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しおりを挟む従姉妹のシンシアは悪人ではないがミリアムの苦手な人種である。
ミリアムの父ナサニエルの妹を母に持つシンシアはロイド家の血筋を反映した美少女だ。
華奢な体に輝く金の巻き毛と鮮やかなブルーの瞳。
幼いころから周囲にちやほやされて育ったシンシアは意地悪なわけではなかったが大抵のお願いは簡単に叶うと信じて疑わなかったし、周りの人間は喜んで自分の希望に沿うのが当たり前だと思っている節があった。
意識してやっているのかどうだか、お願い事をするときは ゆっくりと暫く目を閉じるような瞬きをする。
長い睫毛に縁取られた大きな瞳がパチッと開いて、お願い、と言われれば誰もがそれに抗うことはできないのだった。
メアリー前伯爵夫人はミリアムとシンシアにとって祖母にあたる人物で、二人にとって良い おばあ様である。
3ヶ月程前にメアリーは転倒して足首に酷い捻挫を負った。
暫くは歩くどころかベッドがら動くことも出来ない状態だった。
ミリアムは忙しい時間をやりくりして足繁く祖母の元に通った。
気分が塞ぎ込む祖母を元気付けるだけでなく、食事や着替えトイレの介助まで時間の許す限り寄り添った。
祖母がなんとか杖を使って歩けるようになると、今度はリハビリに付き添ったり本で調べてマッサージをしたりもした。
メアリーはミリアムの献身を誉め称え自慢の孫だと言った。
それなのに。
すっかり回復した祖母の為に親戚や近しい友人たちを招いての快気祝いパーティーが開かれた。
ちっともお見舞いに来なかったシンシアがメアリーの傍を陣取って祖母を気遣う素振りを見せている。
周囲の人達に、優しいお孫さんがいて幸せですね、なんて言われて祖母も喜んでいる。
そういえば寝室に飾られた薔薇を見て、これはシンシアがお見舞いに贈ってくれたのよ、と嬉しそうに祖母は何度も言ってたな。
ミリアムはぼんやり考える。
小説にも書いたけど、嫁が産んだ孫より娘が産んだ孫の方が可愛いって世間で言われてるのは本当なんだな。
何度も来て親身に世話をした私より薔薇を贈っただけのシンシアの方が可愛いのかな。
でも、もしも自分が父親似の美しい娘だったら?
おばあ様にしてみればロイド家の血を引く美少女を期待してたのに生まれてきたのが私じゃガッカリだよね。
傍に置くのは見映えが良い方がいいに決まってる。
ミリアムは フーッと一つ溜め息を吐き出した。
もうこんな不毛なこと考えるの止めにして美味しい料理でも楽しもう。
今日はおばあ様のお祝いなんだから。
料理を取りに行こうとするミリアムの肩をポンポンと叩く者がいる。
振り返ると嬉しそうに頬を紅潮させたシンシアが
「ねえねえ、これ見て。おばあ様に頂いたの!!
お見舞いのお礼ですって」
シンシアの掌にあったのは、ロイド家で代々受け継がれているという大きなルビーのついた細かい金細工のブローチだった。
呆然とするミリアムにシンシアは無邪気な笑顔を見せた。
◇◇◇◇
スミマセン お知らせ させてください。
前に
「私は王子のサンドバッグ」
というのを書いたのですが、
エリック王子が嫌なヤツすぎて可哀想だったので、全然違う別世界の幸せな二人の話を書くことにしました。
「マジメにやってよ!王子様」
宜しかったら読んでください。
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