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本編

運命 3

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 そうこうしているうちに、ほかの騎士たちも揃いだした。

「よ、ロイス」
「ミカエル。おはよう」
「相変わらず早着替えだね~」

 俺の一番親しい友人のミカエル・ローデリックだ。
 肌は軽く日焼けしていて、黄金の髪は太陽神のように力強い。瞳は翠の中に金色の色彩がまじっており、万華鏡のようにも、深緑に木漏れ日が差しているようにも見える。
 ミカエルが服を脱ぐと、均等がとれた見事な肉体が現れる。躍動感があり、弾力があって、力をこめると硬くなる。
 ミカエルに比べると、俺は細くてすこし頼りないかもしれない。
 そのとき、何故かミカエルが上半身裸でポーズを取り、腕に力こぶをつくった。

「見惚れてんだろ、触ってもいいんだぜ?」
「ふっ……、言う相手を間違ってる」
「ん~、社交界のご令嬢は喜んでくれるんだけどな」

 学生時代からミカエルは女性にも男性にもよくモテる。
 話ながら着替えてしまい、ミカエルもスカーフを整えた。
 騎士たちは全員、俺に劣らず早着替えの達人である。

「ところで今日から赴任してくる人のうわさ、聞いてる?」

 俺はふと思い出した。

「ユリウス・ハルバード次期伯爵だろう? 王都の伯爵家から来るらしいな」
「隊長になるらしいぜ、俺たちの隊の」
「え、そうなのか」
「前回の御前試合の準優勝者だし、実力はお墨付きってとこだろ」
「へえ……」

 御前試合はトーナメント形式で行う剣の試合だ。
 粒ぞろいといわれる王都の精鋭の中で準優勝だなんてすごい。俺は感心しきっていた。
 王族の覚えもめでたいだろう。近衛騎士にだってなれるだろう。憧れの存在だ。ぜひ剣の手合わせをしてもらいたい。

「エリートコースのヤツらって、功績を積みたくってうずうずしてるからな。こうして地方の基地にわざわざ赴任してきて功績を作りにくるんだよ」

 今の平和な世では功績が積みにくい。そこで地方で経歴や功績を作って出世を目指す、というのはたまに聞く話だった。

「準優勝なのが悔しかった、ってのもありそうだなぁ。偉そうなヤツだったらヤダなー。俺たちの功績が掠めとられたりして」
「大丈夫だろう? 掠めとるようなものなんて」
「今日みたいなちょっとした憲兵との合同訓練でも成功とか失敗とかあるの」
「へえ……」俺はだんだん不安になってきた。
「ま、ロイスは伯爵だし、俺も次期伯爵だ。直接敵に回ることはないな」
「……そうだな」
「いい人だといいんだけどねー。行こうぜ」

 ミカエルは悠々としており、俺ひとり緊張してしまって、何だか余裕の差を見せつけられてしまったみたいだった。


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