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虹の卵編
第十六話/人形使いの音(前編)
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十二ヶ月の中で、ヒロが最も好む十月がやってきた。
この月は、なんといっても過ごし易い。
夏の残り香というには少々過酷な残暑も完全に姿を消しており、外を歩いても日差しに苦しめられる事がない。
また、冬の厳しい寒さにもまだまだ至らない、気候の挟間となるオアシスのような月である。
木々も、色とりどりの葉や花、実を纏い、兄花島では特に、特産物である蜜柑の色どりが美しい。
緑一色であった島の自然が、にわかに艶やかさを帯びてくる季節でもあるのだ。
インドア派のヒロでも、その様な気持ちの良い環境ともあれば、散歩の一つや二つ、やってみようという気にもなる。
だが、この日のヒロには、散歩を楽しむような時間はなかった。
もっとも、それは本来、好ましい事なのである。
「フン~、フンフフフン~、っと♪」
ヒロの鼻歌が海桶屋の厨房に響く。
それはすなわち、ヒロが包丁を握っている事を意味していた。
鼻歌に混じって、まな板がリズミカルに叩かれる音も聞こえている。
なんと、この日の海桶屋には二組の予約客が入っている。
いずれもロビン在住の家族連れで、初めて海桶屋を利用する客だ。
予約は今日に限った話ではなく、この所ほぼ連日、客室が複数埋まっている。
先日の竜伐祭が良いアピールになったのか、あれ以来、兄花島への観光客が多いのだ。
となれば、当然海桶屋の利用客も増えるという仕組みである。
料理の最中には鼻歌を歌うのが癖になっているヒロであるが、
最近の彼の鼻歌には、商売繁盛による機嫌の良さも幾分含まれていた。
「ヒロ君、ご機嫌さんねえ」
厨房の入口からセンダンが顔を覗かせた。
この時間の彼女はフロントで待機しているのだが、
厨房とフロントは隣接している事もあり、暇な時にはよくヒロの様子を見に来ている。
「ん、なにがですか?」
ヒロは振り返らず、料理を進めながら返事をした。
「鼻歌。フロントまで聞こえてきてるわよ」
「いやあ、だって、ですよ」
「うんうん。その気持ちは分かるわあ。
そのヒロ君お待ちかねの大道芸人さん、もうすぐ来る時間よ」
「あれっ、もうそんな時間でしたっけか」
センダンの言葉に、ヒロはとぼけた声を出す。
同時に、初めて見る事になる大道芸というものに、胸が踊るのが自覚できた。
事の始まりは、やはりセンダンの『良い事』であった。
この所増えている新規客にリピーターになってもらうべく、
従来のサービスに加えて、何らかの余興を披露する事を、センダンが提案したのである。
今回のセンダンの提案にはヒロも同意した。
ただし、それならそれで、決めなくてはならない事がある。
余興を披露するとして、具体的には何を披露するのかという点である。
ナポリが宿泊した時に躍った舞ではどうか、とセンダンは主張したが、今回は子供も見る可能性がある。
ともすれば、もっと分かりやすいものが良いかもしれない。
センダンの舞を却下し、不満げな彼女をなだめつつ弾きだした答えは『餅は餅屋』だった。
すなわち、大道芸協会に所属するプロの大道芸人を呼ぶ事にしたのである。
「センダンさん、芸人さんの選択は譲ってくれませんでしたよね」
ヒロはセンダンをジト目で見ながら言う。
「当たり前じゃない。私の代わりにお客様を楽しませてくれる人なんだから、私が選ぶわ」
「予算内の人選だから構いませんけれど……で、どんな人でしたっけか」
「ウィグ・キーシさん。パンフレットによると、男性の人形使いさんよ」
「人形、ですか?」
「うん。大陸全土を旅して、各地の人形を使った劇を学んでいる最中なんだって。
凄いよね。全土だよ、全土!」
センダンがぴょんぴょん飛び跳ねながら言う。
相変わらずの派手な仕草だが、彼女の言う事が本当であれば、凄い大道芸人なのかもしれない。
「面白いと良いですね」
「安心して! 絶対面白い!」
力強い言葉である。
そう言い放った後で、彼女は耳をピクピクと動かすと、首だけで振り返った。
「ん。足音がした。来たみたいよ」
「地獄耳ですね」
「狐耳と言って欲しいわ」
そんな掛け合いを交わしながら、二人してフロントに出る。
センダンの言う通り、フロントの向かいにある土間に、男性らしき人物が立っていた。
背丈や体格は成人男性のそれなのだが、顔まで隠れる黒頭巾を被っていて、服装も黒一色である。
顔つきや衣装では、性別が判断できなかったのだ。
この特異な格好は仕事絡みなのだろうか、とヒロは思う。
黒尽くめは、バンド付きの大きな木製の箱を背負っていたが、これは傷や汚れが目立っていた。
この箱の中に、仕事道具を入れているのかもしれない。
「いらっしゃいませ! ウィグさんですよね?」
センダンが元気良く尋ねる。
黒頭巾は、恐縮そうにちょこんと頭を下げた。
だが、それだけである。
彼は口を開かなかった。
燦燦さんぽ日和
第十六話/人形使いの音
ウィグが、背負っていた箱を下ろした。
箱は観音開きになっていたが、開かれた面は土間の方を向いていて、中は見えない。
急にどうしたのだろうと、ヒロらが様子を見守っていると、ウィグは二体のマリオネットを取り出した。
派手な衣装を纏った老人のマリオネットと、若く精悍な顔つきのマリオネットの二体である。
糸の先には、マリオネットを操る為の操作板が付いていて、ウィグがそこを握って少し指を動かすと、
二体は流暢な動作で、ヒロらに向かってお辞儀をした。
「わあ、凄い! 滑らかな動きね!」
「生きてるみたいですね……挨拶代わりに、何か見せてくれるんでしょうかね?」
突然の挨拶に、二人は思わず感嘆の声を漏らす。
ヒロの言葉には、マリオネットが頷いて返事を返してくれた。
「おお! なんだろなんだろ!」
センダンが声を躍らせながら腰を下ろす。
それにヒロも続いた所で、マリオネットの足が床に下りる。
まず活発に動き出したのは、派手なマリオネットだった。
周囲に向かってステッキを振り回したり、胸を張ったりといった仕草を行っている。
なんとも偉そうな事この上ない。
その上、着ている物も派手ときては、どうしても連想してしまう身分がある。
「ふむ……この人は貴族かなにか、なんですかね?」
「じゃないかな。凄い偉そうだもん」
センダンも似た考えだったようで、同意してくれた。
一度貴族だと連想すると、そのマリオネットの周辺が、自動的に浮かび上がってきた。
ふんぞり返ってまっすぐに歩く様からは、王城の廊下を闊歩している光景が見えてくる。
怒鳴るように身を乗り出すと、彼に怒鳴られる部下達の姿が見えてくる。
ただ人形が動いているだけなのに、周辺がみるみるうちに彩られていく。
二人はあっという間に、何もないはずなのに鮮やかな、不思議な世界に引き込まれていった。
そして、貴族のマリオネットが散々威張っている最中、精悍な顔つきのマリオネットは、大人しくその後ろに付いて回っていた。
こちらも、貴族のマリオネット程ではないものの、それなりに良い衣服を纏っている。
おそらくは、このマリオネットも貴族なのだろう。
だが、時折振り返る老貴族に頭を下げている辺り、どうも上下関係があるように見受けられた。
老貴族は時折、頭を下げている若貴族をステッキで小突いている。
それが二度、三度と続くだけで、貴族は貴族でも、老貴族には『悪い』の肩書きが付くのだとヒロは察した。
老貴族の動きは、段々とエスカレートする。
若貴族を蹴り飛ばし、小突くの域を超えてステッキを打ち据えて、散々な目に遭わせる。
どこまで若貴族をいびるのだろうか……そうヒロが考えた瞬間に、二人の行動は逆転した。
またいびられた若貴族が右腕を一回転させると、どの様に仕込んでいたのか、その手には小刀が握られていた。
突然現れた刃物に、老貴族の動きが止まる。
そんな老貴族に、若貴族が一歩歩み寄る。
その分、老貴族は後退。
また若貴族が前進。
その二歩目を合図に、老貴族は一目散に逃げ出した。
だが、若貴族は逃がさない。
逃げる老貴族の額目掛けて、小刀を鋭く振り下ろしてみせる。
「ああっ、分かった!」
そこで声を張り上げたのは、センダンだった。
「あれよ、あれ! 忠義者! 嫌な上司貴族を切りつけた男が死刑になって、その男の部下が仇を取る話!」
「あ……なるほど!」
ぽん、とヒロは手を打つ。
忠義者は、内乱時代の後、すなわち君主制の確立後に発生した実話を基にした、有名な話である。
部下達の忠義の行動が大いに受け、当時は熱狂的な人気を誇った物語であり、
現代でも古典的な劇として、こういった人形劇の他、演劇等でも頻繁に題目として用いられているのである。
言われてみれば、この二体の立ち位置は忠義者と同じようである。
「ね! ウィグさん、忠義者でしょ!?」
センダンが身を乗り出して尋ねた。
センダンのみならず、ヒロも答えを求めるような視線をウィグに向けると、ウィグは操作盤を床に置き、小さく拍手をしてくれた。
「やった、当たり!」
センダンが、ふにゃふにゃと嬉しそうに尾を振る。
「凄いですね。音がなくても、ちゃんとお話って伝わるんだ……」
「人形の動きだけで、周囲の風景が伝わってきたわよね」
「うんうん。さすがはプロの大道芸人さんです」
「ウィグさんに来て貰って良かったあ! 今日は宜しくお願いしますね!」
センダンは立ち上がって、ウィグににっこりと笑いかけた。
ウィグは、それに深々と頭を下げて応える。
だが、口は開かない。
芸は終わったというのに、まだウィグは喋ろうとしない。
ふと、まだウィグの声を一度も聞いていない事に、ヒロは気づいた。
「あの……ウィグさん?」
ヒロは首を傾げながらウィグに声をかける。
そんな、ヒロの不安げな様子が伝わったのか、ウィグは箱から紙とペンを取り出した。
紙に何やら文字を書き終えると、ウィグは両膝を床に付き、慎ましい動作でその紙を前に突き出す。
紙には、こう書かれていた。
『協会のパンフレットにも書いていた通り、私は病で、あまり声が出ません』
思わず、ヒロとセンダンは顔を見合わせる。
「センダンさん……パンフレットに、そんな事書いてありました?」
「……あー……詳細欄読み飛ばしてたから、分かんない」
センダンの声は、実に気まずそうなものであった。
◇
ウィグ・キーシが芸の道を志したのは、十五歳の頃である。
友人に誘われて上級アカデミーで演劇クラブに属した彼は、演劇を通じて、そこに本来はない何かを表現する魅力に取り付かれた。
クラブでの活動のみならず、私生活においても暇さえあれば劇団の劇を観賞し、役者としての心得を学び、生活の全てを演劇に捧げた。
そんな彼の努力は実る。
五年後である二十歳の年、上級アカデミーを卒業した彼は、首都ミクリに拠点を構えるこの国で最大の劇団のオーディションに合格した。
それから数年は、訓練と端役の日々である。
それでも、演劇を愛していた彼はめげなかった。
少しずつ実力を身につけた彼の露出は、徐々に増える。
そして二十五の年……芸の道を歩いて十年目の年に、転機はやってきた。
ある演目のオーディションで、彼はついに準主役の座を射止めたのである。
端役からの大きなステップアップ。
だが……本当の転機は、それではなかった。
「……えー、続きを読むわね。その直後、病に倒れたウィグさんは生死の境をさ迷い、
無事生還はしたものの、声が殆ど出ない体になってしまった、と書いてあるわ」
センダンが、気まずそうな表情をパンフレットで隠しながらそう言う。
そんな彼女をもう少し責めようかとも思ったが、それよりも今はウィグの話である。
「殆ど……という事は、少しは喋る事ができるんですか?」
ヒロは居住まいを正し、ウィグにそう尋ねた。
ウィグはそれに頷いて返事をした。
それから、慣れた手つきでまた紙の上でペンを走らせる。
「ふむ……声は出るが擦れているし、不意に出せなくなる事もある……ですか。
なるほど……それだと、確かに演劇を続けるのは難しかったでしょうね」
「でもヒロ君、そこでウィグさんは新しい道に目覚めるのよ!」
「そうパンフレットに書いてあるんですね」
さも自慢げに言うセンダンに、ヒロは淡々と事実を確認する。
「うっ……パンフレットに書いてあったって良いじゃない!」
「別に駄目とは言ってませんよ。で、新しい道とは?」
「おお、よくぞ聞いてくれました!」
センダンはそう言って嬉しそうに笑うと、言葉を続ける。
「演劇の道を断念したウィグさんは、新たな表現の道を志したの。
それがすなわち、人形ね。
国中を回って、各都市特有の人形劇を学び、人形を収集しているらしいわ。
マリオネットにギニョール、からくり人形、布袋人形……聞いた事ない人形が沢山あるわね」
センダンのその言葉に、ウィグが反応する。
紙に『布袋人形』と書き殴って、箱からまた一つ人形を取り出してみせた。
服の中が空洞になっている人間型の人形で、手を差し入れて手や頭を動かすタイプのようである。
白を基調とした布の服を纏っていて、顔や手は木製のように見受けられた。
顔の彫刻は細かく、髪はおそらく動物の毛を用いているのだろう、実に鮮やかだ。
非常に美しい印象を、ヒロは受ける。
「名前の由来は、見たまま……ですか?」
ヒロがそう尋ねると、ウィグはまた頷いて反応した。
それから、またウィグは文字を書き殴る。
「ふむ……布袋人形は、大陸西に位置するプノ砂漠の玄関都市、ヘディンで購入したもの……ですか?」
ヒロがウィグの文字を疑問系で読み上げる。
「その口調は、ヒロ君、ヘディンの事知らないわね」
「聞いた事があるような気はしますが……センダンさんは知ってるんですか?」
「もちろん。ヒロ君ってホント、マナの事以外は常識に疎いわね」
「むう」
「はいはい、ただでさえ怖いんだから、眉間にしわを寄せないの」
センダンはヒロをなだめてから、説明を開始する。
「ヘディンは、プノ砂漠を渡る為の前線基地のような都市よ。
土地柄、岩をくりぬいたような家が多くて、一見するとみすぼらしいかもしれないけれど、商売は活発で歴史も深い都市なの。
近くには失われた都もあったから、その文化も流れているんでしょうね。
布袋人形の事は私も知らなかったけれど、きっとこれも歴史ある人形じゃないかな」
「ふむ……」
センダンの言葉には、まだ疑問が残る。
失われた都とは何なのか詳しく聞いてみたい所だったが、
またセンダンに優越感を抱かせるのが癪で、ヒロはそれ以上尋ねようとしなかった。
「でも、これは確信したわ。やっぱりウィグさんは大当たりよ!
本当に大陸全土を旅していたんだもの。凄い人形使いさんに当たったもんだわ」
センダンが瞳をきらきら輝かせて、ウィグを見やる。
一方、当のウィグは冴えない様子だった。
黒頭巾で覆われていて、その表情を読み取る事はできない。
だが、彼の肩は少々消沈気味で、やや俯いているように見受けられた。
今度はゆっくりとした手つきで、また筆談を始める。
「ふむ……そんな事はありません……ですか。
いえいえ、そんな事あります。ウィグさんのさっきの人形劇、リアルでしたよ。
ねえ、センダンさん。良かったですよね」
「うんうん! 周囲の光景が浮かんできたんだもの。感動物だったわ!
ふむ……音がない芝居は難しい。さっきの話は大人だから通じた……ですって?
むう、それは……今日は子供のお客様が多いけれど……ううん」
ウィグの一文に、二人は返す言葉を失う。
確かに、音のない芝居は、子供に伝わり難いかもしれない。
パントマイムのような短い表現であれば伝わるかもしれないが、
人形劇のように詳細なストーリーがあると、なかなか難しいだろう。
三人の間に、気まずい空気が流れかける。
だが、その空気を払拭したのは、意外にもウィグの口だった。
「今日は、喋ります」
この日、ウィグが初めて発した声は、小さくて掠れていた。
だが、熱意に満ちている声でもあった。
「ウ、ウィグさん、喋って大丈夫なの!?」
センダンが中腰になり、ウィグを気遣うように手を伸ばして尋ねる。
「大丈夫……仮に声が出なくなっても、もう病には影響ありません」
「ウィグさん……」
ヒロはウィグの名を口にしながら、彼を見つめる。
やはり、黒頭巾に覆われた彼の表情を読み取る事はできない。
だが、その奥には、声同様に熱意に満ちた顔がある事は、容易に想像できた。
その熱意の根源は、何なのだろう。
ウィグを見ながら考えたが、ヒロは結局、その答えは分からなかった。
この月は、なんといっても過ごし易い。
夏の残り香というには少々過酷な残暑も完全に姿を消しており、外を歩いても日差しに苦しめられる事がない。
また、冬の厳しい寒さにもまだまだ至らない、気候の挟間となるオアシスのような月である。
木々も、色とりどりの葉や花、実を纏い、兄花島では特に、特産物である蜜柑の色どりが美しい。
緑一色であった島の自然が、にわかに艶やかさを帯びてくる季節でもあるのだ。
インドア派のヒロでも、その様な気持ちの良い環境ともあれば、散歩の一つや二つ、やってみようという気にもなる。
だが、この日のヒロには、散歩を楽しむような時間はなかった。
もっとも、それは本来、好ましい事なのである。
「フン~、フンフフフン~、っと♪」
ヒロの鼻歌が海桶屋の厨房に響く。
それはすなわち、ヒロが包丁を握っている事を意味していた。
鼻歌に混じって、まな板がリズミカルに叩かれる音も聞こえている。
なんと、この日の海桶屋には二組の予約客が入っている。
いずれもロビン在住の家族連れで、初めて海桶屋を利用する客だ。
予約は今日に限った話ではなく、この所ほぼ連日、客室が複数埋まっている。
先日の竜伐祭が良いアピールになったのか、あれ以来、兄花島への観光客が多いのだ。
となれば、当然海桶屋の利用客も増えるという仕組みである。
料理の最中には鼻歌を歌うのが癖になっているヒロであるが、
最近の彼の鼻歌には、商売繁盛による機嫌の良さも幾分含まれていた。
「ヒロ君、ご機嫌さんねえ」
厨房の入口からセンダンが顔を覗かせた。
この時間の彼女はフロントで待機しているのだが、
厨房とフロントは隣接している事もあり、暇な時にはよくヒロの様子を見に来ている。
「ん、なにがですか?」
ヒロは振り返らず、料理を進めながら返事をした。
「鼻歌。フロントまで聞こえてきてるわよ」
「いやあ、だって、ですよ」
「うんうん。その気持ちは分かるわあ。
そのヒロ君お待ちかねの大道芸人さん、もうすぐ来る時間よ」
「あれっ、もうそんな時間でしたっけか」
センダンの言葉に、ヒロはとぼけた声を出す。
同時に、初めて見る事になる大道芸というものに、胸が踊るのが自覚できた。
事の始まりは、やはりセンダンの『良い事』であった。
この所増えている新規客にリピーターになってもらうべく、
従来のサービスに加えて、何らかの余興を披露する事を、センダンが提案したのである。
今回のセンダンの提案にはヒロも同意した。
ただし、それならそれで、決めなくてはならない事がある。
余興を披露するとして、具体的には何を披露するのかという点である。
ナポリが宿泊した時に躍った舞ではどうか、とセンダンは主張したが、今回は子供も見る可能性がある。
ともすれば、もっと分かりやすいものが良いかもしれない。
センダンの舞を却下し、不満げな彼女をなだめつつ弾きだした答えは『餅は餅屋』だった。
すなわち、大道芸協会に所属するプロの大道芸人を呼ぶ事にしたのである。
「センダンさん、芸人さんの選択は譲ってくれませんでしたよね」
ヒロはセンダンをジト目で見ながら言う。
「当たり前じゃない。私の代わりにお客様を楽しませてくれる人なんだから、私が選ぶわ」
「予算内の人選だから構いませんけれど……で、どんな人でしたっけか」
「ウィグ・キーシさん。パンフレットによると、男性の人形使いさんよ」
「人形、ですか?」
「うん。大陸全土を旅して、各地の人形を使った劇を学んでいる最中なんだって。
凄いよね。全土だよ、全土!」
センダンがぴょんぴょん飛び跳ねながら言う。
相変わらずの派手な仕草だが、彼女の言う事が本当であれば、凄い大道芸人なのかもしれない。
「面白いと良いですね」
「安心して! 絶対面白い!」
力強い言葉である。
そう言い放った後で、彼女は耳をピクピクと動かすと、首だけで振り返った。
「ん。足音がした。来たみたいよ」
「地獄耳ですね」
「狐耳と言って欲しいわ」
そんな掛け合いを交わしながら、二人してフロントに出る。
センダンの言う通り、フロントの向かいにある土間に、男性らしき人物が立っていた。
背丈や体格は成人男性のそれなのだが、顔まで隠れる黒頭巾を被っていて、服装も黒一色である。
顔つきや衣装では、性別が判断できなかったのだ。
この特異な格好は仕事絡みなのだろうか、とヒロは思う。
黒尽くめは、バンド付きの大きな木製の箱を背負っていたが、これは傷や汚れが目立っていた。
この箱の中に、仕事道具を入れているのかもしれない。
「いらっしゃいませ! ウィグさんですよね?」
センダンが元気良く尋ねる。
黒頭巾は、恐縮そうにちょこんと頭を下げた。
だが、それだけである。
彼は口を開かなかった。
燦燦さんぽ日和
第十六話/人形使いの音
ウィグが、背負っていた箱を下ろした。
箱は観音開きになっていたが、開かれた面は土間の方を向いていて、中は見えない。
急にどうしたのだろうと、ヒロらが様子を見守っていると、ウィグは二体のマリオネットを取り出した。
派手な衣装を纏った老人のマリオネットと、若く精悍な顔つきのマリオネットの二体である。
糸の先には、マリオネットを操る為の操作板が付いていて、ウィグがそこを握って少し指を動かすと、
二体は流暢な動作で、ヒロらに向かってお辞儀をした。
「わあ、凄い! 滑らかな動きね!」
「生きてるみたいですね……挨拶代わりに、何か見せてくれるんでしょうかね?」
突然の挨拶に、二人は思わず感嘆の声を漏らす。
ヒロの言葉には、マリオネットが頷いて返事を返してくれた。
「おお! なんだろなんだろ!」
センダンが声を躍らせながら腰を下ろす。
それにヒロも続いた所で、マリオネットの足が床に下りる。
まず活発に動き出したのは、派手なマリオネットだった。
周囲に向かってステッキを振り回したり、胸を張ったりといった仕草を行っている。
なんとも偉そうな事この上ない。
その上、着ている物も派手ときては、どうしても連想してしまう身分がある。
「ふむ……この人は貴族かなにか、なんですかね?」
「じゃないかな。凄い偉そうだもん」
センダンも似た考えだったようで、同意してくれた。
一度貴族だと連想すると、そのマリオネットの周辺が、自動的に浮かび上がってきた。
ふんぞり返ってまっすぐに歩く様からは、王城の廊下を闊歩している光景が見えてくる。
怒鳴るように身を乗り出すと、彼に怒鳴られる部下達の姿が見えてくる。
ただ人形が動いているだけなのに、周辺がみるみるうちに彩られていく。
二人はあっという間に、何もないはずなのに鮮やかな、不思議な世界に引き込まれていった。
そして、貴族のマリオネットが散々威張っている最中、精悍な顔つきのマリオネットは、大人しくその後ろに付いて回っていた。
こちらも、貴族のマリオネット程ではないものの、それなりに良い衣服を纏っている。
おそらくは、このマリオネットも貴族なのだろう。
だが、時折振り返る老貴族に頭を下げている辺り、どうも上下関係があるように見受けられた。
老貴族は時折、頭を下げている若貴族をステッキで小突いている。
それが二度、三度と続くだけで、貴族は貴族でも、老貴族には『悪い』の肩書きが付くのだとヒロは察した。
老貴族の動きは、段々とエスカレートする。
若貴族を蹴り飛ばし、小突くの域を超えてステッキを打ち据えて、散々な目に遭わせる。
どこまで若貴族をいびるのだろうか……そうヒロが考えた瞬間に、二人の行動は逆転した。
またいびられた若貴族が右腕を一回転させると、どの様に仕込んでいたのか、その手には小刀が握られていた。
突然現れた刃物に、老貴族の動きが止まる。
そんな老貴族に、若貴族が一歩歩み寄る。
その分、老貴族は後退。
また若貴族が前進。
その二歩目を合図に、老貴族は一目散に逃げ出した。
だが、若貴族は逃がさない。
逃げる老貴族の額目掛けて、小刀を鋭く振り下ろしてみせる。
「ああっ、分かった!」
そこで声を張り上げたのは、センダンだった。
「あれよ、あれ! 忠義者! 嫌な上司貴族を切りつけた男が死刑になって、その男の部下が仇を取る話!」
「あ……なるほど!」
ぽん、とヒロは手を打つ。
忠義者は、内乱時代の後、すなわち君主制の確立後に発生した実話を基にした、有名な話である。
部下達の忠義の行動が大いに受け、当時は熱狂的な人気を誇った物語であり、
現代でも古典的な劇として、こういった人形劇の他、演劇等でも頻繁に題目として用いられているのである。
言われてみれば、この二体の立ち位置は忠義者と同じようである。
「ね! ウィグさん、忠義者でしょ!?」
センダンが身を乗り出して尋ねた。
センダンのみならず、ヒロも答えを求めるような視線をウィグに向けると、ウィグは操作盤を床に置き、小さく拍手をしてくれた。
「やった、当たり!」
センダンが、ふにゃふにゃと嬉しそうに尾を振る。
「凄いですね。音がなくても、ちゃんとお話って伝わるんだ……」
「人形の動きだけで、周囲の風景が伝わってきたわよね」
「うんうん。さすがはプロの大道芸人さんです」
「ウィグさんに来て貰って良かったあ! 今日は宜しくお願いしますね!」
センダンは立ち上がって、ウィグににっこりと笑いかけた。
ウィグは、それに深々と頭を下げて応える。
だが、口は開かない。
芸は終わったというのに、まだウィグは喋ろうとしない。
ふと、まだウィグの声を一度も聞いていない事に、ヒロは気づいた。
「あの……ウィグさん?」
ヒロは首を傾げながらウィグに声をかける。
そんな、ヒロの不安げな様子が伝わったのか、ウィグは箱から紙とペンを取り出した。
紙に何やら文字を書き終えると、ウィグは両膝を床に付き、慎ましい動作でその紙を前に突き出す。
紙には、こう書かれていた。
『協会のパンフレットにも書いていた通り、私は病で、あまり声が出ません』
思わず、ヒロとセンダンは顔を見合わせる。
「センダンさん……パンフレットに、そんな事書いてありました?」
「……あー……詳細欄読み飛ばしてたから、分かんない」
センダンの声は、実に気まずそうなものであった。
◇
ウィグ・キーシが芸の道を志したのは、十五歳の頃である。
友人に誘われて上級アカデミーで演劇クラブに属した彼は、演劇を通じて、そこに本来はない何かを表現する魅力に取り付かれた。
クラブでの活動のみならず、私生活においても暇さえあれば劇団の劇を観賞し、役者としての心得を学び、生活の全てを演劇に捧げた。
そんな彼の努力は実る。
五年後である二十歳の年、上級アカデミーを卒業した彼は、首都ミクリに拠点を構えるこの国で最大の劇団のオーディションに合格した。
それから数年は、訓練と端役の日々である。
それでも、演劇を愛していた彼はめげなかった。
少しずつ実力を身につけた彼の露出は、徐々に増える。
そして二十五の年……芸の道を歩いて十年目の年に、転機はやってきた。
ある演目のオーディションで、彼はついに準主役の座を射止めたのである。
端役からの大きなステップアップ。
だが……本当の転機は、それではなかった。
「……えー、続きを読むわね。その直後、病に倒れたウィグさんは生死の境をさ迷い、
無事生還はしたものの、声が殆ど出ない体になってしまった、と書いてあるわ」
センダンが、気まずそうな表情をパンフレットで隠しながらそう言う。
そんな彼女をもう少し責めようかとも思ったが、それよりも今はウィグの話である。
「殆ど……という事は、少しは喋る事ができるんですか?」
ヒロは居住まいを正し、ウィグにそう尋ねた。
ウィグはそれに頷いて返事をした。
それから、慣れた手つきでまた紙の上でペンを走らせる。
「ふむ……声は出るが擦れているし、不意に出せなくなる事もある……ですか。
なるほど……それだと、確かに演劇を続けるのは難しかったでしょうね」
「でもヒロ君、そこでウィグさんは新しい道に目覚めるのよ!」
「そうパンフレットに書いてあるんですね」
さも自慢げに言うセンダンに、ヒロは淡々と事実を確認する。
「うっ……パンフレットに書いてあったって良いじゃない!」
「別に駄目とは言ってませんよ。で、新しい道とは?」
「おお、よくぞ聞いてくれました!」
センダンはそう言って嬉しそうに笑うと、言葉を続ける。
「演劇の道を断念したウィグさんは、新たな表現の道を志したの。
それがすなわち、人形ね。
国中を回って、各都市特有の人形劇を学び、人形を収集しているらしいわ。
マリオネットにギニョール、からくり人形、布袋人形……聞いた事ない人形が沢山あるわね」
センダンのその言葉に、ウィグが反応する。
紙に『布袋人形』と書き殴って、箱からまた一つ人形を取り出してみせた。
服の中が空洞になっている人間型の人形で、手を差し入れて手や頭を動かすタイプのようである。
白を基調とした布の服を纏っていて、顔や手は木製のように見受けられた。
顔の彫刻は細かく、髪はおそらく動物の毛を用いているのだろう、実に鮮やかだ。
非常に美しい印象を、ヒロは受ける。
「名前の由来は、見たまま……ですか?」
ヒロがそう尋ねると、ウィグはまた頷いて反応した。
それから、またウィグは文字を書き殴る。
「ふむ……布袋人形は、大陸西に位置するプノ砂漠の玄関都市、ヘディンで購入したもの……ですか?」
ヒロがウィグの文字を疑問系で読み上げる。
「その口調は、ヒロ君、ヘディンの事知らないわね」
「聞いた事があるような気はしますが……センダンさんは知ってるんですか?」
「もちろん。ヒロ君ってホント、マナの事以外は常識に疎いわね」
「むう」
「はいはい、ただでさえ怖いんだから、眉間にしわを寄せないの」
センダンはヒロをなだめてから、説明を開始する。
「ヘディンは、プノ砂漠を渡る為の前線基地のような都市よ。
土地柄、岩をくりぬいたような家が多くて、一見するとみすぼらしいかもしれないけれど、商売は活発で歴史も深い都市なの。
近くには失われた都もあったから、その文化も流れているんでしょうね。
布袋人形の事は私も知らなかったけれど、きっとこれも歴史ある人形じゃないかな」
「ふむ……」
センダンの言葉には、まだ疑問が残る。
失われた都とは何なのか詳しく聞いてみたい所だったが、
またセンダンに優越感を抱かせるのが癪で、ヒロはそれ以上尋ねようとしなかった。
「でも、これは確信したわ。やっぱりウィグさんは大当たりよ!
本当に大陸全土を旅していたんだもの。凄い人形使いさんに当たったもんだわ」
センダンが瞳をきらきら輝かせて、ウィグを見やる。
一方、当のウィグは冴えない様子だった。
黒頭巾で覆われていて、その表情を読み取る事はできない。
だが、彼の肩は少々消沈気味で、やや俯いているように見受けられた。
今度はゆっくりとした手つきで、また筆談を始める。
「ふむ……そんな事はありません……ですか。
いえいえ、そんな事あります。ウィグさんのさっきの人形劇、リアルでしたよ。
ねえ、センダンさん。良かったですよね」
「うんうん! 周囲の光景が浮かんできたんだもの。感動物だったわ!
ふむ……音がない芝居は難しい。さっきの話は大人だから通じた……ですって?
むう、それは……今日は子供のお客様が多いけれど……ううん」
ウィグの一文に、二人は返す言葉を失う。
確かに、音のない芝居は、子供に伝わり難いかもしれない。
パントマイムのような短い表現であれば伝わるかもしれないが、
人形劇のように詳細なストーリーがあると、なかなか難しいだろう。
三人の間に、気まずい空気が流れかける。
だが、その空気を払拭したのは、意外にもウィグの口だった。
「今日は、喋ります」
この日、ウィグが初めて発した声は、小さくて掠れていた。
だが、熱意に満ちている声でもあった。
「ウ、ウィグさん、喋って大丈夫なの!?」
センダンが中腰になり、ウィグを気遣うように手を伸ばして尋ねる。
「大丈夫……仮に声が出なくなっても、もう病には影響ありません」
「ウィグさん……」
ヒロはウィグの名を口にしながら、彼を見つめる。
やはり、黒頭巾に覆われた彼の表情を読み取る事はできない。
だが、その奥には、声同様に熱意に満ちた顔がある事は、容易に想像できた。
その熱意の根源は、何なのだろう。
ウィグを見ながら考えたが、ヒロは結局、その答えは分からなかった。
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