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20 やっぱりテレンス
しおりを挟む『ほぅ。初対面ってか』
「初めまして。ラナ・ディーンです」
ラナがしれっと挨拶するとテレンスの隣の彼が、
「初めまして。僕はユージン・タイラー。ヨロシク」
と人懐っこい笑顔を見せ、それに呼応するようにメグが、
「初めましてメーガン・ラスキンです」
と言ったが、目はテリー様に釘付けになっていてロクにユージンを見てはいなかった。
運ばれて来た紅茶が銘々の前に置かれスタイリッシュな制服のウエイターが一礼していなくなると、ぎこちない沈黙がその場を支配した。
それをなんとかしようとラナが、
「弁論大会って・・・」
と口火を切ると、
「弁論大会の代表に選ばれるなんて優秀ですね」
とメグが引ったくるように言葉を続けて憧れのこもった熱い視線をテレンスに注いだ。
「ああ、開催は明後日だから、良かったら見に来て」
クールな様子を崩さないテレンスだが、美少女メグから尊敬の眼差しを向けられて満更でもなさそうだ。
「どんな内容なの?」
ラナが聞くと、
「今後の我が国が国際関係を円滑に進めるには、若者の文化交流を通した親善活動の果たす役割が大きいということを提言する内容なんだ」
得意気に答えたテレンスの口調には、どうせお前等には理解できないだろう?という嫌味なニュアンスが含まれていた。
「なんだか難しくて私にはよく分からないわ」
上目遣いのメグが可愛く言うと、
「女の子は政治に首を突っ込まなくていいんだよ」
と言う。
アレ~?この前の手紙で、女性政治家の議席数の確保について法案を通すために、街頭で署名したって書いてなかったっけ?
「そうですよね」と意見の合う者同士微笑み合うメグとテレンスを生温かい目で見守りながら、ラナはカマをかけてみることにした。
「そうそう、文化交流っていえば先週から州立美術館で〈ヴェートス芸術展〉が開かれてるんですよ。
民族楽器の生演奏なんかもあるそうなんですけど行って見ませんか?」
するとテレンスとメグはあからさまに嫌な顔をした。
「ヴェートスって、ちょっと怖いわ」
メグがか弱い表情を向けると、
「彼らは近代化に遅れているのに、未だに自分たちの文化的背景に固執しているからな。
発展を拒むってのは根っからの怠け者だってことなんだろう」
とテレンスが頷いた。
「え?意外~」
ラナはワザと声を張り上げた。
「メグの話だと、リードさんは他民族の文化にも理解があって、ヴェートスのお友達もいらっしゃるって聞いてたんだけど~」
その場の空気がピリッと凍って、メグは『変な事言わないでよ』と目で訴えてくる。
ラナはそれにはワザと気づかないフリをして、
「ねぇメグ?テリー様は外見が美しいだけでなく、不当な差別をされている人達にも別け隔てなく接する素晴らしい人だって。
そういう所が尊敬できるとか言ってたじゃない」
ラナがキラキラした目をメグに向けると、メグは「まあ・・・そうだけど・・・」と歯切れ悪く狼狽えている。
するといきなり、さっきまで黙っていたユージン・タイラーが
「ゴメン!」
と大きな声で言った。残りの三人の視線がユージンに集中する。
「ゴメン!メグさんに手紙を書いていたのは僕なんだ」
メグは、え?と驚いた顔をして、テレンスは『なんで言うんだよ』と言いたげな顔で若干ユージンを睨んでいる。
気まずい沈黙の中、それでもラナは特に驚きもしなかった。
手紙の中のテレンスは、ラナが知っている過去の彼とも今目の前にいるテリー様ともかけ離れていたから。
「最初メグさんから手紙が来た時、テリーは手を怪我してて返事を書けなかったんだ。
それでテリーが喋る通りに僕が代筆した。
・・・正直、随分な内容だな、とは思ったよ。僕はてっきり寄ってくる女の子を避けるために敢えて高飛車な言い回しをしたんだと思ってた」
テレンスは少し気分を害したように隣のユージンをチラッと見た。
「もう返事は来ないと思ってたんだけど、返信された手紙に同封されていた写真を見てテリーの気が変わったみたいだった。
その頃にはテリーの怪我も治ってたけど、筆跡が変わったらおかしいからその後も僕が続けて書くようになったんだ。」
ユージンは申し訳無さそうに項垂れていた。
「1通目と2通目は僕も頼まれて仕方なく返事を書いたんだけど、3通目からは急に内容が面白くなって、君から手紙が届くのが楽しみになったんだ。
・・・その頃にはテリーは勝手にやってくれ、って感じで、手紙は直接僕が開封してテリーは読まなくなった。
本当はこんなの間違ってるし、騙してるようで気が咎めてたんだけど、君から返事が来る度に嬉しくて、あと一通だけ、あと一通だけって続けてしまったんだ。
・・・君を馬鹿にするつもりはなかったんだけど止められなかったんだ。
本当にゴメン」
メグがポカンと口を開けていた。
テレンスはバツが悪そうな顔をしていた。
「・・・謝ることないわ」
凛とした声に皆の視線がラナに集まった。
「だって、手紙を書いていたのは私だもの」
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