ってきた。いや、もともと可愛くなかったわ。
 ジョシュアくんは淡々と制服に着替えながら話す。

「今日の訓練は、憲兵隊との合同訓練でしたっけ」
「は? 何で知ってんの」
「日程の用紙を確認しました」
「きみストーカーか?」
「…………」
 
 ジト目を向けられるが、俺は無視しして支度し、基地へ向かった。
 そしてこの日は、運命の日になった。

 何とか基地から退避し、屋敷にもどってから改めて戦慄する。

「む、無理や、むりむり!! 運命なわけあるかい……!! 脳みそウジ虫沸いてんとちゃうぞ……!!」

 やけど本能が、運命の番っていうとる。
 しつこそうな男やった。
 これからどないせえっちゅうねん……!!

 すぐさま頼りの主治医を呼びつけて薬を変えてもらった。これだけが希望や。
 夜は社交サロンにいかなあかんし、用意せんと。
 しかし出発時にジョシュアくんに焦りを見抜かれて、しょうがなく説明する。
 するとジョシュアくんは真剣な口調になった。

「ロイズさん、夜の社交サロンは休んだほうがいいです」

 俺は即座に睨み返した。

「ふざけんな。俺が運命ごときに負けるわけないやろ……!」

 幸いにも薬はしっかり効いており、どうにか運命とやらの誘惑を乗りきった。
 明日からもこの調子で行くで!





つづく
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