燦燦さんぽ日和

加藤泰幸

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虹の卵編

第二十五話/センダンが休んだ日(後編)

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 三月は、献立に少しばかり苦労する時期である。
 旬の魚介類は、決して少なくはない。
 アサリにハマグリ、ヤリイカ、ニシンにマダイに、サワラ等も美味しい時期だ。
 問題なのは、パンチ力。
 宿の料理のメインディッシュとして食べるには、味はともかく、満足度に欠ける魚が多いのである。
 結果として、この時期はマダイを取り扱う事が多い。
 今日の宿泊客は、全員初めての客なので、過去の料理との重複を気にする必要はなかった。
 それに、ヒロも扱い慣れている魚の為、調理にそれ程時間を要さないという利点もある。


 この日は瑞々しい野菜も多く手に入った為に、鯛の柚子鍋をこしらえる事にした。
 無論、まだ陽も暮れていないうちに煮るわけにもいかないので、今できる事は食材の準備が主だ。
 まずは野菜を全部刻んでしまう。
 長ネギ、青ネギ、春菊、白菜、ニンジン、シイタケ、エノキダケ。それから忘れず柚子。
 まな板で台所の音を奏でながら、何の問題もなく全部切ってしまう。
 鯛の柚子鍋の本番は、この次だ。

「ヒロ。鯛はお前が捌くか?」
 同じく野菜を切り終えたウメエがそう聞いてくる。
 ウメエが捌いた方が早いし、綺麗に切れる。
 それでもそう聞いてくるのは、せっかくなので経験しておくか、という事だろう。
 過去にも何度か作った事がある料理だが、だからといって完全に自分のものにしたわけではない。
 ヒロが頷いて返事をすると、ウメエは真鯛が入ったザルを寄越し、自分は海老やハマグリの調理に取り掛かった。




「さてと」
 一つ大きな息を吐いて、眼下の鯛を見る。
 鱗は事前にゴウの店で削られているので、一番面倒な作業はせずに済む。
 まずはエラを切り落とし、次に腹に包丁を入れた。
 透き通るような身を見ていると、思わず、鍋の中で煮立つ切り身を連想してしまった。


 食材を芯まで暖めるくつくつという音。

 鼻を突き抜けるような柚子の香り。

 鍋の中に隙間なく詰められた新鮮な食材。

 そして、それを囲む人々と賑やかな食卓。

 昼食を食べて間もないのに、腹が減り始めた気さえする。


「……おっと」
 思わず、空いている手で自分の頬を叩いて正気に戻った。
 調理は、時としてこれがあるから困る。

 気を取り直して、腹の中から丁寧に内臓を取り出せば、もう後はそれ程難しくはない。
 頭と尾がちぎれないように三枚におろして、ひと段落である。
 後は味をつけて、身を食べやすい大きさに切るだけ。
 それを三組分、すなわち三匹捌けば、鯛の調理は終了となる。





「そっちはどうだ?」
 ウメエが様子を見に来た。
 答える前にウメエの調理台を覗いてみれば、腸が除かれた海老と、砂出しの最中であるハマグリが置かれている。
 ヒロが一匹片付けないうちに、自身の作業を殆ど終えているのだ。
 内心では舌を巻きながら、ヒロは肩を竦めてみせる。

「まだまだ、これからだよ」
「そうかい」
 自分で聞いておきながら、ウメエは興味がなさそうに鼻息を漏らした。
 付近にある椅子にどっしりと腰を下ろし、珍しく温和な表情でヒロを見上げてくる。
「なあ、ヒロ」
「うん?」
「最近、仕事は順調か?」
「順調だと思うよ。昨年の竜伐祭から、お客様は増えているし」
「いやぁ、そういう事ではない」
 ウメエがゆっくりと告げる。
 普段から早口気味の祖母にしては、随分と落ち着いた口ぶりだ。
 ヒロは包丁をまな板に置いて、ウメエに向き直った。



「じゃあ、どういう事? 鯛の事ならまだまだだよ」
「その事でもない。お前の気持ちの事だ」
「気持ち……?」
 ウメエの言葉を繰り返しながら、言葉の意味を考える。

 要するに、仕事には慣れたか、楽しいか、という事を聞かれているのだろうか。
 だとしたら、随分と珍しい質問だ。
 これまでウメエから、仕事に対する個人的な感想を聞かれた事はなかった。
 これでも、自分の事を気にかけてくれているのだろうか。
 そうであれば、幸せな事だ。
 普段から聞かれない事等、どうでも良い。
 今、こうして聞かれているだけで、ヒロは胸が暖かくなった。



「……うん。楽しいよ」
 ヒロは本音を口にした。
「たとえ一日限りのお客様でも、充実した時間を過ごしてもらえるように取り組む仕事は、やり甲斐があるよ」
「ふむ」
「職場環境も良いしね。ゴウ君のお店は良い魚を提供してくれるし、
 ベラミさんのいるギルドとも、観光面で連携が取れている。
 困った時には、今日みたいにお婆ちゃんや周りの人が助けてくれる。
 お給料は、ちょっとばかり少ないけれどね」
「まあ、そうじゃな」
「それに……センダンさんがいる」
 そう言って、センダンの顔を思い出す。
 浮かんできた顔は、腹痛に歪む顔だったが、とにかく思い出す。



「自分でも正反対な性格だと思うけれど、センダンさんとは不思議と馬が合うよ。
 それに、一緒に働いていると、元気を分けて貰っている気がする。
 一緒に長く暮らしているからかな。家族みたいな気さえするよ」
 それも、本音だった。
 彼女の存在は、いつの間にか、自然なものにさえ感じられる。
 こうして口にするのは少々恥ずかしいが、それでも胸を張って言えた。

「……そうじゃな。ワシもあの子の近くにいると、若返った気がする」
 ウメエが、口の端をにやりと歪ませる。
 ウメエとセンダンが、好印象を抱きあっているのは、なんだか嬉しかった。

「楽しい事が好きな人だから、無意識のうちに、その楽しさを周囲にも振りまいているんだろうね」
「まあ、そんな所じゃろうな」
 ウメエはそう言って立ち上がった。
 緩慢な動きで、壁の向こうにあるセンダンの部屋の方をまた向く。

 五秒か、十秒か、それなりの時間、祖母はそうしてセンダンがいる方を見続けた。
 早く元気になってほしい、とでも思っているのだろうか。
 その気持ちは、ヒロも同様である。
 センダンの無駄な元気は、自分にとっては、無駄だけれども必要な元気になっていた。
 そう感じるようになったのは、いつ頃からだろうか。



「……ヒロ。魚はよ捌かんかい」
 ヒロの方を見ずに、背中越しにウメエが言う。

「あ、うん」
 ヒロは、癖になっている間の抜けた返事を返した。







 ◇







 夕食の配膳を終えたヒロは、フロントで待機する事にした。
 夜の仕事は、フロント業務の他にも、共有区画の掃除、食器の回収と皿洗い、それに朝食の仕込みが残っている。
 だが、夕食を作り終えたウメエが祖父の介護で帰宅した為に、普段同様に残りの仕事を簡単に捌くのは困難だ。
 とりあえずは人が欠かせないフロントに就いて、この後の仕事の順序をノート上で整理する。

「ええと……食器の回収は不可欠だけれど……
 皿洗いと仕込みは、時間をずらしてフロント受付終了後にすればなんとかなるか」
 ぶつぶつと呟きながら、リストアップした作業の横に時刻を刻む。
「掃除は……騒がしくなるかもしれないし、明日早起きしてやろうかな。
 ただ、僕が夕食を食べる時間はないか。
 センダンさんがいないと、随分としんどくなるなあ」
「あ。やっぱりセンダンさん、休んでるのか」
「!?」
 突然、男の声がした。
 びっくりしたヒロが顔を上げると、予想もしていなかった者が三名、そこにはいた。
 サヨコとベラミ、そして声の主のゴウである。
 皆、土間で靴を脱いでフロントの中にまで入ってきている。
 ヒロはそれに全く気がつかなかった。




「皆、いつの間に入ってきたの?」
「土間から何度も声かけたぞ。お前が熱心に書き物していて気がつかなかっただけだ」
 ゴウがそう言うと、左右のベラミとサヨコも同調して頷く。
 ヒロは酷く赤面しながら、ノートを畳んで受付台の隅に移した。


「えっと……こんばんわ」
「おう」
「で、三人揃って、一体どうしたの?」
「どうって、センダンさんの様子を見に来たんだよ。体を壊したんだろ?」
「そうだけれど……」
 ヒロはきょとんとした表情で、三人の顔を見回す。
 ゴウの店で魚を買った時にはその事を話していないし、他の二人とは今日は顔も合わせていない。
 どうしてその事を知っているのだろうと不思議に思っていると、意を察したのか、サヨコが一歩前に出た。


「ウメエさんが、ついさっき、私達の家に来て教えてくれたのよ」
「お婆ちゃんが?」
 意外な名前が出てきた。
 帰宅する途中で、寄り道して伝えてくれたのだろう。

「で、センダンさんの様子はどうなの?」
「センダンさんが休んでいると、お前も大変だろうしな……」
「海桶屋さんも活気がなくなっちゃうよねぇー。それどころか、ただ店員さんが怖いだけのお宿になっちゃうよー」
「………」
 ヒロはもう一度、今度は三人をしっかりと観察するつもりで顔を見回す。

 サヨコは、不安の色を明確に浮かばせていた。
 ゴウも、サヨコ程はっきりと心配はしていないが、真剣な目付きをしている。
 ベラミだけは、いつも通りの眠そうな顔付きだ。
 でも、彼の猫耳は、過敏に店奥の音を聞き取ろうとしている。

 皆、そこまでセンダンの事を心配してくれていたのだ。
 まるで自分が心配してもらったかのように、ヒロは嬉しくなった。





「……皆、ありがとう。
 花粉症はどうしようもないけれど、腹痛はもうじき治るんじゃないかな。
 今日はお客様もいるから、私用で中に入ってもらうのはまずいけれど、皆が来てくれた事は伝えておくよ」
「そうかい。それじゃー……」
 ヒロの言葉に反応したのはベラミだった。
 よく見れば、彼は手に紙袋を持っていた。
 片手でも持てるサイズの紙袋だったが、彼がそれを受付台の上に置くと、ドスン、という鈍い音がした。
 中身は、それなりに重い物のようである。


「これ、僕達からのお見舞いの品だよー」
「お前からセンダンさんに渡しといてくれよ」
「急だったから、家にあるような物しか持ってこられなかったわ。ごめんね」
「お見舞いまで……わざわざありがとう」
 三人に深々と頭を下げる。
 感謝の度合いを示すように、長く下げ続けた頭をゆっくりと起こすと、眼前に紙袋がもう一つ増えていた。

「……こっちは?」
「これはヒロちゃんに。自分のご飯を用意する暇もないだろうと思って。
 菓子パンしか用意できなかったけれど、それでも良ければ」
 サヨコが、そう言って小さく微笑んだ。
 何から何まで、痛み入るという他ない。
 改めて感謝の言葉を述べようと、ヒロは口を開きかける。



 ぐぎゅ~~~っ



 だが、それよりも一瞬早く、ヒロの胃袋が返事をした。
 四人とも、思わず、狐につままれるような表情を浮かべる。
 一瞬の沈黙。
 その沈黙が、誰からともなく立てた笑い声によって破られるのは、ほんの数秒後の事であった。







 ◇





 

 フロント受付終了後、ヒロは残務に移る前にセンダンの部屋をノックした。
 入室許可の言葉が聞こえてきたので中に入ると、どてらを纏ったセンダンが布団から抜け出そうとしていた。

「ああ、無理しないで大丈夫ですよ」
 手を前に突き出してそれを制する。
 センダンは小難しい表情をしたが、結局は立ち上がらずに、上半身を起こすに留めてくれた。

 彼女の顔色は少々マシになっているが、口にはマスクを付けている。
 やはり、花粉症は短期間で治せるものではないようだ。
 これは、もう暫くウメエに助けてもらわないといけないかもしれない。
 そんな事を考えながら、センダンの傍で、足を広げ気味で正座する。



「ヒロ君、今日はごめんね」
 先にセンダンが謝ってきた。
「何言ってるんですか。体調を崩した時くらい、しっかり休まないと」
「でもさあ」
「それに、今更しおらしくなるなんて、ガラじゃないでしょうに」
「むぅー。でもヒロ君だって大変でしょう?」
「……家族みたいなものなんですから、こういう時くらい、頼って下さい」
 言っている途中で恥ずかしくなって、視線をつい外してしまう。
 だが、それを言葉にせずにはいられなかった。
 ウメエや、ゴウらと話した事で、センダンの掛け替えのなさを再認識したからかもしれない。

「……そうね。そうさせてもらうわ」
 センダンの返事は、どこか弾んでいるように聞こえた。
 彼女から視線を外しているので、その表情まで読み取る事はできない。
 だが、気分を害したような事はなさそうである。




「ところで、病気の調子はどうですか?」
 先程の発言を誤魔化すように尋ねる。
「腹痛は、もう大分良くなったかな。一晩眠れば完治すると思うわ」
 センダンは淡々と言う。
 どうやら、無理はしていないようだ。

「花粉症の方は」
「そっちは相変わらずねえ。仕事、どうしようかしら」
「無理だけはしないで下さいね。食欲は?」
「多少はあるけれど、今日は物食べるの止めとくわ」
 それが無難だろう。
 サヨコから貰った菓子パンを、センダン用にと一つ残していたが、それを勧めるのは止める。
 その代わりに、三人から貰った見舞いの品入りの紙袋を差し出した。


「あら、これは何?」
「ゴウ君と、サヨちゃん、あとベラミさんがお見舞いに来たんです。
 これはそのお見舞いだそうですよ」
「へぇー。治ったらお礼しなくちゃね。早速開けてみるわ」
 センダンは嬉しそうにそう言って紙袋を開封し、中に手を入れた。
 ヒロは、中には何が入っているのか見ていないし、聞いてもいない。
 中身はヒロも気になっていたので、身を乗り出すようにして紙袋を覗く。





「まずは……ああ。ああ」
 センダンの声が途端に曇る。
 中から取り出されたのは、パック詰めの餅だった。
 誰からのお見舞いなのか、一目瞭然の一品である。
「……治ったら、食べたらどうです?」
「まあ、味は悪くないからねえ」
 乾いた笑いを浮かべながら、彼女は餅パックを畳の上に置いた。



「今度は……あ。これは助かるわ」
 次に取り出されたのは、花粉症薬のラベルが貼られた小瓶だった。
 開封済みの市販薬だが、中身はまだ十分入っている。
「これは、ゴウ君かな。それともサヨちゃんでしょうかね」
「この現実的なチョイスはゴウ君じゃないかなあ」
「そう言われれば、そうかもしれませんね」
「薬を買いに行ってもらう暇のなかったし、助かるわ。寝る前に飲んでおこっと」
 餅パックの隣に、小瓶が置かれる。



「それじゃ、残るはサヨコちゃんからの品ね」
 センダンがそう言いながら紙袋に手を入れるが、すぐに怪訝な顔つきになった。
 すぐに手を戻して中身を覗き込んでいるが、ヒロからは中が見えない。
 ヒロに見えるのはセンダンの表情だけだが、その表情はすぐに笑顔に満ち溢れていった。

「センダンさん、何が入っていたんですか?」
「重いと思ったら、どうりでどうりで。これよ。こーれ」
 センダンがまた手を入れて、中身を取り出す。

 出てきたのは、手のひらサイズの鉢に植えられた二輪のタンポポだった。
 茎は緩やかな弧を描いて、力強く天を目指している。
 花びらは鮮やかな色合いで、存在を主張するように精一杯横へと広がっていた。



「タンポポ……」
「外に出られない分、目を楽しませようという心遣いなんでしょうね。
 私が駄目なのはスギだから、タンポポなら問題ないし」
「なるほど。可愛らしくて良いですね」
 
 そう言いながら、ふと、ヒロは思う。
 いつまでも続くような気さえしていた寒風の季節は、もう間もなく終わる。
 そして、この花が咲く季節が訪れつつある。
 センダンの花粉症も、見方を変えればその兆しといえるかもしれない。







「……もうすぐだね」
 センダンが明るい声で呟いた。
 どうやら、同じ事を考えていたようである。
 ヒロは何も言わずに、こっくりと頷いて笑った。





 ――もうじき。

 春は、もうじきやってくる。
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