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しおりを挟む「・・・何故 私と?」
ミリアムは大いに警戒した。
ロベルト様とは文学のクラスが同じというだけで今まで言葉を交わしたこともない。
さてはカトレア様率いる一軍の罠か?
「・・・ずっと君に憧れていた」
いよいよ怪しい。ワナの匂いがプンプンする。
「・・・えっと。カトレア様に何か頼まれましたか?」
「カトレア・クォーツ嬢?彼女が何か?
・・・私と彼女に接点は無いが」
言われてみればプラント様はその美貌と家柄の良さで一目置かれる存在ではあるものの、パリピ一軍とは一線引いているように見える。
これは とんだ冤罪か。
「・・・プラント侯爵令息様ほどの お方が私にお声をかけてくださるのが不思議で」
「・・・・マダム・シャノアールは君でしょう?」
「・・・・・」
「あの時の懸賞小説、1位は私でした」
「・・・また私の負けですか」
「違う。勝ったのは君だ。授業の詩作もエッセイも いつもいつも君の方が優れていた」
「懸賞小説で1位ってことは、あなたがスカル・ロットン」
なんじゃその名前。ミリアムは思ったがそのことには触れなかった。
「 ・・・・大陸間文学賞の新人賞も獲ったんですよね。
素晴らしいじゃないですか、私なんてとてもとても。
プラント様の格調高い純文学と私の下世話な大衆小説を比べること自体意味をなさないですよ」
ミリアムは自分で言ってて ひねくれてるなぁと嫌になった。
「私はいつも君に嫉妬していた。私には君のように人々の心を掴む作品は書けない。
文体に拘って秀麗な言葉を悪戯に操っているだけだ」
「・・・でも、世間には大詩人バーナード・リードの孫であることも隠して活動しているのに名だたる新人賞を総嘗めにしているのだから、紛れもなく実力ですよ。
自信持ってください」
「・・・それでパーティーには」
「・・・行かないわ」
「どうして?」
「いい笑い者だわ。可哀想なゴリラ女にお情けをかけた慈悲深くも美しい貴公子としてプラント様の評価は上がるかもしれませんけど、・・・・ その分 私は余計に惨めだわ」
「君は魅力的だよ」
「見え透いたお世辞は不愉快だわ」
「私に青春の思い出をくれないだろうか」
立ち去ろうとするミリアムに近づいたロベルトがミリアムの纏め上げた髪のリボンをスルリと解いた、
ミリアムの艶やかな黒髪が流れ落ちる。
驚くミリアムの顔をじっと見つめてロベルトは一切の照れもなく言った。
「春風に 揺るる乙女の 黒髪の
解き放たれし 君がこころね」
・・・・なんだろう、グリッターとは
また一味違う変人の匂いがプンプンする。
家に帰るとロベルトからのプレゼントのドレスが届いていた。
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