燦燦さんぽ日和

加藤泰幸

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竜伐祭編

第八話/西部地区さんぽ(後編)

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「……いらっしゃい」
 スラムの片隅にあるマナ店の店主の挨拶には、やる気が感じられなかった。

 見た目から察するに七十代か、八十代か、いずれにしても店主はかなりの高齢のようである。
 頭も禿げ上がっていたが、髪が一本たりともない辺り、禿げているのではなく剃っているのかもしれない。
 そんな店主は、挨拶と共にヒロ達に一瞥をくれただけで、店奥の椅子から立とうとせず、足を机の上に投げ出して新聞を読んでいた。


「ヒロ君、入る前に、店の看板見た?」
 センダンが小声で聞いてくる。
「見ましたけれど、なにか?」
「『マナ勉強堂』って書いてあったけれど、全然勉強してくれる気配はないわね。手強そうだわ、こりゃ」
「マナは一般には殆ど売られていませんから、値切るのはなかなか難しいでしょうね」
 苦笑しながら肩を竦める。
 とはいえ、確かにセンダンの言う通り、気難しそうな老人ではあった。

「ちゃんとした品なら値段は気にしなくて良いさ。ヒロ君、すまないが宜しく頼むよ」
 ナポリがそう言ってヒロの肩を叩く。
 ヒロは頷いて答えると、まず店内を見回した。

 店の照明はマナが切れ掛かっていて薄暗い。
 マナの販売店がこれでは、雰囲気のみならず、品質面でも、不安を抱いてしまうものだった。
 店内には、所狭しと引き出し付きの棚が置かれており、通路は並んで通る事ができない狭さとなっている。
 その引き出しには品名が書かれたラベルが貼られていた。
 中にはマナが入っているという事だろう。
 マナの中でも比較的需要が高いからか、火のマナのラベルは店の入口近くの棚に張られていた。



「お爺さん、中を見ても構いませんか?」
「……構わんよ」
 相変わらず愛嬌がない。
 だが、こういう店で愛嬌良く商品を薦められても、それはそれで胡散臭い。
 変に構えずに済むのは良い、と思いながら引き出しを開ける。
 引き出しの中には古ぼけたガラス瓶が四つ入っていた。

「へえ、綺麗ね」
 ヒロの背後からセンダンが引き出しを覗き込み、感嘆する。
 どのガラス瓶も、赤々と静かに輝く火のマナが入っている。
 そのうちの一つを手に取ると、手のひらに穏やかな暖かさが広がった。

 マナは、消耗品である。
 マナエネルギーを用いる道具に組み込まれたマナは、
 そのエネルギー源として一定期間働いた後、自然消滅してしまう。
 だが、そうして消費せずとも、数年間放っておけば、やはりマナは自然消滅する。
 この店のマナが、ガラス瓶越しにも暖かいという事は、まだ寿命がくる気配がない事を意味していた。

「ふむ」
 一つ頷いて、ガラス瓶を振る。
 マナは意思があるかのように、大きく上下に浮いてみせた。
 これもまた、良品の証であった。

「キャンドルはマナの加工が必要なタイプですか?」
 振り返って、ナポリに尋ねる。
「いや、底の窓からマナを入れれば、それだけで使えるようだ」
「という事は、加工のし易さは気にしないで良いんですね。
 でしたら、このマナで良いと思いますが、どうしますか?」
「ヒロ君がそう言うのなら、そうしよう」
 ナポリはそう言って、手を差し出した。
 その手にガラス瓶を手渡すと、ナポリは店主のもとへ歩いた。



「これはいくらだろうか?」
「……八千レスタ」
 足を机から降ろした店主が、ガラス瓶をちらと見ただけでそう告げる。
 相場よりも若干高めの価格だった。
 ナポリが料金を取り出す所を後ろから見ていると、その視界の先で店主がこちらを見ていた。



「そこの怖い顔したお兄ちゃんや」
 店主が目を睨むように細めながら声をかけてくる。
 ヒロ以外の誰に掛けられた言葉でもない。
「あ、はい」
 抜けた返事をする。
 反射的に喋ると、いつも言葉に力が入らない。
「これ、お兄ちゃんが選んでいたね」
「そうですが……」
「マナは詳しいのかね?」
「一応、上級アカデミーで勉強していました」
「ふぅん」
 興味があるともないとも取れる曖昧な口調である。
 店主との会話はそれだけで終わった。





「はい、八千レスタ」
「……ほらよ」
 最後まで無愛想だった店主に料金を支払い、店の外に出る。
 ヒロが提案して、正しく動作するかを念の為にここで確認する事にした。

 ナポリが取り出したキャンドルは、細工が施された真鍮の燭台に、蝋を模したプラスチック性の点灯パーツが付けられている。
 底に火のマナを入れると、マナの輝きが蝋の先端に集中して、赤く強く光る仕組みである。
 買ってきたばかりのガラス瓶の蓋を開けて、キャンドルの底から注入すると、点灯パーツはすぐに輝いた。



「勉強堂さん、値段はともかく、質は勉強してくれてたわね」
 センダンがそう言って笑う。
 それにつられて、ヒロとナポリも顔を見合わせて大いに笑った。







 ◇







 買い物を終えた三人は、その足で港へ向かった。
 時刻は午後七時前で、空の七割は夜の群青色に染まっている。
 スラムを三十分も歩かないうちに着くとの事なので、港まで出れば、ちょうど陽が完全に沈む頃となる。
 向かっている店で出てくる料理の話を主にしながら、三人は黙々と歩き続けた。



(……それにしても、密集してるなあ)
 二十分程歩いた所で、ヒロは周囲を見回す。

 周囲に立ち並んでいるのは、百年前の艦隊戦争の際に建てられた兵舎跡が主だ。
 それらが隙間なく立ち並んでいて、非常に圧迫感を感じる。
 密集しているだけではなく、兵舎の上に通路やまた別の兵舎が建っている、歪な町並みだった。
 なんでも、戦時中の動乱で、想定外の増築が多発した事が原因らしい。

 だが、古くいびつではあるが、建物として機能していないわけではない。
 家々からは照明の光が漏れていて、そこからは生活感が感じられる。
 またロビンの観光政策の一環で、スラムは清掃も行き届いている。
 スラムという名前こそ付いているが、ヒロ達の歩く道は、不安を煽るような道ではない。

 ただし、横道に反れた場合は別である。
 大きな道を歩くには問題ないのだが、稀に伸びている路地に進むと、土地の者でなければ迷子になってしまう。
 それだけではなく、そこはひとけが無い為に、物取りが出るとも言われていた。





「ヒロ君、怖くなーい?」
 センダンがにやにやしながら声を掛けてくる。
 どうやら、からかっている様である。


「怖くありませんよ。港に通じるこの道なら、治安は行き届いてますから」
 自分に言い聞かせるような、落ち着いた調子で言う。
 実際、周囲には他の歩行者が何人もいて、隠れて悪事を働けるような道ではなかった。

「えー、本当かなあ。本当に大丈夫かなあ?」
「港を利用する観光客も使う道ですから。変に冒険しなければ問題は無いです」
「むう……ヒロ君が怖がらなくてつまらなーい」
「なんで怖がらなくちゃいけないんですか……」
「私が楽しいからに決まってるじゃない」
 酷い話である。
「……まあ、良いわ。ヒロ君が一緒なら強盗に襲われる事もないだろうし」
「それ、どういう意味ですか」
 ヒロが眉をひそめる。
「言わなくても分かるでしょ? 強盗の方が怖がって逃げて行くって事!」
「ははは。それは言い得ているかもしれないね」
 センダンの言葉にナポリが軽く笑う。
 ナポリにまで笑われては、どうしようもなかった。



「むう……」
「そう拗ねないの。頼りになるってつもりで言ってるんだから」
「まあ、そういう事にしておきます」
「あ、でもあれよね。ヒロ君、お祭りも設営じゃなく保安班の方が向いていたかもね」

「祭り?」
 その言葉に反応したのはナポリだった。
「九月末に兄花島でお祭りをするんです。竜伐祭ってお祭りで、ちょっと派手な花火もありますよ。
 参加者が少なくて寂しいから、予定が空いていれば、ナポリさんも遊びに来て下さい」
「その時は是非海桶屋にご宿泊を~♪」
 ヒロが説明し、センダンが宣伝する。

「ふむ……」
 ナポリはそれだけ返事をすると、なにやら考え込むようにして顔を伏せた。
 だが、その顔はすぐに前方へと向けられる。
「……お、抜けるね」
 いつの間にか、スラムの端まで来ていたようである。
 百メートル程前方には海が広がっていた。







「いやっほー、海だーっ!」
 海など毎日見ているというのに、センダンが勢い良く走り出す。
 苦笑しながら、ヒロも小走りでセンダンを追いかけた。

 スラムを抜けると、真っ先に目を奪われるのは、やはり海上である。
 陽は殆ど暮れており、鮮やかに輝くような日没の海ではなく、薄暗く光る海だった。
 海上では、その薄暗さを飾るようにしてマナが輝いている。
 一隻の船が港を離れた直後で、汽笛を鳴らしながら離れていくのも見えた。



「ヒロ君、あれは何?」
 海沿いまで駆けたセンダンが、波止場の奥を指差した。
 彼女の指差す数百メートル先には、薄暗くてはっきりとは見えないが、レンガのような物で造られた建物が建っていた。
 塀に囲まれており、これまで眺めてきた兵舎跡よりも格段に良い建物のようである。

「あれは、元海軍本拠地だったと思います」
「将校さんが使うような所?」
「ええ」
「あそこにも人が住んでいるのかな?」
「さあ、そこまでは」
「それじゃあ、今度冒険しに行ってみようよ」
「お断りします」
 センダンと会話を交わしながら、彼女の隣まで歩く。
 隣に並ぶと、センダンはちらりとヒロを見て、首を傾けて笑いかけた。



「兄花島から見る海とはちょっと違うね」
「どの辺りがですか?」
「ううん……」
 海を眺めながら唸る。
「……兄花島の海は静かね。でも、ここには生活感があるわ」
「生活感、ですか」
 センダンの言葉を繰り返す。
 それ以上は何も言わずに、夜に染まりつつある海を眺めた。

 何本も伸びている船着場に波が定期的に打ち付けられ、小気味良い音がする。
 その波止場には、兄花島とは違って何隻もの漁船が泊まっている。
 皆、今日一日存分に働いた疲れを癒すように、海上で波に揺られていた。
 去り行く船は貿易船のようである。
 多くの品物を積んで、どこかの港へと向かうのだろう。
 後方からは、建物の光が微かに差し込んでいる。
 耳を澄ませば、その光のもとにいる人々の声が微かに聞こえてきた。
 おそらくは、海沿いに並んでいる飲食店から漏れる声だろう。

 センダンの言う通り、この海には生活感がある、とヒロは思う。
 今日という日を無事終えたという哀愁の篭った生活感だった。





「二人とも、こっちだよー」
 後方から、ナポリの声が聞こえた。
 振り向くと、ナポリはまだスラムを出たばかりの所にいた。



「……行こっか!」
「そですね」
 二人は笑い合って、ナポリのもとへと戻っていった。







 ◇







「やあやあ、この子ったら。私はもう誕生日プレゼントを貰うような歳じゃないわよ」
 ナポリに案内されて入った店の初老の女性店主は、
 そうは言ったものの、キャンドルを受け取ると幸福そうな笑みを浮かべていた。
 ナポリと同じ亜麻色の髪には白髪が混じっているが、艶のある髪だ。
 笑顔は品良く、キャンドルを早速飾る所作はゆったりとしている。
 年齢は関係なく、美しい女性だった。

「やあやあ、何を言ってるんだい、母さん。プレゼントに年齢は関係ないよ」
 カウンター席に腰掛けているナポリが、カウンターの奥に立つ店主に軽やかに笑いかける。
 彼はまだサングラスを外していなかった。
 店主も、その事を指摘する様子はない。
 変装とは言っていたが、もしかすると趣味なのではないか、とヒロは思う。


「それにしても、ナポリさんも言ってくれれば良いのにねえ」
「夕食を取る店の店主が、ナポリさんのお母さんって事を……ですか?」
「そそ。びっくりしちゃった。……ずずっ」
「センダンさん、音、音」
 ヒロとセンダンは、ナポリの後ろのテーブル席に腰掛けていた。
 二人が注文したシーフードパスタは、大きな海老がふんだんに使われて豪勢である。
 クリームソースも濃厚で、食欲をそそる味だ。
 食い意地の張っているセンダンが荒く掻き込むのも、無理はない。




 ――ナポリの母の店『海猫亭』は、海沿いの建物の地下に位置する、こじんまりとしたレストランだった。
 だが地下とはいえ、ナポリの母の趣味であるキャンドルが幾つも飾られた店内は非常に明るい。
 ステンドグラスの内装や木製のテーブルも美しく、ナポリの母同様に綺麗な店だった。

 店は既に満員で、ナポリらの話を耳にした客が、祝福の言葉や拍手をナポリの母に送っている。
 店の造りこそ間逆だが、店自体の雰囲気は、サヨコのちどりにも似たものがあった。



「貴方達もありがとうね。うちの子が色々と迷惑をかけたみたいで」
 親子の会話がひと段落したのか、ナポリの母が、カウンターの奥からヒロ達に声をかけてきた。
「いや、僕達は……」
「ヒロ君、謙遜は禁物だよ。僕からも改めて礼を言うよ。今日はありがとう」
 ナポリ、キラリ。


「いやあ、ははは……」
「そうだ、ヒロ君。一つ提案があるのだが」
 ナポリが両手を打ち鳴らす。
「九月に、兄花島で祭りがあるのだったよね」
「ええ、そうですが」
「もし機会がありそうなら、そこで、僕に歌わせて貰えないだろうか?」
「「ええっ!??」」
 ヒロとセンダンの声が重なった。


「う、歌わせてって、それはつまり……」
「うん、ステージイベントとしてね。集客に悩んでいるのだったら、微力ながら力になりたいんだ」
 その言葉を受けて、今日のライブを思い出す。
 微力なんてものではない。
 間違いなく大盛況する。

「そ、それは嬉しい提案ですけれど、でも……」
「迷惑でなければ、是非」
 ナポリの表情は真剣そのものだ。
 本気で言っている事が伺える。

「………」
 ヒロは下を向いて言葉を失う。
 本当に良いのだろうか、と思う。
 ナポリの方から頼んでいるとはいえ、彼はプロの歌手である。
 本来であれば、云百万という金を積んで依頼すべき人なのだ。
 しかし、ナポリが来てくれれば、これ程心強い事はない。






「ヒロ君」
 前に座るセンダンが声をかけてきた。
 その声に反応して、顔を上げる。
 センダンは、ただ満面の笑みを浮かべていた。

「はい」
 その笑みだけで、ヒロの決意は固まった。
 センダンに笑顔を返し、それから、その笑顔をナポリに向ける。







「ナポリさん、宜しくお願いします」
「うん、良い祭りになると良いね」
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