【完】オメガ騎士は運命の番に愛される《義弟の濃厚マーキングでアルファ偽装中》

市川パナ

文字の大きさ
上 下
76 / 86
IFエロ

IF:完結後のNTR展開 主人公ビッチ化の逆ハーレム① 

しおりを挟む
※潮吹きあり
***




 俺が寝室のランプの蝋燭を消そうとしたときだった。

「ロイスさん。今日どうかな?」

 ジョシュアが何気なく訊いてきて、「エッチのお誘いだ」と気付いて心臓が高鳴った。

 番になって早二年。両手で足りないほどに体を重ねてきたけれど、誘われるたびに毎回、初夜のように狼狽えてしまう。添い寝だけの生活がいまだに染みついているのか、欲望を向けられるだけで飽和してしまうのだ。

「うん、っ……」

 そわそわと期待しながら頷くと、ジョシュアは微笑ましそうな顔でベッドに腰を下ろした。
 となりに座って、どちらからともなく唇を重ねる。

「ん、ん……っ」

 軽く口付けを繰り返し、徐々に口を割り開いて舌を絡めあう。崩れるようにシーツへもつれていけば、寝衣を肌蹴られ、肌にもキスを落とされた。気付けば無防備な恰好で横たわっていた。
 愛撫は首筋、鎖骨、乳首へと移っていき、チロチロと舐められてくすぐったさと快感で腰が疼いた。

「ふっ……、んっ……」

 その最中、ジョシュアが真剣な目を乳首に向けてきた。

「ここ、プックリしてきたね。みんなに見られたら心配だから、いじらないほうがいいかな……」
「ぇっ」

 俺はちいさくショックの声を上げていた。
 本番前に毎回ここをたっぷり愛してもらうのがお決まりになっていたのに、これが省かれてしまうのか。見れば確かに以前よりも乳輪も粒もふくらんでいて、胸元で存在感を放っている。
 弟は困った顔で眉を下げる。

「みんなにじろじろ見られたら困るでしょう?」
「う、うん……」
「引退したらいっぱいさわってあげるね。いまは代わりに耳を開発してあげる」

 囁き声を流されて、んっ……と甘い声が漏れた。
 背筋にゾクゾクと期待が這いあがってくる。

「ん、もっとして。ジョシュア……」

 俺はジョシュアの首に腕を絡め、与えられる愛撫に身を任せた。








「ロイス、この書類だが――」

 職場の執務室でユリウス隊長に声をかけられ、俺は席を立って彼のもとへ向かった。
 ほんのりと漂ってくるのはシトラスの爽やかな香りだ。本来番契約を結べば他のアルファの香りはわからなくなるはずなのに、彼の香りだけは運命の番のせいか今でも薄っすらと嗅ぎ取れる。
 しかし俺は、それを誰にも知らせないまま胸に秘めている。嗅ぎ取れていることを知られたら運命の番に惹かれてしまうと言っているようなものだ。ユリウス隊長に期待させてしまうし、ジョシュアを不安にさせてしまうだろう。ユリウス隊長は「諦めない」という宣言通り、たびたび俺に熱情のこもった目を向けてくることがあるのだ。
 書類に関する話を聞いて、俺は頷いた。

「それなら倉庫に参考になる資料があったはずです。探してきます」
「私も行こう」

 ユリウス隊長が席を立って、俺は内心で動揺した。倉庫は地下の離れた場所にあって、人が来ることはめったにない。そんな場所にふたりきりになってしまっていいのだろうか。

「ひとりで探せますので」
「ふたりのほうが効率がいいだろう」

 ぐ、と二の句が継げなくなって飲みこんだ。
 離れた地下にある倉庫へランプを持って一緒に向かい、薄暗い倉庫の中で目当ての資料を手分けして探していく。倉庫は巨大で、長い年数蓄えられてきた資料を探すのは砂漠で砂金の粒を探すようだった。
 さらに密室で風がないせいで、ユリウス隊長を中心にシトラスの香りがどんどん濃厚に広がっていく。

 昨夜もジョシュアに愛された後孔がヒクンと疼いてきて、俺は焦った。
 番契約を結んでいるのに、運命の番のフェロモンにヒートを誘発されているのだ。

「あの……っ、時間がかかりますし、俺が探しておきますから。隊長は執務室にもどってください」
「構わない。探している資料がなければ仕事も進まない」

 ユリウス隊長は淡々としたまま資料棚の上のほうの木箱を取り、中の資料の束を取って表紙を確認していく。
 なんと言えばいいのだろう、と焦燥はさらに増していく。
 どうにか無心に徹して、資料の表紙を確認しているときだった。

「桃の香りが漏れているが……?」

 気付けば真後ろにユリウス隊長が立っていて、耳に静かな声を流しこんできた。
 俺はひっ、と細い悲鳴を上げて、棚に背中をぶつけた。

「番契約をすれば、オメガのフェロモンが漏れることはなくなる……。これはどういうことだろうな?」
「……気のせい、です。俺はちゃんとジョシュアの番になりました」
「この香りが、未だに私を求めているという証拠では?」

 棚を背にした状態で詰めよられて、逃げ場がない。
 優美な顔立ちが真正面にあり、その美しさと香りで背筋が震えてしまう。
 押し返せばよかったのだろうか、それとも「はなれて」と訴えればよかったのか。
 しかし本来番になるべきは彼だというように、本能が俺に動くなと言っている。いくら理性で動こうとしても、体が石像になったように動かない。
 そして俺は迫ってくる唇を俺は受けて入れてしまっていた。
 唇が離れたとき、ユリウス隊長は企むように微笑んだ。

「君と密室でふたりきりになるのは初めてだったな」
「えっ……」

 もしかしてワナに嵌められたのではないか、と気付いた。

「だ、だめです……っ」
「君が奪われたときから、考えていた――」

 ユリウス隊長は正気と狂気の狭間のような光を目に宿していた。

「運命の番である私がうなじを噛めば、他のアルファの番にされてしまったとしても、契約を上書きできるのではないかと」

 俺は唖然として聞いていた。
 そんなのはふざけた願望だ。
 しかし、できるかもしれない、と本能が期待を膨らませている。





つづく
しおりを挟む
※第11回BL大賞に参加中です! 投票して貰えると励みになります!!アプリの方は一覧ページに戻って頂きますと、あらすじの下に投票ボタンがあります。ウェブの方も同様ですが、各ページのタイトル上にも投票ボタンがありますので、そちらをポチっとできます。投票以外でも、感想コメントやエール機能で応援して頂くことも、大変励みになります。応援してくださる温かいお気持ちが創作意欲になりますので、どうぞよろしくお願い致します。
感想 7

あなたにおすすめの小説

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

【完結】乙女ゲーの悪役モブに転生しました〜処刑は嫌なので真面目に生きてたら何故か公爵令息様に溺愛されてます〜

百日紅
BL
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でしたーー。 最後は処刑される運命の悪役モブ“サミール”に転生した主人公。 死亡ルートを回避するため学園の隅で日陰者ライフを送っていたのに、何故か攻略キャラの一人“ギルバート”に好意を寄せられる。 ※毎日18:30投稿予定

事故つがいの夫は僕を愛さない  ~15歳で番になった、オメガとアルファのすれちがい婚~【本編完結】

カミヤルイ
BL
2023.9.19~完結一日目までBL1位、全ジャンル内でも20位以内継続、ありがとうございました! 美形アルファと平凡オメガのすれ違い結婚生活 (登場人物) 高梨天音:オメガ性の20歳。15歳の時、電車内で初めてのヒートを起こした。  高梨理人:アルファ性の20歳。天音の憧れの同級生だったが、天音のヒートに抗えずに番となってしまい、罪悪感と責任感から結婚を申し出た。 (あらすじ)*自己設定ありオメガバース 「事故番を対象とした番解消の投与薬がいよいよ完成しました」 ある朝流れたニュースに、オメガの天音の番で、夫でもあるアルファの理人は釘付けになった。 天音は理人が薬を欲しいのではと不安になる。二人は五年前、天音の突発的なヒートにより番となった事故番だからだ。 理人は夫として誠実で優しいが、番になってからの五年間、一度も愛を囁いてくれたこともなければ、発情期以外の性交は無く寝室も別。さらにはキスも、顔を見ながらの性交もしてくれたことがない。 天音は理人が罪悪感だけで結婚してくれたと思っており、嫌われたくないと苦手な家事も頑張ってきた。どうか理人が薬のことを考えないでいてくれるようにと願う。最近は理人の帰りが遅く、ますます距離ができているからなおさらだった。 しかしその夜、別のオメガの匂いを纏わりつけて帰宅した理人に乱暴に抱かれ、翌日には理人が他のオメガと抱き合ってキスする場面を見てしまう。天音ははっきりと感じた、彼は理人の「運命の番」だと。 ショックを受けた天音だが、理人の為には別れるしかないと考え、番解消薬について調べることにするが……。 表紙は天宮叶さん@amamiyakyo0217

処理中です...