【完】オメガ騎士は運命の番に愛される《義弟の濃厚マーキングでアルファ偽装中》

市川パナ

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IFエロ

IF:完結後の運命の番ヤンデレモード展開④

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 ユリウス隊長とふたりきりで気まずい空気を感じる。
 そのとき、背後にある玄関の扉が開いた。

 振り返れば、驚いた顔のジョシュアがいた。

「ロイスさん……!?」
「ジョ、ジョシュア」

  パーティ会場で姿を消したから、俺のことを捜してくれていたのだ。

「今までどこに……!」

 ジョシュアは俺の無事を一度確認したあと、ユリウス隊長に警戒した目を向けた。

「どういうことですか。ロイスさんにあなたのフェロモンが付いてる……!」
「ふむ……。そうだな」

 ユリウス隊長は俺たちの姿を眺めてから思案気に頷いた。
 そうして涼やかに俺に微笑んだ。

「”この男を愛する君”を愛すことはできるが――」

 瞳に怜悧な光が宿った。

「――この男の存在を受け入れることはできそうにないな」
「…………ん?」

 どういうことだ? と思った瞬間だった。
 ユリウス隊長の姿が忽然と消えた。
 横を見れば、ジョシュアの腕に指四本を食いこませている。
 腕で咄嗟にガードしていなければ、本来は頸動脈を断裂していた位置だ。
 直後、ユリウス隊長は強烈な蹴りを放った。

「がッ、ハ……ッ!!」

 ガードは間に合わず、鳩尾をえぐられてジョシュアの顔が大きくゆがむ。
 さらに隊長は髪の毛を掴んで、ジョシュアの顔目がけてヒザを入れた。
 鼻血が溢れる。ユリウス隊長は止まらない。
 ガッ、ゴッ、と鈍い音が響き、俺はようやく目の前の凶行を理解した。

「や、――やめてください!!」

 隊長の体にしがみつく。
 すると動きが止まって、しばらくしてから髪を掴む手を放した。
 ジョシュアは気絶しているようで、どさりと床に落ちた。
 ユリウス隊長は沈黙した後、口を開いた。

「…………君の試練は、酷だ」

 ぽつりと落とされた呟きは、心から愛の試練か何かだと信じているようだった。

「……試練じゃ、ありません」
「試練だろう。間男の存在を受け入れた上で、さらに愛して欲しいのだろう」

 冷や汗が止まらない。
 何か間違ったらジョシュアが殺されると直感していた。
 しかし、俺はジョシュアが好きだ。

「俺は、ジョシュアだけ……」
「つれないことを言って、気を引こうと言うのか」

 言葉を失った。

 受け入れられない現実から逃避するために、彼は全てを曲解して理解しようとしているのだ。
 試練という思い込みも、正気を保つための手段なのだ……。
 ジョシュアは気絶したままだ。ひとつ間違えればきっと殺される。
 汗が噴き出してきて、こめかみを伝った。
 ユリウス隊長は茫洋とした微笑を向けてくる。

「君の試練でないなら、これは神の試練だろうか、それとも悪魔か……。君の心を弄ぶものは何だ? 教えてほしい」
「っ…………」

 答えを間違ったら、あとはない。
 何と言えばいい。
 緊迫の中で見つめていると、ユリウス隊長は場違いなくらい愛おしそうに目を細めた。

「君が私を見ている……」

 夢見心地のような声音だった。

「やっとだ。出会ってからどれほど君を見つめてきたか……」

 そうだ、訓練の最中でも、社交界でも、彼はどんなときでも俺を見つめていた。
 表情は涼やかなまま、瞳だけは熱っぽく、嘆かわしそうに、寂しそうに。嫉妬したり、憎しみを抱いたりしているときもあった。その瞳の奥にはいつでも愛がこもっていた。
 彼は俺の姿をいつでも探していた。今日もパーティ会場で誰よりも早く俺を見つけた。
 答えはこれしかなかった。

「……俺は、隊長のものです。だから」

 ジョシュアには手を出さないでほしい、と目で訴える。
 すると、隊長の表情に力が宿っていくのが見て取れた。

「……本当に?」
「はい」
「そうか……ロイス。そうか……わかってくれたか」

 震えた声や仕草すべてに、喜びが滲んでいる。
 しかしふと冷たい色でジョシュアを見下ろした。

「それなら、この男は不要だな」
「――待ってください。手を汚さないでほしい」
「…………ふむ」

 ユリウス隊長は思案する。そして微笑んだ。

「君からこの男に、番の解除を求めるのならば」
「――わかりました」
「目を覚ますまでしばらく時間がかかるだろう。それまで君を愛したい」
「……ええ」

 ジョシュアの命に変えられるものはない。俺はユリウス隊長の望むままに頷いた。
 寝室へ案内するのは気が引けて、客間へ案内した。






つづく
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