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虹の卵編
最終話/卵の中身(後編)
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「ピギャー……!」
甲高い鳴き声と共に、卵の中から生物が産まれ出た。
手のひらサイズの、小さい人型の生物。
宙に浮きながらなおも光を放っている為に、その生物のディティールをはっきりと見て取る事は出来なかった。
肌の色は、白にも透過色にも感じられたが、いずれにしても人間の肌の色ではない。
その鋭い鳴き声にも聞き覚えがなく、ヒロの知っている生物ではない事は明らかだった。
「なに、この生き物……ミクリちゃん、知ってる?」
「ううん。私も知らない……」
センダンとミクリも、その生物を見上げながら呟く。
センダンに至っては、触れてみようと懸命に手を伸ばしているが、高身長のヒロでも届かない高さで浮き続けている為に、全く届いてはいない。
当然ながら人間は空を飛べないし、空を飛ぶ亜人も存在しない。
しかし、眩さの中で浮き続けるその生物の形は、確かに人型である。
まだ見ぬ新生物とでも言うのだろうか。
正体を漠然と考えながら宙を見上げていると、ふと、見上げる自分の顔に降り注ぐ雨量が落ちている事に気が付いた。
視線を卵の中身から上空へとはっきり移動させると、雨雲が流れている。
それも凄まじい速度だ。
絨毯を巻いて回収するかのような勢いで、空の端から一気に雨雲が流れていき、晴天の空と入れ替わっている。
無論、それほどまでに強い風が吹いているわけでもない。
むしろ風は、雨雲が流れるのと並行して弱まっている。
嵐は、瞬く間にその姿を消そうとしていた。
「どういう事なんだ……これじゃまるで……」
ヒロは言葉を途中で切った。
自身の推測に仰天し、その先は即座に言葉にできなかった。
突然の嵐の消失。
人智を越えた症状と言っても差支えない。
これでは。
まるで。
そう……
「……魔法じゃないか」
ヒロの言葉の先は、ミクリの口から零れた。
「そう。魔法です」
ミクリの言葉に答える者がいた。
声は、右手から聞こえてくる。
そちらを向きながら、ヒロは違和感を抱いた。
右手に広がっているのは一面の海のみで、そこには、人がいるはずはないのである。
実際、右を向いても人はいなかった。
その代わりに、人ならざる者が海上に浮いている。
「………!」
ヒロの心臓の鼓動が、急激に高まる。
彼は、その人ならざる者を知っていた。
写真でしか見た事はなかったが、写真に穴があく程何度も見ている。
水のように美しい青い肌をしていて、その肌を羽衣で覆った女性。
今は病床にいるサヨコが、感謝の気持ちを告げる事を熱望している女性。
ヒロが、そして彼の父が追い求めている存在。
「まさか、本当に……み、水の、精霊……?」
その名を口にする事で、背筋を電撃のような衝撃が駆け昇った。
センダンとミクリが、精霊の一言に反応を示したような気配を感じるが、二人の顔を見る余裕はなかった。
水の精霊は、ヒロの言葉には答えない。
その代わり、穏やかに微笑んでみせた。
それだけで、濡れた全身が芯から暖かくなったような気がする。
錯覚なのだろうか。
それとも、これも魔法なのだろうか。
「この子を……私達の新しい子を、ずっと探していました」
水の精霊がそう言って腕を掲げる。
腕の動きが合図となったかのように、卵から生まれた生命は、吸い込まれるようにして彼女の羽衣へと飛んできた。
それを優しく抱きとめると、水の精霊はヒロを一度だけ見渡す。
一方のヒロは、何も喋る事ができずに、水の精霊に目を奪われていた。
聞きたい事は、山程ある。
マナは本当に精霊が生み出しているのか。
人の前に姿を現わさないのは何故なのか。
魔法は、何故廃れていたのか。
虹の卵は、精霊の卵だったのか。
今この時卵が孵ったのは何故なのか。
他にもまだまだ、挙げ連ねればキリがない。
だというのに、そのうちの一言さえも口にする事が出来ない。
精霊が現れたという衝撃に、全てさらわれていた。
「人間よ」
精霊が言葉を続ける。
「今はまだ、貴方がたと再び共存する事は出来ません。
この子が一人前になったその時に……また共に歩きましょう」
精霊が、より高く浮き上がった。
行ってしまう。
瞬時にそう感じ取ったヒロは、ようやく、海際まで弾かれるように駆けながら叫んだ。
「待って……待って下さい!!
水の精霊、貴方には聞きたい事が沢山……!!」
「人間よ」
水の精霊は、ヒロを見下ろしながら反応を示した。
だがその間も、上昇する事を止めようとはしない。
小さく、小さくなっていく。
空に吸い込まれるように浮き上がりながら、水の精霊は優しい言葉を残した。
「新しい子を孵化させてくれたお礼に、貴方達の友人を治癒しました」
「サヨちゃんを……!?」
「戻ったら、友人に伝えて下さい。
貴方の感謝の気持ちは、十分に伝わっていますよ、と……」
精霊が、輝いた。
瞬きをすれば見逃してしまいそうな、一瞬の鋭く尊い耀き。
それと同時に、精霊の浮上速度が急激に増す。
まるで流れ星が空を昇っていくかのように、その姿は瞬時に消えていった。
ほんの僅かな間の事で、改めて呼び止める事もかなわない。
「………」
ヒロ達は、精霊の去った空を見上げ続ける。
精霊が雨雲をかき消した空では、マナがその存在を主張するかのように輝いていた。
◇
その日の晩と翌日の朝、ミクリは囲炉裏部屋で朝食を取らなかった。
サヨコの容体の安定を確認してから帰宅したのが、その日の夕方。
彼女は帰宅してからずっと、自室に篭ってレポートの取りまとめに勤しんでいる。
精霊を、そして魔法を目にしたのだ。そうしたくなる気持ちは、ヒロには十分理解できた。
そもそも、仕事柄、そうするべきなのである。
とはいえ、全く食事を取らないのも、好ましくはない。
翌朝、軽食を盆に載せたヒロがミクリの客室をノックすると、中からは明朗な声で入室を許可する返事が返ってきた。
「ミクリちゃん、おはようー」
挨拶をしながら、中に入る。
ミクリは案の定、机の上に向かっていた。
脇机の上には、昨日運んできた夕食の器が置かれていたが、中身は殆ど食べられていた。
床の上に敷かれた布団は少し乱れていて、睡眠を取った痕跡も見受けられる。
睡眠と休息も適度に取っているようで、ヒロは胸を撫で下ろしながらミクリに近づいた。
「ヒロ。おはよう」
ミクリは顔を起こし、目尻を下げて微笑みながら挨拶を返してくれた。
改めて、この少女は本当に変わったと思う。
その笑顔を満喫しながら、ヒロは机の隅に朝食の盆を置いた。
「これ、朝ご飯ね」
「わざわざありがとう。食べたらレポートの続きを書くよ。もう少しなんだ」
「分かった。終わったら、一緒にサヨちゃんの様子を見に行かない?」
「あ……うん。行く!」
ヒロの誘いに、ミクリは元気良く頷いた。
水の精霊の言葉は事実だった。
昨日の時点で、既にサヨコは意識を取り戻していた。
あれ程高かった熱はすっかり引いてしまい、食事も問題なくできるレベルまで回復していた。
とはいえ、病み上がりの彼女の所に長らく居座るわけにもいかず、ヒロらは早々と撤収している。
その為に、まだサヨコには水の精霊の事を話していない。
水の精霊からの伝言を伝えれば、彼女はどれだけ喜んでくれるだろうか。
その光景を想像すると、この上なく嬉しく思えた。
「ところでヒロ」
「あ、うん?」
「今取りまとめているレポートの件だけれど……魔法について、一つ仮説を立てたんだ。
良かったら、聞いてもらえないかな?」
ミクリの口調は、それ程堅いものではなかった。
それでも、ヒロは居住まいを正しながら頭を下げる。
「僕で良ければ」
「うん。ヒロにこそ聞いて欲しいんだ」
ミクリはそう言いながら、はにかむ。
だが、すぐに卓上のレポートを手に取ってみせた。
「それじゃあ始めるが……まず、魔法の使い方について。
これはやはり、マナ同様、精霊の力によって使えるようになるものだと思うんだ」
「水の精霊も、自分の力が魔法だと言っていたよね」
「そう。だから精霊と魔法が関係している事は確実。
それに加えて、それを根拠付ける理由が、虹の卵にもあるんだ」
「ふむ……?」
予想外の切り口だった。
興味深そうに、上半身を少しだけ前に倒して耳を澄ます。
「魔法は、古の時代にのみ存在したとされている。
そして精霊も、人の前には姿を現そうとしない。
これは、精霊がいないから魔法が使えなくなった、とも解釈できる」
「うん。それは分かる」
「では、なぜ精霊が人前に姿を現さないのか。
……もしかすると、精霊はあの虹の卵を探していて、人前に出るような余裕がなかったのではないだろうか」
「………」
「水の精霊は、あの無色の生命体を『私達の新しい子』と言っていた」
「……そして『探していた』とも言っていたね。なるほど、一致する」
ヒロは思わず、生唾を飲み込んだ。
全身に寒気が走るような感覚さえ覚えた。
そう考えれば、幾つかの謎が解け、そして絡み合う。
太古の世では、人は精霊の力を借りて魔法を使う事が出来た。
しかし、新しい精霊が見つからない事で、精霊は自分達の新しい子を探すのに躍起になり、人の前に姿を現さなくなった。
精霊がいなくなれば、その力を源とする魔法も使えなくなる。
そうして、魔法は世の中から失われていった。
そしてそれは、過去の話だ。
新しい精霊は、卵から孵った。
精霊の悩み事が解決すれば、精霊は再び人との交流を始めるかもしれない。
すれはすなわち、人間の新しい可能性、魔法の再誕に他ならない。
人類は、新たな一歩を踏み出すかもしれないのだ。
「……ミクリちゃん、今更も良い所だけれど、これとんでもない発見だよ」
ヒロの声は擦れている。
表情には、歓喜と驚愕の入り混じった震えがあった。
「魔法が……魔法が、再現できるかもしれないんだね!」
「うん。……でも、それが何時の事になるのかまでは、分からない」
ヒロとは対照的に、ミクリは落ち着き払っていた。
肩を竦め、ちらりとレポートを見やってから、彼女は言葉を続ける。
「精霊は『この子が一人前になった時に、共に歩こう』と言っていた。
それが何時の事になるのか、私には分からない」
「あ……」
「言うまでもなく、人間とは違う生命体だからね。
人間と大差無い十五年を持って一人前となるのか。
それとも一日二日ですぐに生体となるのか。
或いは、百年、千年といった途方もない期間を要するのか……」
「………」
「でも」
ミクリが、背筋を伸ばした。
レポートを卓上に戻し、じっとヒロの目を見つめてくる。
彼女の声は、活力に満ちていた。
「その日は、いつかきっと来る。
その時に混乱が起きないよう、魔法の存在を世に周知させなくちゃいけない。
それが、これからの私の新しい仕事になると思うんだ」
「……うん」
ヒロは、彼女を激励するように力強く同意する。
「でも、それはきっと楽ではない。だから……」
ミクリは、そこで言葉を切った。
溜めを作るというよりは、言い淀んだ様子である。
頬には、微かに赤みが差していた。
その先の言葉を言おうと、何度か口を開いては、言えずに閉ざす。
ヒロが不思議そうな顔をした所で、彼女はようやく小さな声を漏らした。
「だから……仕事に疲れたら……
また、兄花島に……海桶屋に……
ヒロやセンダン、サヨコ、島の皆の所に、遊びに来ても良いかな……?」
言い終えたミクリは、固唾を飲んでヒロを見つめ続けた。
そんな顔をしなくても。
ヒロはつい表情を緩ませる。
そんなもの、答えは決まっている。
でも、それはミクリにとっては大事な確認なのだとすぐに気がついた。
ミクリは、兄花島で触れ合った人達の事を家族のように思っている。
だが、逆に自分がどう思われているのかについては、分からないのだ。
他人の考えなのだから、確信が持てないのは当たり前だ。
それを、確認しようとしているのだ。
ならば、答えよう。
自分の気持ちを、伝えよう。
大事な言葉を、返してあげようではないか。
「もちろん。いつでも帰っておいで」
「……うん! ありがとう、ヒロ!」
ミクリは、センダンのように歯を見せて笑った。
◇
ミクリに朝食を出し終えたヒロは一階に下りたが、センダンの姿が見つからなかった。
朝方にセンダンがみつからない時は、外で日向ぼっこをしている事が多い。
海桶屋の外に出ると、案の定、彼女は晴天の下で海を眺めていた。
「センダンさん、また日向ぼっこですか?」
「おー、ヒロ君。だって気持ち良いじゃないのよ」
センダンは首だけで振り返りながら言う。
尾がブンブンと振られていて、言葉通り気持ちが良さそうだった。
「ミクリちゃん、どうだった?」
「レポートはもう少しで終わるそうです」
「ふむふむ」
「魔法や卵の事、仮説ですが大分まとまりそうですよ」
「そっか。……あ。卵と言えば、私も一つ分からない事があるのよね」
「なんでしょうか?」
「卵が孵った理由よ」
センダンはこめかみに手を当てて振り返り、ヒロを見る。
そう言われれば、その説明はミクリからは受けていなかった。
「絵本の情報だけれど、虹の卵は手にした者の気持ちに応えて孵るものなのよね」
「ええ」
「卵が孵った時のミクリちゃんの感情……あれは大切な人を思う気持ちだわ。
だから、卵はその気持ちに反応して孵ったんだと思うのよ」
「まあ、そうかもしれませんね」
「……でも、ミクリちゃんの前に卵を預かった私達や、
私達が知らない、昔に卵を持っていた人にも、そういう気持ちはあると思うのよ。
だから、なんでミクリちゃんの気持ちにだけ反応したんだろう、って」
「ああ、なるほど」
ヒロは腕を組んで考え込む。
確かに、その点は疑問だ。
ミクリだけ、何か違ったのだろうか。
自分達とミクリの違いを考えるうちに、一つだけ思い当たりが出てきた。
「……あれかな」
「お。なになに?」
「ミクリちゃんは、長年笑わずに感情を抑えていましたよね。
だから、その長年の気持ちが積算していたから、とか」
「ふむ。であれば、辻褄は合うわね」
「それで合っているのかは、分かりませんけどね」
「ま。外れていても良いわよね。
私達にとっては、ミクリちゃんが笑ってくれた事こそが大事なんだから」
センダンは嬉しそうにそう言って、また海を眺めた。
ヒロも、彼女の隣まで歩いて海を見る。
嵐の後のフタナノ海は、子守唄のように静かな波音を立てていた。
「ヒロ君」
センダンが海を見たままで、また声を掛けてくる。
「今度はなんでしょうか?」
「良い事、成功したね」
「ええ」
「今年も、まだまだ良い事があるといいね」
「ええ」
「……もう、春だね」
ヒロは返事をする前に、海桶屋の更に奥にそびえる山を振り返り見た。
冬と嵐から解き放たれた木々は、その生命をアピールするかのように懸命に枝を伸ばしている。
耳を澄ませば、周囲に生えている草花がさわさわと触れ合う音がする。
草花を揺らす風は、生命を包み込むような暖かさに満ちていた。
緑の中には、明るく艶やかに咲く花もぽつぽつと見受けられる。
空では、鳥が駆けている。
羽を大きく羽ばたかせた数羽が連なり、マナの間を縫うようにして駆けている。
自然が、躍動している。
年に四度の季節の移り変わり。
そのうちの一回が、今。
春を迎える為に、自然が燦燦と鼓動しているような気がする。
「……春ですね」
ヒロは、風を掴むように片手を上げながら答えた。
甲高い鳴き声と共に、卵の中から生物が産まれ出た。
手のひらサイズの、小さい人型の生物。
宙に浮きながらなおも光を放っている為に、その生物のディティールをはっきりと見て取る事は出来なかった。
肌の色は、白にも透過色にも感じられたが、いずれにしても人間の肌の色ではない。
その鋭い鳴き声にも聞き覚えがなく、ヒロの知っている生物ではない事は明らかだった。
「なに、この生き物……ミクリちゃん、知ってる?」
「ううん。私も知らない……」
センダンとミクリも、その生物を見上げながら呟く。
センダンに至っては、触れてみようと懸命に手を伸ばしているが、高身長のヒロでも届かない高さで浮き続けている為に、全く届いてはいない。
当然ながら人間は空を飛べないし、空を飛ぶ亜人も存在しない。
しかし、眩さの中で浮き続けるその生物の形は、確かに人型である。
まだ見ぬ新生物とでも言うのだろうか。
正体を漠然と考えながら宙を見上げていると、ふと、見上げる自分の顔に降り注ぐ雨量が落ちている事に気が付いた。
視線を卵の中身から上空へとはっきり移動させると、雨雲が流れている。
それも凄まじい速度だ。
絨毯を巻いて回収するかのような勢いで、空の端から一気に雨雲が流れていき、晴天の空と入れ替わっている。
無論、それほどまでに強い風が吹いているわけでもない。
むしろ風は、雨雲が流れるのと並行して弱まっている。
嵐は、瞬く間にその姿を消そうとしていた。
「どういう事なんだ……これじゃまるで……」
ヒロは言葉を途中で切った。
自身の推測に仰天し、その先は即座に言葉にできなかった。
突然の嵐の消失。
人智を越えた症状と言っても差支えない。
これでは。
まるで。
そう……
「……魔法じゃないか」
ヒロの言葉の先は、ミクリの口から零れた。
「そう。魔法です」
ミクリの言葉に答える者がいた。
声は、右手から聞こえてくる。
そちらを向きながら、ヒロは違和感を抱いた。
右手に広がっているのは一面の海のみで、そこには、人がいるはずはないのである。
実際、右を向いても人はいなかった。
その代わりに、人ならざる者が海上に浮いている。
「………!」
ヒロの心臓の鼓動が、急激に高まる。
彼は、その人ならざる者を知っていた。
写真でしか見た事はなかったが、写真に穴があく程何度も見ている。
水のように美しい青い肌をしていて、その肌を羽衣で覆った女性。
今は病床にいるサヨコが、感謝の気持ちを告げる事を熱望している女性。
ヒロが、そして彼の父が追い求めている存在。
「まさか、本当に……み、水の、精霊……?」
その名を口にする事で、背筋を電撃のような衝撃が駆け昇った。
センダンとミクリが、精霊の一言に反応を示したような気配を感じるが、二人の顔を見る余裕はなかった。
水の精霊は、ヒロの言葉には答えない。
その代わり、穏やかに微笑んでみせた。
それだけで、濡れた全身が芯から暖かくなったような気がする。
錯覚なのだろうか。
それとも、これも魔法なのだろうか。
「この子を……私達の新しい子を、ずっと探していました」
水の精霊がそう言って腕を掲げる。
腕の動きが合図となったかのように、卵から生まれた生命は、吸い込まれるようにして彼女の羽衣へと飛んできた。
それを優しく抱きとめると、水の精霊はヒロを一度だけ見渡す。
一方のヒロは、何も喋る事ができずに、水の精霊に目を奪われていた。
聞きたい事は、山程ある。
マナは本当に精霊が生み出しているのか。
人の前に姿を現わさないのは何故なのか。
魔法は、何故廃れていたのか。
虹の卵は、精霊の卵だったのか。
今この時卵が孵ったのは何故なのか。
他にもまだまだ、挙げ連ねればキリがない。
だというのに、そのうちの一言さえも口にする事が出来ない。
精霊が現れたという衝撃に、全てさらわれていた。
「人間よ」
精霊が言葉を続ける。
「今はまだ、貴方がたと再び共存する事は出来ません。
この子が一人前になったその時に……また共に歩きましょう」
精霊が、より高く浮き上がった。
行ってしまう。
瞬時にそう感じ取ったヒロは、ようやく、海際まで弾かれるように駆けながら叫んだ。
「待って……待って下さい!!
水の精霊、貴方には聞きたい事が沢山……!!」
「人間よ」
水の精霊は、ヒロを見下ろしながら反応を示した。
だがその間も、上昇する事を止めようとはしない。
小さく、小さくなっていく。
空に吸い込まれるように浮き上がりながら、水の精霊は優しい言葉を残した。
「新しい子を孵化させてくれたお礼に、貴方達の友人を治癒しました」
「サヨちゃんを……!?」
「戻ったら、友人に伝えて下さい。
貴方の感謝の気持ちは、十分に伝わっていますよ、と……」
精霊が、輝いた。
瞬きをすれば見逃してしまいそうな、一瞬の鋭く尊い耀き。
それと同時に、精霊の浮上速度が急激に増す。
まるで流れ星が空を昇っていくかのように、その姿は瞬時に消えていった。
ほんの僅かな間の事で、改めて呼び止める事もかなわない。
「………」
ヒロ達は、精霊の去った空を見上げ続ける。
精霊が雨雲をかき消した空では、マナがその存在を主張するかのように輝いていた。
◇
その日の晩と翌日の朝、ミクリは囲炉裏部屋で朝食を取らなかった。
サヨコの容体の安定を確認してから帰宅したのが、その日の夕方。
彼女は帰宅してからずっと、自室に篭ってレポートの取りまとめに勤しんでいる。
精霊を、そして魔法を目にしたのだ。そうしたくなる気持ちは、ヒロには十分理解できた。
そもそも、仕事柄、そうするべきなのである。
とはいえ、全く食事を取らないのも、好ましくはない。
翌朝、軽食を盆に載せたヒロがミクリの客室をノックすると、中からは明朗な声で入室を許可する返事が返ってきた。
「ミクリちゃん、おはようー」
挨拶をしながら、中に入る。
ミクリは案の定、机の上に向かっていた。
脇机の上には、昨日運んできた夕食の器が置かれていたが、中身は殆ど食べられていた。
床の上に敷かれた布団は少し乱れていて、睡眠を取った痕跡も見受けられる。
睡眠と休息も適度に取っているようで、ヒロは胸を撫で下ろしながらミクリに近づいた。
「ヒロ。おはよう」
ミクリは顔を起こし、目尻を下げて微笑みながら挨拶を返してくれた。
改めて、この少女は本当に変わったと思う。
その笑顔を満喫しながら、ヒロは机の隅に朝食の盆を置いた。
「これ、朝ご飯ね」
「わざわざありがとう。食べたらレポートの続きを書くよ。もう少しなんだ」
「分かった。終わったら、一緒にサヨちゃんの様子を見に行かない?」
「あ……うん。行く!」
ヒロの誘いに、ミクリは元気良く頷いた。
水の精霊の言葉は事実だった。
昨日の時点で、既にサヨコは意識を取り戻していた。
あれ程高かった熱はすっかり引いてしまい、食事も問題なくできるレベルまで回復していた。
とはいえ、病み上がりの彼女の所に長らく居座るわけにもいかず、ヒロらは早々と撤収している。
その為に、まだサヨコには水の精霊の事を話していない。
水の精霊からの伝言を伝えれば、彼女はどれだけ喜んでくれるだろうか。
その光景を想像すると、この上なく嬉しく思えた。
「ところでヒロ」
「あ、うん?」
「今取りまとめているレポートの件だけれど……魔法について、一つ仮説を立てたんだ。
良かったら、聞いてもらえないかな?」
ミクリの口調は、それ程堅いものではなかった。
それでも、ヒロは居住まいを正しながら頭を下げる。
「僕で良ければ」
「うん。ヒロにこそ聞いて欲しいんだ」
ミクリはそう言いながら、はにかむ。
だが、すぐに卓上のレポートを手に取ってみせた。
「それじゃあ始めるが……まず、魔法の使い方について。
これはやはり、マナ同様、精霊の力によって使えるようになるものだと思うんだ」
「水の精霊も、自分の力が魔法だと言っていたよね」
「そう。だから精霊と魔法が関係している事は確実。
それに加えて、それを根拠付ける理由が、虹の卵にもあるんだ」
「ふむ……?」
予想外の切り口だった。
興味深そうに、上半身を少しだけ前に倒して耳を澄ます。
「魔法は、古の時代にのみ存在したとされている。
そして精霊も、人の前には姿を現そうとしない。
これは、精霊がいないから魔法が使えなくなった、とも解釈できる」
「うん。それは分かる」
「では、なぜ精霊が人前に姿を現さないのか。
……もしかすると、精霊はあの虹の卵を探していて、人前に出るような余裕がなかったのではないだろうか」
「………」
「水の精霊は、あの無色の生命体を『私達の新しい子』と言っていた」
「……そして『探していた』とも言っていたね。なるほど、一致する」
ヒロは思わず、生唾を飲み込んだ。
全身に寒気が走るような感覚さえ覚えた。
そう考えれば、幾つかの謎が解け、そして絡み合う。
太古の世では、人は精霊の力を借りて魔法を使う事が出来た。
しかし、新しい精霊が見つからない事で、精霊は自分達の新しい子を探すのに躍起になり、人の前に姿を現さなくなった。
精霊がいなくなれば、その力を源とする魔法も使えなくなる。
そうして、魔法は世の中から失われていった。
そしてそれは、過去の話だ。
新しい精霊は、卵から孵った。
精霊の悩み事が解決すれば、精霊は再び人との交流を始めるかもしれない。
すれはすなわち、人間の新しい可能性、魔法の再誕に他ならない。
人類は、新たな一歩を踏み出すかもしれないのだ。
「……ミクリちゃん、今更も良い所だけれど、これとんでもない発見だよ」
ヒロの声は擦れている。
表情には、歓喜と驚愕の入り混じった震えがあった。
「魔法が……魔法が、再現できるかもしれないんだね!」
「うん。……でも、それが何時の事になるのかまでは、分からない」
ヒロとは対照的に、ミクリは落ち着き払っていた。
肩を竦め、ちらりとレポートを見やってから、彼女は言葉を続ける。
「精霊は『この子が一人前になった時に、共に歩こう』と言っていた。
それが何時の事になるのか、私には分からない」
「あ……」
「言うまでもなく、人間とは違う生命体だからね。
人間と大差無い十五年を持って一人前となるのか。
それとも一日二日ですぐに生体となるのか。
或いは、百年、千年といった途方もない期間を要するのか……」
「………」
「でも」
ミクリが、背筋を伸ばした。
レポートを卓上に戻し、じっとヒロの目を見つめてくる。
彼女の声は、活力に満ちていた。
「その日は、いつかきっと来る。
その時に混乱が起きないよう、魔法の存在を世に周知させなくちゃいけない。
それが、これからの私の新しい仕事になると思うんだ」
「……うん」
ヒロは、彼女を激励するように力強く同意する。
「でも、それはきっと楽ではない。だから……」
ミクリは、そこで言葉を切った。
溜めを作るというよりは、言い淀んだ様子である。
頬には、微かに赤みが差していた。
その先の言葉を言おうと、何度か口を開いては、言えずに閉ざす。
ヒロが不思議そうな顔をした所で、彼女はようやく小さな声を漏らした。
「だから……仕事に疲れたら……
また、兄花島に……海桶屋に……
ヒロやセンダン、サヨコ、島の皆の所に、遊びに来ても良いかな……?」
言い終えたミクリは、固唾を飲んでヒロを見つめ続けた。
そんな顔をしなくても。
ヒロはつい表情を緩ませる。
そんなもの、答えは決まっている。
でも、それはミクリにとっては大事な確認なのだとすぐに気がついた。
ミクリは、兄花島で触れ合った人達の事を家族のように思っている。
だが、逆に自分がどう思われているのかについては、分からないのだ。
他人の考えなのだから、確信が持てないのは当たり前だ。
それを、確認しようとしているのだ。
ならば、答えよう。
自分の気持ちを、伝えよう。
大事な言葉を、返してあげようではないか。
「もちろん。いつでも帰っておいで」
「……うん! ありがとう、ヒロ!」
ミクリは、センダンのように歯を見せて笑った。
◇
ミクリに朝食を出し終えたヒロは一階に下りたが、センダンの姿が見つからなかった。
朝方にセンダンがみつからない時は、外で日向ぼっこをしている事が多い。
海桶屋の外に出ると、案の定、彼女は晴天の下で海を眺めていた。
「センダンさん、また日向ぼっこですか?」
「おー、ヒロ君。だって気持ち良いじゃないのよ」
センダンは首だけで振り返りながら言う。
尾がブンブンと振られていて、言葉通り気持ちが良さそうだった。
「ミクリちゃん、どうだった?」
「レポートはもう少しで終わるそうです」
「ふむふむ」
「魔法や卵の事、仮説ですが大分まとまりそうですよ」
「そっか。……あ。卵と言えば、私も一つ分からない事があるのよね」
「なんでしょうか?」
「卵が孵った理由よ」
センダンはこめかみに手を当てて振り返り、ヒロを見る。
そう言われれば、その説明はミクリからは受けていなかった。
「絵本の情報だけれど、虹の卵は手にした者の気持ちに応えて孵るものなのよね」
「ええ」
「卵が孵った時のミクリちゃんの感情……あれは大切な人を思う気持ちだわ。
だから、卵はその気持ちに反応して孵ったんだと思うのよ」
「まあ、そうかもしれませんね」
「……でも、ミクリちゃんの前に卵を預かった私達や、
私達が知らない、昔に卵を持っていた人にも、そういう気持ちはあると思うのよ。
だから、なんでミクリちゃんの気持ちにだけ反応したんだろう、って」
「ああ、なるほど」
ヒロは腕を組んで考え込む。
確かに、その点は疑問だ。
ミクリだけ、何か違ったのだろうか。
自分達とミクリの違いを考えるうちに、一つだけ思い当たりが出てきた。
「……あれかな」
「お。なになに?」
「ミクリちゃんは、長年笑わずに感情を抑えていましたよね。
だから、その長年の気持ちが積算していたから、とか」
「ふむ。であれば、辻褄は合うわね」
「それで合っているのかは、分かりませんけどね」
「ま。外れていても良いわよね。
私達にとっては、ミクリちゃんが笑ってくれた事こそが大事なんだから」
センダンは嬉しそうにそう言って、また海を眺めた。
ヒロも、彼女の隣まで歩いて海を見る。
嵐の後のフタナノ海は、子守唄のように静かな波音を立てていた。
「ヒロ君」
センダンが海を見たままで、また声を掛けてくる。
「今度はなんでしょうか?」
「良い事、成功したね」
「ええ」
「今年も、まだまだ良い事があるといいね」
「ええ」
「……もう、春だね」
ヒロは返事をする前に、海桶屋の更に奥にそびえる山を振り返り見た。
冬と嵐から解き放たれた木々は、その生命をアピールするかのように懸命に枝を伸ばしている。
耳を澄ませば、周囲に生えている草花がさわさわと触れ合う音がする。
草花を揺らす風は、生命を包み込むような暖かさに満ちていた。
緑の中には、明るく艶やかに咲く花もぽつぽつと見受けられる。
空では、鳥が駆けている。
羽を大きく羽ばたかせた数羽が連なり、マナの間を縫うようにして駆けている。
自然が、躍動している。
年に四度の季節の移り変わり。
そのうちの一回が、今。
春を迎える為に、自然が燦燦と鼓動しているような気がする。
「……春ですね」
ヒロは、風を掴むように片手を上げながら答えた。
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毎週の楽しみです。
新章も始まったのでまた1話から読みなおそうと思います。
主人公が可愛くてとてもほんわかして面白かったです。読み応えありました。
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