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4  テリーの正体

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「・・・これがテリー様?」

「どうした?あんまりイケメン過ぎて腰抜かしそう?」

「・・・テリーって愛称?」

「そうよ。ホントはテレンス様。
 テレンス・リード様よ」

「・・・碌に口を利いたこともない相手を愛称呼びするってどうなの?」

「だって皆がテリーって呼んでたから、私も便乗しようかな~って」

「・・・私、もう手紙の代筆は出来ないから」

「なんで?!酷いよ!

 もしかしてテリー様がイケメンだから横恋慕したんじゃないでしょうね?」

「そんなわけないじゃない!」

 こんなヤツ好きになるわけないわい!!

 ラナは叫びたい気持ちを抑えてどうにかメグを納得させられる言い訳を見つけようとクドクドと喋り続けた。

「・・・なんて言うか、今までは仲良くなる為の序章みたいなものだったけど、これからは自分で仲を深めていった方がいいと思うよ。
 文通が続けばもっと個人的な事や、心の内面に関わる事とか書いたりするようになるかも知れないでしょ?
 そんな手紙を第三者に読まれてるって分かったら普通の感覚の人なら怒ると思うし、ましてや返事を別人が書いてるなんて知ったら・・・」


「面白くないんだ!!
 ラナは私が上手く行くのが面白くないんでしょ?」

メグは靴で床を踏み鳴らした。


「そんなことないよ!」

「この前までは何だかんだ言って協力してくれたのに、急に止めるっておかしいじゃない!」

「・・・それは・・・」

 
テレンス・リードはラナが西部に住んでいた頃通っていた学校の同級生だ。

 その頃に起きたことが原因で、ラナは虫酸が走るくらいテレンスのことが嫌いなのだ。

 正直言ってテレンスとメグとは付き合って欲しくはない。

 欲しくはないが、まあ、人の好みはそれぞれな訳で、ラナがどうこう口出しできる問題でも無い。

 テレンスは人間性に問題がある。

 そしてメグにも少々面倒なところがあって、学園を卒業してからも友達付き合いを続けていきたいか?と聞かれれば、きっと大人になったら疎遠になるんだろうな~FOすると確信しているが、それでも一応友達だ。
 彼女に不幸になって欲しいわけではない。

 できればメグにはテレンスのクズさ加減を暴露して、そんなヤツなら止めとこうと思いとどまって欲しいところだが、それでもメグがテレンスのごときを好きだと言うのならそれはメグの自由だ。
 しかしそれはあくまでも私と無関係な場所でやって欲しい問題である。

 ラナがそんなことをゴチャゴチャ考えていると、

「だから、卒業までの間、縁が切れない程度に繋ぎ止めてくれれば良いって言ってんのよ!適当に気分が良くなるような文言で持ち上げてさ。
 簡単でしょ?」

 と語気を強めて迫られた。

 前から自己中なところのあるヤツだと思っていたけど、なにその言い方。

 簡単なら他人に頼まずに自分でやればいいじゃないよ。

 ラナはムカつきながら言った。

「私の書いた手紙のせいで二人の仲が上手く行かなくなっても私は責任とれないからね?」

 ラナは、こんな馬鹿にした言われ方をしても明日からボッチでランチをする勇気が無いばかりにハッキリ拒絶できない自分が情けなかった。

「わかった」

 メグはさっきまでラナを睨みつけるようにしていたのに、コロッと機嫌を直してニコニコしている。

 『案外クズ同士お似合いかも』

 光の速さでコロコロ変わるメグに半ば呆れながらそんなことを思ったラナだったが、

『ハブられたくないからホントは気が合わないコ達とも表面上仲良くしている私だって、ドッコイドッコイのクズじゃんね?』

 とも思った。

 ラナはふうーっと溜息を吐いて両手でほっぺたをパンと叩いた。

 『類友類友。クズ集合!』

 そしてラナは再び返事を書くためにテリーからの手紙を鞄に入れて持ち帰った。 

 他人に丸投げしといて偉そうなメグにも腹が立っていたし、何年経ってもテレンスに対する怒りも消えていない。

 ここは巧妙にメグに気づかせないようにテレンスをイラッとさせるような手紙を書いて、それが原因で二人の仲が悪くなるように仕向けてやろうか?
 それでも『条件さえ良ければ人間性なんか二の次』みたいなメグはテレンスの腐れ具合が露見した後も尚ヤツに心酔するかも知れないけど。
 
 まあ、その時はお似合いの二人ってことで『おめでとう!』で良いんじゃない?


『迷惑かけられてるんだから私も少しは楽しんだっていいよね?』

 
ラナは仄暗い笑みを浮かべた。

 

 








 
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