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ラピスは早速空回りの熱心さでコッパーに指導を仰ぎ、カロリンと共に舞台の端に移動して発声練習を始めた。
「明日はなれるさ、あいうえお~」
「いつかは立ちたい、大舞台~」
騒ぎを聞きつけたインサニアが出てきて、ルカスを見るなりベッタリ横に貼り付いた。
「あら、お顔の傷はどうなさったの?でもそれがまたセクシーねぇ」
「美しいお姉様あなたも女優さん?」
「ええ、私がこの劇団の主演女優のインサニア・ファスキナーレよ」
オットーがインサニアを睨みつけているがインサニアはどこ吹く風。
「悲恋物とか良いと思うのよ。
貴方と私。美男美女で」
「そうですね」
ルカスは色っぽい微笑みを湛えてインサニアをじっと見つめる。
「悪食だなぁ」
ヨハネスがニャニャしている。
「あれ、美味いかどうかわかんないものでも食べられるものなら取り敢えず口に入れる奴ですよ」
『こんな手当たり次第な奴をラピスの側には置いておけない』
焦りを感じたユリアヌスが、
「時にオットーさん。この劇場には従業員が寝泊まりできるような簡易的な部屋がないだろうか?」
と尋ねると、
「ああ、ありますよ。以前は地方から来た踊り子の女の子達が住み込みで働いてたからね」
「じゃあ、そこをルカスに使ってもらって構わないか?」
ユリアヌスの心情を察したヨハネスがすかさずオットーに提案する。
流石は幼なじみ、阿吽の呼吸だ。
ヨハネス旦那の頼みとあっちゃオットーに拒否権は無い。
「構いませんよ」
「いや、俺はラピスさん家で」
ユリアヌスがルカスを睨みつける。
「オマエ、ラピスさんに手を出したら翌日には死体になってイーストリバーに浮かぶことになるからな」
耳元でヨハネスが囁やき脅す。
「わかったよー」
ヘラヘラ笑いながらルカスはヨハネスの前に手を出す。
「何だよ」
「だって俺、一文無しだぜ。
今夜もカロリンちゃんの手料理食べに行っちゃおっかな~」
「手料理?」
ユリアヌスが食いつく。
「カロリンちゃんのシチューはママの味だぜ。俺にママはいねぇけど」
「ラピスは?ラピスの手料理も食べたのか?!」
「ちょっ・・・胸ぐら掴むのヤメて。
ラピスさんのは、ありゃ食いもんじゃねぇぜ。危険物」
「若、・・・なに羨ましそうな顔してるんですか」
「ってか、好きなんだろう?
さっさとやっちまえばいいじゃん。
王家の横暴かなんかパパに出してもらってさ、嫁さんにでもなんでもすりゃいいじゃん。
何グズグズしてんの?」
「その点については私も激しく同意」
とヨハネス。
「下品なことを言うな!
私はキチンと段階を踏んでお互いの同意の上で大切に愛を育みたいんだ!」
ルカスとヨハネスが、
『あんたも大変だね~』
『わかってくれるぅ?』
と目だけで会話した。
そこでもう一度ルカスは手を出した。
「何だよ」
「だって俺、一文無しだぜ。
カロリンちゃんの手料理、ってこのくだりもう一回やらせる?」
仕方ないな、とユリアヌスが財布から札を一枚出してルカスの手に乗せる。
しかしルカスは手を引っ込めない。
「何だ」
「だって俺、着替えもないのよ。
身形を整えなくちゃ本来の稼ぎ方もできないじゃない」
ユリアヌスは溜息を吐きながら再び財布を取り出すと渋々数枚の札を追加してやった。
「サンキュ!恩に着るぜ」
「オマエはもう少しまともな生き方をしろよ」
ヘイヘイと適当な返事をしながら札を折りたたんでポケットにしまいこむルカスにヨハネスは釘を刺した。
「わかってんだろうな。ラピス様に変な虫がつかないように見張るのもオマエの仕事だからな。
それをキチンと果たすなら最低限の生活は保証してやる」
「見張るって、コイツが一番危ない気がするんだが」
「大丈夫。俺、商品には手を出さない主義だから」
ルカスは終始ヘラヘラしていた。
「明日はなれるさ、あいうえお~」
「いつかは立ちたい、大舞台~」
騒ぎを聞きつけたインサニアが出てきて、ルカスを見るなりベッタリ横に貼り付いた。
「あら、お顔の傷はどうなさったの?でもそれがまたセクシーねぇ」
「美しいお姉様あなたも女優さん?」
「ええ、私がこの劇団の主演女優のインサニア・ファスキナーレよ」
オットーがインサニアを睨みつけているがインサニアはどこ吹く風。
「悲恋物とか良いと思うのよ。
貴方と私。美男美女で」
「そうですね」
ルカスは色っぽい微笑みを湛えてインサニアをじっと見つめる。
「悪食だなぁ」
ヨハネスがニャニャしている。
「あれ、美味いかどうかわかんないものでも食べられるものなら取り敢えず口に入れる奴ですよ」
『こんな手当たり次第な奴をラピスの側には置いておけない』
焦りを感じたユリアヌスが、
「時にオットーさん。この劇場には従業員が寝泊まりできるような簡易的な部屋がないだろうか?」
と尋ねると、
「ああ、ありますよ。以前は地方から来た踊り子の女の子達が住み込みで働いてたからね」
「じゃあ、そこをルカスに使ってもらって構わないか?」
ユリアヌスの心情を察したヨハネスがすかさずオットーに提案する。
流石は幼なじみ、阿吽の呼吸だ。
ヨハネス旦那の頼みとあっちゃオットーに拒否権は無い。
「構いませんよ」
「いや、俺はラピスさん家で」
ユリアヌスがルカスを睨みつける。
「オマエ、ラピスさんに手を出したら翌日には死体になってイーストリバーに浮かぶことになるからな」
耳元でヨハネスが囁やき脅す。
「わかったよー」
ヘラヘラ笑いながらルカスはヨハネスの前に手を出す。
「何だよ」
「だって俺、一文無しだぜ。
今夜もカロリンちゃんの手料理食べに行っちゃおっかな~」
「手料理?」
ユリアヌスが食いつく。
「カロリンちゃんのシチューはママの味だぜ。俺にママはいねぇけど」
「ラピスは?ラピスの手料理も食べたのか?!」
「ちょっ・・・胸ぐら掴むのヤメて。
ラピスさんのは、ありゃ食いもんじゃねぇぜ。危険物」
「若、・・・なに羨ましそうな顔してるんですか」
「ってか、好きなんだろう?
さっさとやっちまえばいいじゃん。
王家の横暴かなんかパパに出してもらってさ、嫁さんにでもなんでもすりゃいいじゃん。
何グズグズしてんの?」
「その点については私も激しく同意」
とヨハネス。
「下品なことを言うな!
私はキチンと段階を踏んでお互いの同意の上で大切に愛を育みたいんだ!」
ルカスとヨハネスが、
『あんたも大変だね~』
『わかってくれるぅ?』
と目だけで会話した。
そこでもう一度ルカスは手を出した。
「何だよ」
「だって俺、一文無しだぜ。
カロリンちゃんの手料理、ってこのくだりもう一回やらせる?」
仕方ないな、とユリアヌスが財布から札を一枚出してルカスの手に乗せる。
しかしルカスは手を引っ込めない。
「何だ」
「だって俺、着替えもないのよ。
身形を整えなくちゃ本来の稼ぎ方もできないじゃない」
ユリアヌスは溜息を吐きながら再び財布を取り出すと渋々数枚の札を追加してやった。
「サンキュ!恩に着るぜ」
「オマエはもう少しまともな生き方をしろよ」
ヘイヘイと適当な返事をしながら札を折りたたんでポケットにしまいこむルカスにヨハネスは釘を刺した。
「わかってんだろうな。ラピス様に変な虫がつかないように見張るのもオマエの仕事だからな。
それをキチンと果たすなら最低限の生活は保証してやる」
「見張るって、コイツが一番危ない気がするんだが」
「大丈夫。俺、商品には手を出さない主義だから」
ルカスは終始ヘラヘラしていた。
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